初恋が亡霊。

ネコマチカナリ

第1話

 初恋は、実らない。

 よく聞く陳腐な言葉だ。

 でも、俺はそれだ。

 なぜなら初恋の相手は。

 俺が小学生の時に、事故で死んでしまったからだ…。


 その日は雨がとても強い日だった。

 土砂降りの雨の中、俺と菜々美は下校していた。

 外は薄っすらと灰色で仄暗かった。


「雨がひどくて怖いねぇ」


 道路を渡っていた幼馴染の帆乃香ほのかが、俺を振り返りながらそう言った。

 家が隣同士でずっと幼馴染だった帆乃香は、俺から見て相当可愛い子だった。

 真っ黒で長い髪はいつもお下げにしていた。

 目はクリっとして、くるくるよく動く表情豊かな様子は子犬のようだった。


「んー、でももうすぐ家だから…」


 大丈夫だ、といいかけた時。

 一瞬。

 だったと思う。

 視界から、菜々美が消えた。

 それから、大音響の衝突音。

 目の前に広がる真っ赤な色。


 それから俺は、

 ぷつりと、

 何かがちぎれる音を聞いたような気がして、

 そのままゆっくりと、


 意識が。

 途切れた。

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