第119話
観覧車を下車して砂川に待ち受けていたのは本命の恋人である泉天使から睨みつけられるというもの。
しかも傍には小森もついている。
当然理解が追いつかない様子で、
(うぎゃああああああああああああああああっ⁉︎ ちょっ、なんでこんなところに天使が! それも最悪のタイミングじゃねえか⁉︎)
「えっと……誰かしら? 知り合いなの健吾」
と夏川。この質問により小森と泉に緊張が走る。
((砂川くん/健吾さんはどう答えるんだろう?))
三人の追及の視線が砂川へと集中する。
(えっ、俺⁉︎ もう俺のターンなのか⁉︎ いやいやいや! いくらなんでも責任重大すぎるだろ‼︎ とはいえ、このまま黙りを決め込むのもマズい。なんとかして情報を引き出さなねえと――!)
「いや、これはその……」
((砂川くん/健吾さんがうろたえている⁉︎ 浮気がバレたときの反応じゃん/じゃないですか!))
(やっべ! 肝心なときに全然良い言葉が出てこねえ! つーか、なんて言えばいいんだよ! 「実は隣の女は姉弟なんだ。だから勘違いするな」とでも言えってか? いやいやいや! なんで姉弟でダブルデートに来てんだよ! しかも観覧車に同乗って……余計に闇が深えわ! 姉弟による禁断の恋愛じゃねえか! とはいえ、対外的な関係を口にするのは修羅場しか待ってねえし? どうする……なんて言えば……!)
「おっ、落ち着けよ天使。これには、その、深い
((宥め方が露骨!))
「私は落ち着いています」
「ねっ、ねえ健吾。あの子とどういう関係なの? いいかげん私にも教えなさいよ」
袖をつかみ迫る夏川。
(ダメだ。どう考えても観念するしかねえぞこれは。説明に時間はかかるだろうが、これ以上隠し通しておくのは無理がある。すまん姉さん!)
胸中で謝罪した砂川は全てを打ち明けることを決意する。
「実は夏川雫と俺は
「「「はぁっ⁉︎」」」
額に手を置きながら衝撃的な事実を打ち明けた砂川に小森、泉、天使が驚きを隠しきれない。
「ちょっ、どういうことよ健吾……!」
小森の前で突然カミングアウトしたことに怒り心頭の夏川。
理解が追いついておらず、弟の身体を激しく揺らす。
「ちょっ、落ち着け! 落ち着けって!」
「落ち着け? 落ち着けですって! 私がどれだけ(偽装恋人作戦に)懸けていたと思っているのよ!」
夏川のそれはまさしく悲痛の叫び。それはさながら砂川のために献身であり続けた恋人のようであった。心なしか目が潤んでいた。
そんな光景に胸を締めつけられるのは小森である。
(ああ……やっぱり夏川さんは砂川くんのことをずっと想い続けて来たんだ。それなのに二股がバレた途端、姉弟だなんて嘘をつかれたら……やっぱりショックだよね。ひどいよ砂川くん!)
「いい加減にしてください健吾さん! これを見てもまだそんな言い逃れをするつもりですか⁉︎」
決定的現場に『姉弟』などと言い放つ砂川に泉の怒りも収まるどころか燃え上がってしまう。
彼女が突き出すように取り出してきたのはラブホテルから小森と夏川が退室したときの映像である。
砂川が小森に殴りかかっていくところがバッチリ写り込んでいた。
それを視認する砂川。内心で絶叫せずにはいられない。
(うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああっ⁉︎ 決定的現場を目撃されていたああああああああああああああああああああああああああああっ⁉︎ まっ、まさか俺が姉さんと
脳内でこれまでのことを振り返る砂川。泉が突き出した携帯から音声が流れ出す。
――『人の女に手を出したんだ。覚悟は出来てんだろうな? 歯をくいしばれ』
(そういえばそんな台詞も言ってましたね! よりによってあの現場を目撃されてんのかよ⁉︎ なんつう神のいたずらだ! 偶然ってレベルじゃねえぞこれ! というか――)
「なんでその映像を天使が持ってんだよ!」
「質問しているのは私です。健吾さんが先に答えてください。ここで何をしていたんですか?」
さすがの夏川も痺れを切らす。
「ねっ、ねえ。どういうこと健吾? ちゃんと説明しなさい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます