─7─

一つ目の無機物むきぶつからは、

ただならぬ圧迫感あっぱくかんただよってくる。


思わず後ずさる僕の腰元こしもとに、

小さな何かが触れるのを感じた。


振り向くと少女が腰元で僕を見上げていた。


無言むごん一時ひととき


無機質むきしつな音声が沈黙ちんもくやぶった。


警告けいこく

 あなたがたの行為は鉄道法てつどうほう111じょう

 抵触ていしょくしています。

 ただちに室内から退出たいしゅつしてください 」


僕は少女の顔を見つめ、

あらたまって現状の卑猥ひわいさに顔を赤らめた。


少女はそんな僕の手を無言でつかむとそのまま、

ぽっかりといた穴に僕の手を持っていった。


切り取られた空間にえられた手。


そこから信じられない感触かんしょくが伝わる。


切り取られたはずの穴にはばまれ、

硬質な感触がてのひらから伝わってきたのだ。


金属に近い冷たさ。


そこには壁が存在していた。


警告けいこく

 市民ID解析中かいせきちゅう

 ただちに室内から退出して下さい」


壁の外では相変あいかわらずコープが警告を発していた。


『もうすぐ転移てんいが始まる』


少女は唐突とうとつに話始めた。


監視者かんししゃは入ってこれない』


監視者とはコープの事か?


コープは壁にはばまれ入ってれないと言う意味だろうか?


大丈夫だいじょうぶ、すぐに終わる』


そう言い終わる前に少女の被ったメットが着信でも拾った様に明滅をし始めた。


少女はとがめるよう窓際まどぎわに振り返り口を開く。


『問題ない。

 心配しすぎ』


見ると少女の愛玩あいがんロボが、

モールス信号のように無音でがくを点灯させていた。


それに合わせたように、

少女のかぶったバイザーも明滅めいめつり返す。


目元めもとの大半を隠したバイザーが、

少女のコールブルーの瞳をよりく見せていた。



          ―7―

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る