第49話

 この気持ちは一体何だ。


 もはや、旅の主人を思う気持ちとは別の種類なのは、さすがに鈍いミオでも、自覚せざるを得なかった。


 でも、この感情にぴったりの名前を知らない。


 ジョシュアは、ミオの姿が捉えられる位置までくると「ミオさん。寝てろって言っただろう?」と言いながら北斗星号から飛び降りた。


 ミオは駆け寄っていく。ジョシュアの両腕が開かれ、迷いなく飛び込んだ。


「お帰りなさいませっ」


「まだこんなに身体が熱い」


「熱なら下がりました。もう、頭痛はしません。身体が火照っているのは、滋養剤のせいです」


 ジョシュアの硬い胸の中で囁く。自分の身体を心配して叱ってくれる人の存在が、素直に嬉しかった。


「いい従者をお持ちだ」


と青いサイティの男が言って、自分が乗ったラクダを操りながら街の方に向かっていく。ミオとジョシュア、そして北斗星号が砂漠に残された。


「約束したのに、予定より遅くなってしまって悪かったね。一つ目のオアシスですぐに砂漠キツネに出会えたものだから、次のオアシスまで足を伸ばしたんだ」


「ずっとお待ちしてました」


 そう言うと、後頭部を優しく撫でられる。真っ白のコンプレックスだらけの白い髪に口づけられ、嬉しさに身体が震えた。


「ミオさんのことを考えながら戻ってきた。宿で苦しんでないかなあ、大丈夫かなあ。帰ったら、できるだけ優しくしてあげたいなあって」


 抱きしめられる力が強くなった。


窒息しそうな苦しさが、今のミオには気持ちがいい。


「なのに、ミオさん、泣きそうな顔で走ってきて」


 ジョシュアの心臓が、ドッドッと音を立てていた。


「戸惑わせるかもしれないけれど、正直に言ってしまってもいい?」


「な、何をですか?」


「君が愛おしい」

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