第112話

「なら、いい。ちゃんと始末して、ジョシュアの元に戻るんだぞ」




「戻りませんっ。う……、あっん……」




 サミイが、アシュラフの胸に手を付き、腰を上げた。体内に収まっていたアシュラフの雄が姿を現した。だが、すぐにサミイはそれを仕舞う。




「なんだよ。十年ぶりに、せっかく会えたってのに。俺が、何から何までお膳立てしてやったろ?ジョシュアと英国で幸せになれよ。もう十四歳のお前じゃないんだから、大丈夫だ。俺は、お前があいつと寝たって怒ったりしないから。むしろ、幸せにやってるなあって嬉しく思うから」




 すると、サミイがアシュラフに向かって再び身体を倒した。縋るように、首に手を回す。




「アシュラフ様は私のことを、全然、わかっていない」




「全然?そこまで言い切るか」




 アシュラフが、サミイの手首を取って丹念に舐めた。「あ……あぁ」とサミイが感じた声を上げる。




「十年前まで、私を生かしてくれたのはジョシュア様でした。でも、ジョシュア様が去ってから、私を生かしてくれたのはアシュラフ様、あなたです。そして、今後も私はあなた以外の人の傍で生きるつもりはありません」




「もう本当に、ジョシュアに未練はないのか?」




 アシュラフが優しい目をして、繋がったままのサミイを抱き寄せた。サミイは、その胸の中で「はい」と頷く。




「なにもこんな日に、俺たちもはっきりさせなくてもね。お互い、怖くていつも肝心なことを言えなかったもんな」




 サミイの感じる声は、切ない涙声に変わっていった。




「けどな。俺たちが仲良くしていたら、今度はマデリーンが可哀想だろう?こんな砂だらけの国に嫁いでくれるんだ。来たくなかっただろうに。西班牙を離れてやってきたマデリーンには、俺しかいないんだから、俺が愛してやるしかないんだよ。な、分かってくれよ」

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