白昼夢のような作品です。
夢をみているとき、私たちは不条理さを当然のごとく受け入れて、突拍子もない場面をぽんぽんと渡っていきます。目覚めたときにそれを思い出そうとすると、像を結びそうで結ばない空想の手ざわりだけがほのかによぎるばかり。
この作品もそうした夢に似て、追いかけようとすれば消えてしまうような幻想の断片が、わずかな不穏さ、心地よい諦念、乾いた明るさと共に綴られています。
静かな語り口で、知らない世界なのになんだか懐かしさを誘う――一篇一篇が唯一無二の結晶みたいで、味わいながら読みました。
クラフト・エヴィング商會の作品が好きな方なら絶対に気に入るはず。