月夜のメモ

【Case1】

 ある夜、クローゼットを開けて外套を探したが、どこにも見当たらなかった。奥の方に手を伸ばし「たしかここに……」と思っていると、指先に冷たい夜風が触れて、ふわりと体が吸い込まれる。……気がつくと草原に立っていた。


 辺りを見回すと、ポツンと佇んでいる木に目が留まった。その木の枝に自分の外套がゆらゆらと揺れている。


「こんなところにあったのか」


 触ったら、ひやりと冷たかった。私はそれを羽織って、駅まで歩き、電車に乗って自邸に帰ってきた。

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