好きな人に質問してみた。

卯野ましろ

好きな人に質問してみた。

「ねぇねぇ」

「はい?」

「性格ブスと顔面ブス、どっちが嫌い?」


 隣の席の男子に質問してみた。

 片想い中の彼。

 どう答えるかな……。


「……は?」


 彼は目を丸くしている。


「うーん、そうだなぁ……」


 いや私、そんなに難しい質問はしていないけど……?


 キーンコーンカーンコーン……。


「あっ、始業だ。悪いけど後で答えるよ」

「う、うんっ。わざわざありがと」


 私なんかの質問に、きちんと答えようとしてくれている。

 そんな彼だから、私は好きになったのだと思う。




「バカッ! 何でそんな質問したのよ!」

「えぇ~……ダメなの?」


 二人きりの女子トイレ。唯一、私の恋愛相談を聞いてくれている親友から怒られてしまった。


「当たり前だろっ! あんたが傷つくような答えを聞かされるに決まっている!」

「それ、どんな答え……?」

「それは……!」

「それは……?」


 親友は、一つ間を空けた。そして再び口を開いた。


「そういうことを聞く子が嫌いだよ」


 ガーン……。

 私、終わった……。

 失恋確定……。


「ど、どうしよ……」


 彼に好かれるためには、見た目と中身のどちらを優先的に磨けば良いのか。ただ、それが知りたかっただけなのに……。

 どんよりな私の右肩に、親友がポンと手を置いた。


「ま、男なんて他にもたくさんいる。次だ、次!」

「そんな簡単に言わないでよ~!」


 彼以外は考えられない。




「はぁー……」


 大きくため息を吐きながら、私はカバンに教科書やノートを入れている。


「どうしたの?」

「ひゃっ!」


 私に声をかけてくれたのは隣の彼だった。驚いてしまったけれど、すごく喜んでいる私。バカな質問をしたアホマヌケな女を心配してくれるなんて本当に嬉しい。


「な、何でもないよっ! ありがと……」

「そっか。で、ちょっと来てくれない?」

「え?」




「で、さっきの答えだけど……」


 私は今、屋上……の扉の前で彼と二人きりだ。私は察した。彼は大事にならないよう、人気のない場所で私がショックを受ける言葉を伝えることにしたのだ。人前で私が泣いたら彼は「女子を泣かせた野郎」だと、あっという間に有名になる。それで、こんなところに私を連れてきた。


 ああ、とうとう失恋のときが来てしまった。


「はい、どうぞ答えてください」

「俺はさ、そういうことを聞く……」


 泣くんじゃない私。

 反省しよう。

 そして前を向こう。


「君が嫌いだよ」


 ああ、そうですよね……。

 ……ん?


「えっ、それって……」


 今まで下に向けていた顔を上げると、目の前に彼の真剣な表情が飛び込んできた。

 ドキッとした。


「君が好きだよ。だから、あんな意地悪なこと二度と言わないで。君らしくないよ」

「……はい」

「それで、答えは……?」


 もちろん、決まっている。


「私も、ずっと前から好きです」


 私の片想いは、予想外の結末を迎えたのだった。

 ありがとう。よろしくね。

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