第47話

 何度か宿の人間がやってきて、身体を濡れたタオルで冷やしてくれたのがわかった。


 数時間は、眠っただろうか。夕闇だった部屋は、すっかり暗くなっていた。


「滋養剤。効いている」


 飛び起きれそうなほど、身体に力が滾っていた。一昨日の晩、飲んでも、すぐに効かなかったのに、今日は大丈夫だ。


「よかった」


 ミオは、ほっとした。


「まだ、生きられそうだ」


 少なくとも、ジョシュアと旅を続ける間は。


 これまで生きることに執着したことがなかったのに、随分な心境の変化だと思った。


 寝台から起き上がる。


 汗で濡れたサイティから、ジョシュアからもらった夜着に着替えた。


 部屋を見回す。


 ジョジュアのトランクは部屋の隅に積まれている。


 一人にしないと、繰り返し約束してくれた。


 暫く待っていれば戻ってくるのに、それでも一人でいるのが嫌だった。


ここ数日で幾つもの幸福を手にしたせいだ。


 一緒に食べたご飯。


 カードゲームやオアシスでの水浴び。


 それに、隣で眠った夜。


 そして、口づけや抱擁。


 ジョシュアが与えてくれた心地よい世界。


 でも、それはジョジュアがミオという奴隷に飽きてしまえば、簡単に消滅してしまう。


 

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