第五十一話 「転入」
俺—出雲かなたは十二輝の会場を後にして、桜たちに合流した。
「かなた、どこ行ってたの?紅蓮先生に聞いても曖昧な答えしか返ってこなくて…。」
『十二輝』のことは
「り、理事長に急に呼び止められてさ、理事長室で話してたんだ。そこまで重要な話じゃなかったから、大丈夫だよ。」
理事長には悪いけど、これぐらいしか思いつかなかった。これで騙せますように!!
「そうだったんだ。理事長も話すなら休み時間までに終わらせてほしいよね。先生もそう思うでしょ?」
「ああ。まったくだな。」
な、なんとか騙せたみたいだな。桜は今回、紅蓮先生の報告書だけで十分と判断されたらしく、『十二輝』の存在すら知らない。
桜を騙すなんて、心が痛むなぁ…。
「よし、かなたも戻ったことだし、これからのことを話していくぞ。」
「編入のことですよね!私、とてつもなく楽しみです!」
へ、編入⁉︎俺たち、ここの高校辞めさせられるの?流石に急すぎるくね?俺、そこまで素行悪くないはずだけど…。
「かなた、編入といってもいま現存しているクラスにそのままクラスを変えるだけだ。そこまで不安にならなくて大丈夫だぞ。」
あ、そういうことか。はぁー、よかった、クラス替えってことだよな?
「そのクラスって俺たち以外にも見習いっているんですか?」
「あぁ、多くいるぞ。お前たち同様、鬼や妖怪に襲われそのまま陰陽師になった者や、家業が陰陽師の者、様々な奴らがいる。今回の編入はそんな陰陽師達とコミュニケーションを取ることが目的だ。」
俺たちのような境遇の人たちがいるんだ…。それに、家業が陰陽師って何代にも渡って陰陽連につかえてるってことかな?
家業が陰陽師の人たちって、俺たちみたいな一般人からの陰陽師をいじめてきそうだなぁ。
「お前たちには数日後、一年A組に入ってもらう。時間割は電子生徒手帳に送られてくるから確認するように。」
「「はい!」」
どんな風な人たちがいるのか、ちょっとだけ楽しみだな。それに、桜と一緒ってだけでも心強い。
「よし、今日は午後から術式の授業を行う。昼食をとり、1時30分までに競技室2番に集合。」
「「了解!」」
よし、午後からも気合いを入れて頑張るか!
——3日後
今日から俺と桜は新クラスに転入する。紅蓮先生曰く、昨日に転入させるつもりだったらしい。
だが、クラスの一人がその情報を手に入れたらしく、クラスはどんちゃん騒ぎで、それを収めるために1日ずらしたたらしい。
それだけ聞いていると、怖くなってきた。先生達ですら一日かかる相手ってどんな化け物だよ…。
桜は相変わらず、ウキウキしている。
うん、可愛い。
廊下を歩いて数分、とうとうA組の扉の前についてしまった。
確か、紅蓮先生が合図を出してくれるはずだけど…。
「お前たち、転入生を紹介する。二人とも、入ってこい。」
お、きた。もう決心して行くしかない!
俺は扉を勢いよく開け足を進める。桜は俺の後ろを続いて入り、扉を閉める。
「二人とも、黒板に名前を書いて自己紹介を頼む。」
「「はい。」」
名前を書き終わり、一呼吸おく。
よし。
「初めまして。出雲かなたです。陰陽師になって半年ぐらいの未熟者ですがどうか仲良くしてくれると嬉しいです。よろしくお願いします。」
言い終わると拍手が飛んでくる。ふー、うまくできた気がする。
次は桜だな。
「は、初めまして。中野桜です。かなたと同じ陰陽師になって半年くらいです。わからないことも多いと思うので、教えてくれると嬉しいです。どうぞ、よろしくお願いします!」
終わりと同時に拍手が飛んでくる。桜もうまくできたみたいだな。
教室内を見渡してみると、みんな俺たちを好奇心の籠った目で見つめてくる。
やっぱり緊張するなぁ…。
「はい、というわけで今日からこの二人が新しいクラスメイトになる。わからないところが多いと思うので教えてやってくれ。質問があるやつはいるか?」
その言葉を待っていたかのように、手が勢いよく上がる。
「初瀬、いいぞ。」
その言葉と共に桜と同じくらいの身長の子が立ち上がる。
「はい!拙者、新聞部の
固有陰陽術式っていうと『
でも、なんでそんなこと聞くんだろう?
もしかしたら、品定めかもしれないし普通に答えるか。
「そうですね、俺も桜も使えます。まだまだ荒削りの状態ですけど。」
こんな感じでいいよね。ふと、先生の方をみると手を頭につけて、「あーあー、やっちまったなぁー」みたい顔をしていた。
あ、そういえば…固有陰陽術式自体、習得が難しくて数年陰陽師として戦ってきた人でも、まだ習得できていないこともざらにあるって言っていたような……。
気づいた時にはもう遅かった。
「うおーー!すげーーー!こいつらマジで何もんだよ!」
「半年でも陰陽術式を使うこと自体稀なのに、本当に人間?」
「これは大スクープでござる!新聞部で号外を作らなくては!?」
答えを聞いてみんなどんちゃん騒ぎ。
あ、これ収拾がつかないやつだ。先生も「今日は授業停止かなぁ。」なんていう始末。
これからちゃんと学生ができるか不安だなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます