第1話 団欒

 目覚まし時計より早起きしたあたしは、カーテンを勢いよく開けた。


 今日は快晴、気持ちがいい。


「うーん」と伸びをして、今日着て行く服のチェックをする。


 今日はオシャレにも気合を入れて、最高な気分でお出掛けしたい。


 お腹すいたな。


 トントンと軽快に階段を降りて行く。


 顔を洗ってリビングに入る。


「おはよう。ママ」

 

 キッチンに居るママに声を掛けた。


 パパも弟達もまだ居ない。


 今朝は私が一番乗りみたい。


「あら。おはよう。今朝は早いのね」


 ママは目玉焼きを作りながら、私に笑顔を向ける。


「うん。朝から出掛けるから」


 ナチュラルメイクにワンピースのママ。


 ワンピースの上には可愛いエプロン。


 セミロングの髪は、今は後ろでネジってバレッタで留められている。


 そして、耳にはダイアの小さなピアス。


 このピアス、パパが何ヶ月もお小遣いを貯めて、結婚20年目の記念日にあげたんだよね。


 本当にパパって自分の事より、家族の事ばっかり優先なんだから。


 ママはこのピアスが大のお気に入り。


 きっと、そこまで高価なものじゃないとは思うんだけど、それでもとても大切にしてて毎日付けている。


 専業主婦なのに、いつもそこそこ綺麗にしているママは偉いと思う。


 私なら、お出掛けしない日はオシャレに手を抜いちゃうけどなぁ。

 

「そう。晩ご飯は?」


 パパのために新聞取ってきてあげようかな。


「お家で食べるよ」


 後ろに声を掛けながら、玄関に新聞を取りに行くとパパがいた。


「おはよう。瞳。今朝は早いな」


「おはよう。パパ。ママとおんなじ事言わないでよ! 」


 ははは、とパパは笑う。


 高校生の弟、みさきと、中学生の妹つばさも降りてきて、リビングは一気に賑やかになる。


 ママが食後のコーヒーを勧めてくれたけど、今朝は急ぐからと断った。


 部屋に戻って準備を急ぐ。


 本当は、別に急ぐ必要もないんだけど、楽しみ過ぎて気が急いてしまう。


 準備が出来てリビングをのぞくと、まだみんなは寛いでいた。


「じゃ、お昼には戻るから。行ってきまーす」


「行ってらしゃい」とママ。


「気をつけるんだぞ」とパパ。


「なに?デート?」と岬。


「お姉ちゃん、可愛い〜」と翼。


みんなから、それぞれの言葉を貰って、意気揚々と家を後にした。


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