メモ箱②

構想①

(雨の降る午後、事務室を訪ねてきた男が語る、薄汚れた雑居ビルの地下1階で上映されていた短編映画の内容について)




●……


 背広姿の男が市庁舎を訪れて、自分の個人情報を照会したいと申し出る。彼は記憶を失くしている。


 男は市庁舎内の各部署をたらい回しにされる。市庁舎の奥へ奥へと迷い込んでいくにしたがって、顔の無い書記官や、口を利くタイプライター、総務課長を名乗る黒猫などに出会う。訪れた先々の部署で膨大な書類に署名させられる。そして市庁舎13階の秘書室へ行くようにと指示され、男は長い長い階段を上る。


 秘書室には3人の秘書が横並びに腰かけており、一人一人が男に質問する。




 1.「階段の無い2階」は何を意味すると思われますか?


 2.「最も人道的な拷問方法」を考案してください。


 3.観測者とその観測対象との間に生じる諸問題について述べてください。



 その後、別室にて待機するように言われた男に告げられたのは「合格」「あなたが次期市長に決定」


 男は顔を顰める。

 異議を唱えるがそれは無視され、半ば強制的に議会へと連れていかれてしまう。議会の中央には断頭台があり、そこには「市長席」と刻印されている。


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