第32話 第三回チーム会議

昼食の後、コンピュータールームでチーム会議が始まった。


議題はBシェルターへの遠征と他国との外交の二点。


シュウとドグマが遠征でBシェルターの本拠を叩く事を進めるべきと主張したのに対し、マリとマナは外国と共同戦線を張る方が負担が少ないという意見だった。




ドグマ:「私は外国の力に頼るというのが納得いきません。チーム阿修羅で本拠地を叩けばこの戦争は終わります。」


マリ:「我々の襲撃が必ず成功するとは限らないぞ。本拠の覇王一点を目標にするとしても他国の協力は必要だ。」


マナ:「そうです。一般兵は国を守る大事な戦力だから遠征には参加させられません。国の防御が不在になればその隙をつかれます。」


シュウ:「Highpressuregunを増やせば防衛力も増すんでねすか?そしたら遠征組と防衛組ができるべ?」


マリ:「できるだけ我が国民には余計な戦闘はさせたくないのだ。」


シュウ:「自分とこの人間がよければ他の国の人間はどうでもいいだか?そりゃ勝手すぎるべ!」


マナ:「シュウ様・・・マリさまはこの国の王女です。王女は国民の安全を第一に考えねばならないのです。それをご理解ください。」


ドグマ:「カズマ・・・さっきから何も言わんがオマエの意見はどうなんだ?」




皆はカズマに注目した。


カズマは腕組みをしてジッと何かを考えている。


皆は固唾をのんでカズマの言葉を待った。




カズマ:「実のところ二、三日前までは俺もマリ・・・王女と同じ意見だった。」


ドグマ:「では他国の力を借りるというのか?」


カズマ:「最初の構想では他国の援軍は考えていなかったんだ。チーム阿修羅単独で敵の本拠を叩けると思ってた。」


シュウ:「なぜ援軍が必要と思っただ?」


カズマ:「シュウ、オマエさんの言う勝手な考えさ。俺は利用できるものは最大限に利用する。」


シュウ:「本気で言ってるだか?」


カズマ:「誤解するな。他国の協力が得られなければ国民に働いてもらわなければならないのは間違いない。だが戦力は多いに越したことはない。」


マナ:「他国が協力するでしょうか?」


カズマ:「早馬は出したんだろ?王女」


マリ:「ああ、ワイヤレスマイクを持たせた。到着次第直に交渉できるはずだ。」


カズマ:「ということであとニ、三日もすれば援軍の有無がわかるんだが・・・ちょっとな・・・」


ドグマ:「なんだ?拒否されそうなのか?」


カズマ:「ここ最近嫌な予感がしている・・・その理由がだんだんわかってきたんだ。」


マリ:「なんだ?それは?」


カズマ:「モンスター軍がサンライト城を襲う時期をコンピューターに予想させたら一か月後と出ていた。だが実際は二週間後にオークとゴブリンの軍勢が奇襲をかけてきた。監視カメラを設置し、ワイヤレスマイクと連動させてなけりゃやられていた。それに難民のゾンビ化・・・あれも下手すりゃ命取りになってた。あの司令官が『アレク様の命令』と言っていたのを覚えているか?」


シュウ:「ああ、確かに言っていたべ。覇王だったべか?」


カズマ:「そうだ。おそらくアレクが今回の襲撃を計画している。」


ドグマ:「覇王が軍の指揮をとるのは当然だろ?」


カズマ:「そうじゃないんだオッサン。問題はアレクの戦略がコンピューターを上回っているということなんだ。」




その言葉に皆は衝撃をうけた。




カズマ;「コンピューターの予想を聞いて思ったんだ。『もし俺が敵だったらどうするか?一か月ものんびりせずに即攻撃する。』当たったよ。これがどういう事かわかるか?」


シュウ:「覇王はカズマさんと同じレベルの戦略の持ち主・・・」


カズマ:「正解・・・俺が敵だと考えてみろ・・・」




皆シーンと静まり返り顔が青ざめている。




カズマ:「わかるぜ・・・恐ろしいよな・・・俺も最悪な気分だよ。」


マナ:「カズマ様・・・私・・・恐ろしい事に気づきました・・・」


カズマ:「察しがいいな。言ってみろ。」


マナ:「カズマ様が敵だとしたら他国との共闘を防ぐ為に何をしますか?」




マナは異様に怯えている。


声が震えていた。




カズマ:「もう気づいてんだろ?」


マリ:「他国を・・・モンスター軍で襲撃する・・・」




マリの声も震えていた。




カズマ:「そういうことだ・・・」


マリ:「早馬の連中に伝えなくては!」


カズマ:「モンスターの情報は各シェルターに送った。AとBのシェルター以外な。それぞれ弱点があるからそれがわかればしばらくは大丈夫だろう。」




フーと一同はため息をついた。




ドグマ:「カズマ!おどかすな!心臓に悪い!」


カズマ:「安心するのはまだ早い。他国をこっちに引き込む事もできるが、Bシェルターにつくことだって考えられるんだ。」


シュウ:「モンスター相手に命乞いは通じねんでながったか?」


カズマ:「ああ、奴らについても利用されるだけ利用されてあとはモンスター化されるだけだな。だが見方を変えれば俺も同じ様な事を考えているんだよ。利用できるものは利用するってさっき言ったろ?そして他国の連中も同じで俺たちを利用しようと考えて駆け引きするのさ。」


ドグマ:「あざとい世界だな・・・」


カズマ:「ギブ&テイク・・・政治はまずそこから始まるだろ?そこでお互い満足できれば信頼関係が生まれる。」


マナ:「何かまだ見落としがあるような気がします・・・カズマ様が悩んでいるのはそこじゃないかと・・・」


カズマ:「今度のモンスターはおそらくリザードマン。弱点は尻尾と氷だ。今冷凍ビームを発射するガンを作っていてもうじき50丁程完成する。こいつの使い方は全員に教えるがDシェルターの教育を誰にさせるか迷ってる。」


ドグマ:「俺が行こうか?」


カズマ:「いやオッサンは城の防衛と訓練を頼む。うーん・・・Dシェルターには俺が行くよ。ただ俺はよそ者だから向こうに知り合いがいないし道も知らないから案内がいる。」


マリ:「私が案内する。」


カズマ:「いや王女は早馬の到着を待ってくれ。だから・・・」




カズマはマナをジーッと見つめた。




マナ:「ええええ?私ですか?」


カズマ:「ああ、明日朝に出発する。準備しろ。」

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