第二十六話 府立晴明高校
俺はいつものように夢の中でぬらに投げ飛ばされていた。
一撃入れるどころか指先で触れることすらできない。あとどれくらい続ければ一撃入れれるようになるんだよ…。
「今日はこれくらいにして、昨日言ってた陰陽術式に入って行こうか。」
起き上がりながら、ふと疑問が浮かんだ。
「なあ、ぬら。そのぬらが言ってる陰陽術式と固有陰陽術式って何か違うのか?」
「いや、違わないが?そうだな、今の時代だと陰陽術式っていうと種類が多いんだったな。」
「とりあえず、ぬらの言う陰陽術式=固有陰陽術式ってことでいい?」
「ああ、その認識でいい。」
でも、それなら今日学校でやったことの繰り返しになるのかな?
どのように祓いたいって聞かれても答えれないぞ。
「ぬら、今日学校でも固有陰陽術式を考え始めたけど俺は全く出来なかったんだ…。」
そう言われ、ぬらはきょとんとし直ぐにクスリと笑い出す。
「それはそうだろう。陰陽術式なんてものは人によって違うわけだ。術式の構築はあまり考えなくていいが、想像力と発想力が必要になる。たった一日でしようと思う方が間違いなんだ。」
つまり、無意識で俺は焦っていたのか?
桜を守るために陰陽師になったのに桜に先を越されたことで焦っていたのかな…。
「かなた、自分のやりたいようにやれ。お前はお前、桜は桜だ。全く別だ。それは人としてだけじゃなくて、陰陽師としてもだ。やっぱり、今日はこのまま組み手を続ける。陰陽術式はお前の祓い方がまとまってからだな。」
「わかったよ。もう少し悩んでみる。それじゃあ、組み手を再開するね」
そう言って俺はぬらに拳を向けた。
ジリジリと鳴る時計のアラームで目を覚ます。この家に来てから五日目の朝。
やはり、まだ違和感が残っているな。寝ているベッドは一緒なんだけどな…。
「かなたー朝だぞー!起きろー!」
下から親父の声が聞こえる。
「起きてるよ!準備してから降りるね!」
俺は素早くベッドから起き上がり準備を済ませた。
俺が朝ご飯を食べ終わった頃に家の呼び鈴がなる。
「はい。出雲です。」
『おはようございます。中野です。かなたくんいらっしゃいますか?』
「はい、私がかなたです。すぐに準備するので少しお待ち下さい。」
俺はそう言い、すぐに鞄を片手に家を出た。
扉を出るとすぐに桜が待っていた。
「おはよう、かなた!さっきの話し方なに?いつもと違ってたからびっくりしたよ。」
「おはよう、桜。少しびっくりさせたくてあんな話し方にしたんだ。それじゃあ、学校に向かいますか。」
俺と桜はいつも通りに歩き始めた。
「おはよう2人とも。今日はいつも通り午後から組み手をやるぞ。午前中は地下の案内をしようと思う。」
紅蓮先生が教室に来てすぐに言う。
地下の案内?そういえば、ここの教室以外にいくつも教室があったな。
にしても、なんで今日なんだ?
「先生!なんで今日に地下を案内してくれるんですか?」
ナイス桜!俺も同じこと思ってたし助かる。
「ああ、それはだな…俺がただ忘れてただけだ。」
「「え、」」
俺と桜はその答えに
「と、とにかく今日は地下を案内するからな!」
「「は、はい!」」
先生もドジするんだな…。いつもの物事を完璧にこなすところを見ていると考えられないな。
あの先生の恥ずかしそうな顔。とても貴重だな。
「それじゃあ、2人とも行くぞ。」
先生はすぐに切り替えて俺たちを案内してくれた。
通路?いや、廊下(多分)を俺たちは歩く。横には等間隔に教室が並ぶ。
そこでは何人もの生徒が黒板を見ながらノートをとっている。
それにしても、廊下に人がいたら1人くらいはこちらを見ると思うんだけどな。
誰一人こちらを見ない。数人はペン回しや落書きなどしていて授業に集中していないのに。
「地下の教室の窓は授業中はマジックミラーになっていてな、授業中は廊下の様子がわからないだ。まあ、休み時間は普通の窓に戻るがな。」
なにそれすごい。授業に集中させるためとはいえ全ての教室にこの技術を使うなんて…。
「しかも、陰陽師の中でも選りすぐりの結界系統の術者によって教室全体が結界で覆われている。」
もう言葉も出ないです。桜なんて驚きすぎて口を開けたままだしな。
これを一般生徒用の教室までしていると思うとゾッとするな。
ほんとなんなんだこの学校…。
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