コラム ―― 小説の台本形式

 _(:3 」∠)_ こんにちは。紹介者でございますぅ。


 今回取り上げるのは時々目にする台本形式の小説。

 台本形式とは何ぞや、の方も居るやもしれませんが、単純に言って台本の如く台詞の頭に名前がくっ付いたものです。


女C・A 「どこ行こうとしてるの?」

男Y・K 「あ、いや。学食に」

女C・A 「今日はこっち。お弁当作って来たから」


 上記したような感じのものが台本形式。


 メリット。


 誰の発言か一目瞭然。

 発言者が多くなればなるほどに、分かり易さが出てきます。

 会話文が主体になり圧倒的にテンポが良い。

 昇華させれば戯曲と呼ばれるものにもなり得えます。


 デメリット。


 情景描写や心情描写が乏しく背景が窺えない。

 台詞だけで書かれるものも多く、読み手が背景を想像するしかないものもあります。(チャット形式なども同様)

 公募では規格を満たさないとして排除され易い。

 小説を募集しているのに台本が来れば、当然ですが排除され易くなります。

 何よりも台本形式を嫌う読者は案外多い。

 理由は粗製乱造にあります。


 その書き易さから安易に初心者が手を出す事で、クオリティの低過ぎるものが溢れ返り、忌避される事に至った訳です。

 台詞だけ書いていればあたかも成立するかの如き台本形式。

 ゆえに楽に物語を紡ぐ事が出来ると考える訳です。

 ですが、考え無しのものが溢れ返れば、読者は辟易してしまい結果、「台本=駄文の羅列」のレッテルを貼られてしまいます。


 台本形式が全く駄目な訳ではありません。

 書き手の問題でしか無いのですが、それでも次々取るに足らないものが出て来れば、読む方はいい加減にしろとなり、それを忌避する事になる訳ですね。


 この現象、小説も同様でウェブ小説のスタイルになってから、全く同じ事象が発生しているのですが、書籍化されたりアニメやコミカライズなどあり、台本形式のように忌避される事はありません。

 つまりクオリティの高い作品も数多と出てくるので、問題にならないのだろうと思われます。

 誰もが作者になり気軽に公開出来る、その環境ゆえ粗末な作品が出てくる土壌にもなる訳ですが。


 因みに個人的には頭に名前が付くと鬱陶しいです。

 例えば、流れるような会話文が成立していれば、そこまで鬱陶しさを感じる事は無い訳で、しかし、これまで目にしたものは面倒臭い印象を受けています。


 解決策。


 それ専門のサービスを提供するサイトで活動する。

 SS掲示板など台本形式の作品が集まるサイトもあります。

 カクヨムやなろうなどの小説投稿サイトでは、嫌われる可能性が高く、読まれ難いので読者を増やす事も難しいでしょう。

 同じ小説投稿サイトでもノベルデイズには、チャットノベルと言うジャンルがあるので、そこで腕を振るうのは大いにありかと思います。

 キャラ絵を張り付けて台詞のやり取りが出来るので、案外楽しめるかもしれません。

 ビジュアルで訴える事も出来るのが最大の利点でしょう。

 コミックのようでもありますが。


 戯曲。


 文学のひとつとして広まっています。

 台本形式が戯曲の劣化版なのかと言えば、それとは明らかに異なるものなので、同列に語れるものでも無いでしょう。


 ――――――


 風が吹き雲が流れ大地を照らす陽光。

 草原の中まっすぐ続く道を手を繋いで歩く親子。


息子R ねえママ。どうして鳥は空を飛べるの?

母B  そうねえ、きっと神様に空を飛ぶ為の能力を与えて貰ったのね。

息子R 神さま?

母B  そう。神様はそれぞれに役目を与えたの。鳥には空を飛ぶようにって。

息子R ずるいな。

母B  ずるくないの。鳥は空を飛べるけど人は知恵を授かったから。

息子R 知恵?

母B  そう。知恵は人だけが持つ万能の力。それがあって人は発展できるの。

息子R わかんない。


 息子に向かって微笑む母B。


 ――――――


 所謂戯曲形式のサンプルを作ってみました。

 戯曲なんぞ書いた事も無いのでただの台本になってますが。


 戯曲は元々が演劇用の台本でもあるので、書き割りなどの背景や演出用の照明など、指定が入っている事もあります。

 必要最低限の描写はあるので、どこで会話を交わしているかは理解が及びますね。

 一応書式などのルールもあるようですが、詳しくは知りません。


 書いてみて思ったのは戯曲っぽく仕上げると意外に読み易いと。

 但し、あくまでPCの画面で見た場合です。スマホの場合表示文字数の都合上、返って読み辛さが出てしまいますが。

 とは言え、カクヨムでこの形式にすると読者は付かないでしょう。

 見た瞬間離脱されてしまうでしょうから。


 誰かきちんとした戯曲形式で書いてくれないかと、ちょっと期待してみたり。

 まともな作品であれば是非読んでみたいものです。


 と言う事で、真面な作品として成立していれば、小説形式であれ台本形式であれ、問題は無い訳ですが、単に書き易いからその手法を真似る、これは止めるべきでしょう。

 どのような形式であれ、きちんと物語が紡がれていれば、良いのは言うに及びません。

 残念な事にこれまでは唸る作品は出て来ませんでした。

 形だけ真似ても意味がありませんし、最低限のルールに従うのは当然でしょう。


 台本形式を採る方に言いたいのは、楽に誰の発言か分かるから、などと言った雑な動機ではなく、それでしか成し得ない表現を目指してください。

 見るに堪えない作品とも呼べないものが多いので。


 以上、台本形式でした。

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