【Web版】僕に興味をなくした元カノと幼馴染な今カノがなぜか修羅場ってる
急川回レ
第一章
第1話
桜ノ宮高校の生徒で夏川
艶のある長い黒髪。硝子玉のような透き通った瞳とクールな目元。筋の通った鼻に薄桃色の唇。
顔を形づくるそれらは職人が手がけたような一流品ばかり。
発育もよく凸凹のはっきりした身体つきは少女という殻を完全に破り捨てている。
まさに高嶺の花。
否、雲の上の存在と言ってもいい。
そんな美少女と平凡な少年が恋人になれるのは二次元だけ。
――僕、小森翔太もそう思っていた。
普通・平凡・凡庸を体現した僕が夏川さんと恋人関係になったのは三ヶ月前。
ありきたりな事情で彼女に告白したのがきっかけだ。
その事情というのが罰ゲーム。
クラス内ヒエラルキーで中間層に位置する僕は上層グループからイジられながらもなんとか上手く学生生活を送っている。
だからこそ空気を読むことが要求されるんだけどやっぱり大変なこともあるわけで。
僕は彼らから強要されたゲームに負けてしまい罰ゲームで夏川さんに告白することになってしまったのだ。
夏川さんは絶世の美少女だ。
お近付きになりたい男子は星の数ほどいる。
彼女はそんな彼らの告白を常に
例えばA君の実体験を紹介しよう。
彼は夏川さんに「あなたと釣り合わないことは承知しています。でも好きなんです。付き合ってください」と告白したらしい。
その告白に対し彼女の返事は、
「教養のかけらもない告白ね。漫画の言葉を借りてどれだけ知性がないのか言い換えてあげるわ。『価格も性能も悪い電化製品ですけど良かったら買ってください』よ。一体どこの世界にそんな不良品を買うバカがいるのかしら」
これを聞いたA君は凍死した。
至近距離で絶対零度を食らった彼は数時間硬直していたという。
クラス内ヒエラルキー上層の男子はその噂を耳にするとお腹をかかえて大爆笑。
他人の不幸は蜜の味のようだ。
夏川さんの《氷殺》がツボに入った彼らは次の被害者に僕を選んだ。
あらかじめ細工されていたゲームに強制参加させられてしまった僕は夏川さんに告白しなければいけない状況に追い込まれてしまったのだ。
好きでもない女の子に告白するのはとても気が重たいけれど、悲しいかな、弱肉の僕がそれを突っぱねられるわけもなく、半ば彼らの機嫌取りのために告白することになってしまった。
僕のやっていることは最低だと思う。自己嫌悪だって何度したか分からない。
でも夏川さんにとって僕の告白は屁でもないだろう。そう思っていた。
なにせ相手は千年に一度の美少女。異性からの告白など日常茶判事だろう。
耐性だって付いているに違いない。
それに自分で言ってて悲しくなるけれど僕は夏川さんからすれば路傍の石ころと変わらないはずだ。
だってA君同様、僕は何一つ抜きん出た特徴がないのだから。
きっと彼女だって心を痛めることなく、僕を氷殺してくれるに違いない。
というわけで、リア充たちのためにネタの一つでも持って帰ろうと告白したのだけど、
「――一目惚れでした。僕と付き合ってください!」
「私もよ。ぜひお付き合いしましょう」
あまりに予想外すぎる返事にその日僕は凍死した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます