第111話
再びラクダに乗って、ミオたちは離宮に駆け付けた。塔の階段を登っていくと、細い声が漏れてくる。ミオとジョシュアは顔を見合わせた。
低い男の声もした。アシュラフの声だ。こちらの声は、いつもと違って随分甘い。
階段を登りきり、廊下を進む。ミオがいた部屋は大きくドアが開け放たれていた。
中を覗き込んで息を飲む。
寝転んだアシュラフに、裸のサミイが跨っていた。背中を弓なりに反らし、アシュラフが上下に腰を揺するたびに「あ……あぁ……っ」と吐息を漏らす。
ミオに一歩遅れてやってきたジョシュアは、部屋の様子を一目見て、廊下の壁に背中を付けてしゃがみ込んだ。
他人の行為を見るべきではないと分かっているが、ミオはあまりにも美しいサミイの姿に目が離せなかった。
サミイは、全身でアシュラフを求めて喜んでいる。
「夜明け前には帰れよ」
とアシュラフが腰を突き上げながら、サミイに向かって言った。
「あぁ……あ……。い、嫌です」
「俺は、明日、結婚式なんだよ。少し寝かせろ」
「嫌ですっ。ん……っん」
「サミイ。別れるって決めたのに、結婚式の前の晩に泣きながら寝室にやってくるなんて反則だ。思わず、抱いちまったじゃないか。ミオはミオでいつの間にかいなくなっているし。
起きたとき、ジョシュアの香水の匂いがついたショールが俺の身体に掛けられていたから、この部屋に忍び込んで連れて行ったんだな。お前たち、口裏を合わせたのか」
サミイは、激しく首を振ってから身体を折り、ジョシュアに口づけた。
「違います。私の一存でここに」
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