桜色ハーモニー

バル

第1話

「おはよ〜。仮入学ぶりだね」

「あ、モモ。おはよう」

「いや〜。一緒のクラスになれて良かったねぇ。スズみたいなのが知ってる人のいないクラスに一人で入れられたらどうなることかと思ったけど一安心だね〜」

「うぅ〜。さすがに大丈夫、のはず……だよ……」

「おんやぁ〜? はっきりしない答えだな〜」

「いいもん! いいもん‼︎ モモと一緒のクラスになれたもん‼︎ 大丈夫だよ、たぶん」

 私、ともやまは高校生になりました。


 入学式を終え教室に戻ると、お決まりのアレが待っています。自己紹介です。私の名前の頭文字は“と”。前半三分の一って感じかなぁ。とりあえず名前言って、中学校名は……誰も言ってない? いろんなとこから人が来てるから言ってもわからないのかな? まぁ言わないとして、あとは趣味? 特技? 自分のことについて考えたことなんてないよぉ〜

きよひろももで〜す。よろしくお願いしま〜す。とりあえずこのクラスのみんなとお話ししたいかなぁ〜。そのほうがお互いのことをよく知れると思うし。あ! 私のことはモモって呼んでくださ〜い。繰り返しだけどみんなよろしく〜」

 モモは凄いなぁ。ピースサインとかして、ちょっと行きすぎた感あるけど……先生含めて何人かは“うわぁ”って感じで見てるし……

 っていうかモモが自己紹介したってことはそろそろ私の番がくる? あわわわわ。前の人の番になってる⁉︎ まだ言うこと決めてないのに〜。

「あ、えっと、友山鈴花って言います……よろしくお願いします……」

 ストンと椅子に座って私の自己紹介はおしまい。ちょっとして先生が次って言ってくれたから良かったけど変に目立っちゃったかなぁ?

 その日は先生の話が少しあっておしまい。下校になりました。


「わかってたけど簡素な自己紹介だったね〜」

「だって……話すことないし……誰も私のことなんて興味ないだろうし……」

「そんなことないよ〜。自己紹介ってのは事前に知っておいて欲しいこととか言っても良いわけだし。私の場合、モモって呼んで〜、とか。それよりなにより、私はもっとスズのこと知りたいよ〜?」

「もうっ、モモは私のことよく知ってるでしょ⁉︎」

「あらっ? そうなの? 私はまだまだだと思ってたけどな〜?」

「もうっ。いいでしょそんなこと。帰るよ!」

「ありゃりゃ、怒った? ごめんって〜」

 モモはたまに、いや、よくからかってくるのでこのくらいのことでは怒りません! 怒りません‼︎


「そういえばモモ、もう結構な人と仲良くなってたよね。帰りも誘われたりしたんじゃない?」

 モモは半日もないような初日ですでにクラスの半分くらいの人と仲良くなっていました。なんでだろう? みんな私が声かけても仲良くしてくれるのかなぁ? それともみんなモモに押し負けただけかなぁ?

「いいのいいの。遊べるのは放課後だけじゃないしね。休日とかあるし。それに家も近いんだし、一緒に帰ろうよ? もしかして学校の外でも私と一緒は嫌? そんなことないよね?」

 モモは想像だけで泣きそうになってました。感情の起伏が激しい……

「そんなことはない! ない……けど、モモにはモモで高校生活楽しんで欲しいから……」

「そっか〜。スズがそんなこと考えてくれてたのかぁ。でも大丈夫! 安心して! 私スズと一緒の時が一番楽しいから‼︎」

 私はモモに抱きつかれていました。モモはこう言うことをサラッと言う人で、そのたびに私はちょっとどきっとしていたりしますがそれはモモにはヒミツです。……からかわれそうだから。

「もうっ、帰るよ‼︎」

「そうだね〜。帰ろっか」

 こうして私の高校生活が始まったのです。

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