深海であかつきを待ってる【仮】

雨ノ宮雪柔

第1話

ずっと、あなたのことが……


「スッ…信じていたのに」



いつもと違う笑顔がとっくに気付いた。これまで積んだ経験はそう伝えた。

あたしにとっては珍しい光景だが、知っているんだ。あれは、きっとみんなから聞いた昇りはじめた太陽のように、優しくてキラキラしていた笑顔だった。

だけど、あの最後に見た顔はまるでよく知っている海の底のように、冷たくて真っ暗だった。


なのに、どうして自分の直感を感じていたながら、感じていないふりをしたの?

求めたいものは最初から手に入れられないくせに。

わかっていたんだ。海に太陽を持ち込まれるのはただの夢話のこと。



昨日から、いや。もう何日が経ったかもしれない。泣いて疲れた気絶のせいで、今日は何日さえ分からない。

そうだ!

あたしっていつから日付を数え始めたっけ?

変のね~そういう人間っぽい行事なんて今まで必要はなかったのに…


そう考えて思わず久しぶりに大笑いした。

ばかばかしすぎて前に残した涙痕まで涙に洗った気がします。

(本当、おばあちゃんと言った通りだわ。足が醜いだけじゃなく、心もだ。)


暗い。それに、狭い。

これようなものはたまに見たことがあるけど、これみたい長く狭い箱は初めて見た。

はじめは変な鉄の箱に閉じこまれた。ただ、あの箱はどう見ても不完全なものだと思う。鉄棒と鉄棒のあいだには手まで外に届ける空間があった。とはいえ、陸上でさえ、なにを言ってもだだの時間ムダだ。


家の近くでもこんな暗さけれど、ここよりずっと広いし、涼しかった。

でも…もう二度とあの家に帰れないだろうね。



ダダ。ダダ。

ダダ。


まただ。

先からずっと耳元でこのような音が届いた。

いったい…なに……この箱を叩いてる?

外でいったい何か起こったの?


突然で起きたことなのに、今は不思議に落ち着いた。むかしの自分ならばもうとっくに取り乱されるに違いない。

どうやらあたしはもう海より深い底にたどり着いたようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

深海であかつきを待ってる【仮】 雨ノ宮雪柔 @YUNARI-9

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ