第34話 ヒデとミツ
翌日カズマとマナは日の出と共に気球でDシェルターに向かった。
天気もよく、風も適度にあったので、午前中にはDシェルターに到着した。
Dシェルターの城門はサンライト城のものよりもやや高かった。
マナが門番に開門をお願いすると城門はすんなり開かれた。
マリが事前にワイヤレスマイクで知らせていた為、面倒な手続きは省略された。
カズマとマナはDシェルターの上に建てられた城ースイートウォーター城へ向かい、Dシェルターを統治しているヒデ国王と会談をした。
マナ:「お久しぶりです。ヒデ国王。サンライト城のマナです。覚えてらっしゃいますか?」
ヒデ:「こんにちはマナさん。もちろん覚えてますよ。そちらの方はどなたですか?」
マナ:「この方はカズマ様です。えーと・・・」
カズマ:「はじめまして。サンライト城軍事指揮官のカズマです。よろしくお願いします。」
カズマは「勇者様」と紹介される前に自己紹介をした。
ヒデ:「はじめまして。この国の国王をしているヒデと申します。」
カズマ:「マリ王女と既にお話とは思いますが・・・」
ヒデ:「ああ、共闘の件ですな?我が国としては大歓迎です。さらにモンスターの対処を教えて下さると聞きました。ありがたいことです。」
カズマ:「はい、この国の軍事指揮官はヒデ国王でしょうか?」
ヒデ:「表向きはそうですが実務的な事はミツ隊長に任せています。」
カズマ:「こちらに滞在中モンスターの対処方法の訓練を行いたいと思いますがよろしいでしょうか?」
ヒデ:「おお、ありがとうございます。今日は長旅でお疲れでしょうから明日からにしましょうか?」
カズマ:「いえ、我々は今すぐで構いません。」
ヒデ:「わかりました。ではお言葉に甘えさせていただきます。ミツ!こちらに来てくれ!」
ミツと呼ばれた長身の男がヒデの隣にやってきた。
ヒデ:「コイツが軍隊長のミツです。ミツ、こちらサンライト城の軍事司令官のカズマさんと僧侶のマナ様だ。」
ミツ:「マナ・・・?あのカリスマ僧侶のマナ様ですか?」
マナは他国でも有名人らしく、ミツは緊張している。
マナ:「はははい、マナです。はじめまして。」
ミツ:「お会いできて幸栄です、マナ様。」
ミツはそういうとマナの手を取り、ひざまづいて手の甲にキスをする。
カズマはミツと握手を交わし、ヒデとミツにモンスター対処法の講座をはじめる。
カズマ:「ではまずお二人にこのFrozengunをお渡しします。」
そう言うとカズマはFrozengunを一丁ずつ二人に渡した。
カズマ:「こちらはFrozengunといいます。持ち方はこうです。危険ですので人には向けないようにしてください。」
カズマはFrozengunの持ち方を実際に見せ、銃口を下に向けて構えた。
カズマ:「このFrozengunの発射口からはあらゆるものを凍らせる光線が発射されます。この発射口をモンスターに向けてこの引き金を人差し指で引く。冷凍光線がモンスターに当たればモンスターは凍り付きます。凍り付いたモンスターをハンマーなどで殴れば粉々に砕く事ができます。」
ヒデ:「ほう・・・この機械にそんな力が・・・」
ヒデがFrozengunを興味深そうに観察している。
カズマ:「実際に撃ってみましょう。壊れてもいい岩などはありますか?」
ヒデ:「庭に大きな岩がいくつかあります。そちらに行きましょうか。」
4人は庭に移動して手ごろな岩の前に集まる。
カズマ:「ではまずこのロックを外します。上にカチッと音がするまで動かしてください。それから発射口を標的に向けます。それから引き金を引く。」
カズマは岩にFrozengunを撃ち込んだ。
冷凍ビームが岩に当たり、岩全体が一瞬で凍り付いた。
ヒデ:「おお!」
ミツ:「スゴイ!」
ヒデとミツはFrozengunの効果を間近で見て驚いた。
カズマ:「万が一味方を凍らせてしまった場合はこちらのレバーをFrozenからThawingに切り替えて発射します。」
今度はカズマは凍った岩に解凍ビームを撃ち込んだ。
岩は一瞬で解凍される。
カズマ:「解凍ビームは冷凍状態を元に戻しますが、冷凍された人間は心肺停止の状態になると思われます。解凍した後は蘇生する事を忘れないでください。あと冷凍状態の物を砕くと再生はできませんのでくれぐれもお気をつけください。」
カズマはそういうと二人にFrozengunを撃たせてみた。
二人とも戦闘能力は中の上のレベルで、Frozengunもそこそこ使えるようになった。
あとは二人が一般兵に教える事ができればカズマの役目は終了となる。
ヒデ:「ありがとう!これでモンスター対策は万全ですな。」
カズマ:「Frozengunを使用すればモンスターを遠くから攻撃できますが、至近距離に近づいてしまうとこちらが撃つ前にモンスターに攻撃されてしまいます。城壁の外から敵を迎え撃つのがよいでしょう。あと一般兵の適正を見てFrozengunを使用する者を選別して訓練してみてください。正しい操作方法で使い、照準をうまく合わせる事が出来る者。身体能力でいえば目がいい人間はFrozengunをうまく使えるでしょう。」
ヒデ:「何から何までご指導ありがとうございます。」
ヒデが深々と頭を下げるのを見てカズマは余計な事をしてしまったと思った。
ヒデ:「サンライト城に眠っていたコンピューターを使いこなす方はさすがですな。」
『やはりそこを突いてきたか・・・怒らせちまったか・・・』
カズマはやたら指導してしまった自分に舌打ちをした。
ヒデやミツにも国のトップとしてのプライドがある。
自分の国の人間にFrozengunを使わせるかどうかは彼らが決める事。
カズマに口出しされる筋合いはないのだ。
カズマ:「大変差し出がましい事を申し上げてしまいました。お許しを・・・」
カズマは膝をつき深く頭を下げて謝罪の意を示した。
ヒデはあわててそれを制する。
ヒデ:「いやいや、そんな事はありませぬぞ。我らにしてみれば大変ありがたいこと。頭を上げて下さい。」
カズマは立ち上がりもう一度軽く頭を下げた。
ヒデが弁解するように自国の内情を話し出す。
ヒデ:「我々も軍隊はありますが、恥ずかしながらモンスター軍に対抗できる術を自分達では見出せませんでした。シェルター内のコンピューターも何年もの間使用してきましたが、まともに使えるのはほんのわずかな機能だけです。失礼ですが貴方が軍事司令官に就いたのはごく最近の事とお見受けしました。サンライト城の住人がコンピューターを封印し、自然の中で生活する事を選んだというのは昔から知っているからです。あなたがサンライト城のコンピューターを使い、モンスターの情報を仕入れ、各国に流した。さらにモンスターを撃退する武器も作り上げた。その事は我々だけではなく全世界に希望をもたらしたのです。」
カズマはその言葉に驚いた。
自分は自分を守る為に皆を巻き込んだだけだったが、皆はそれを待ち望んでいたようだった。
カズマはダメ元でDシェルターのコンピュータールームを使用する事をお願いしてみた。
ヒデとミツは二つ返事で了解してくれた。
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