第二十一話 狩衣と共通陰陽術式
気付けば授業が終わっていた。
やはり紅蓮先生の授業は面白すぎるな。まったく時間が過ぎたのが分からなかったしな。
とりあえず午前の授業も終わったことだし、昼食を取ろうかな。
俺と桜は机を向かい合わせ弁当を食べる。
「やっぱり弁当にはミートボールがないと始まらないよね!」
桜は箸でミートボールをつまみながら言う。
そういえば、昔から桜の弁当にはミートボールが入っていたな。
小学生の時の遠足や中学生の時の校外学習などの弁当に絶対入っていた気がするな。
「かなた、弁当のおかず交換しない?」
ふと、桜が提案してくる。
桜の目は俺の弁当に入っている俺の家特製ハンバーグに向いていた。
昔に一口あげたら桜は気に入ったらしく、弁当にハンバーグが入っていれば絶対におかずの交換を提案してくる。
「わかってるよ。ちゃんと親父に二つに分けて焼いてもらってるから。」
「流石かなた!じゃあ君には私のミートボールをあげよう!」
そうして俺たちはおかずを交換し、少ししてから昼食を食べ終えた。
「さて、午後からは運動を行う。」
そう言って紅蓮先生は俺たちにアタッシュケースを渡してきた。
それを開けるとそこには仲谷クウガが着ていた狩衣のようなものが入っていた。
しかし、仲谷クウガが着ていたものと少しだけ異なっていた。
狩衣のようなものは黒を基調にして作られていた。
仲谷クウガのものは赤の線がいくつも入った。
だが、俺たちのものは線の部分が赤ではなく白色なのだ。
「先生、前会った陰陽師の人は違う色でした。何故色が違うのですか?」
桜も気になったのか先生に質問をした。
「それはな、陰陽師のランクを表しているんだ。」
それから先生は軽く説明してくれた。
色は全てで5色。
赤色が特級陰陽師、青色が一級陰陽師、黄色が二級陰陽師で緑色が三級陰陽師として白色は初級陰陽師だそうだ。
そして昇格は初級から三級以外は全て上のランクの人からの推薦でしか昇格できないとのこと。
初級から三級は陰陽師として努力していれば自然と昇格できるといっていた。
つまり、俺たちは一番下のランクに属している。
「説明がまだだったな。それは戦闘型狩衣。陰陽師が鬼や妖怪を祓う時に着るものだ。ちょっとやそっとでは壊れることはないからな。」
触ってみたが、確かに頑丈に作られている。それなのにとても軽い。
一体何で作られているんだ?
「それじゃあ着替えてもらうから、二人とも更衣室に案内するから俺について来てくれ。」
それから十数分後、俺たちは着替えを終わらせて教室の奥に集まっていた。
着替え方はアタッシュケースの中に説明書があり、そこに書かれていた。
しっかり着れているかが不安になる。
太ももには何かのホルダーが付いていた。説明書には札を収納するものだと書かれていたな。
集まった時先生も戦闘型狩衣を着ていた。線の色は青色なので先生は一級陰陽師であることがわかった。
「さて、今日は共通陰陽術式を教える。」
紅蓮先生はホルダーから三枚のお札取り出した。
三枚とも違う文字が書かれており、『瞬』、『
「この三枚が共通陰陽術式だ。まずは『瞬』から見せよう。」
そう言うと紅蓮先生は他の二枚をホルダーに入れ、『瞬』と書かれたお札を人差し指と中指で挟む。
そして「
次の瞬間、札が消え『瞬』の文字が浮かび上がり光の線となって脚にまとわりつく。
「これが共通陰陽術式『瞬』を使った状態だ。そして、共通陰陽術式を体に使うことを明装と言う。」
そこから紅蓮先生は、教室の見えない端目掛けていきなり走り出す。
普通の人なら1時間かけても端にたどり着けるかわからない距離を紅蓮先生は十分もかからずに往復して帰ってきた。
走り出した時に出来る風圧も凄まじく、飛ばされるかと思うほどだった。
俺たちは開いた口が塞がらなかった。
いやだっておかしい。明力操作でも、これほど威力は出ない。
ましてや、風圧で人が飛ぶかもしれないなんてことは無かった。精々出せても小風が吹いたぐらいだ。
「紅蓮先生、俺たちが行った明力操作でもここまでの威力は出せませんよ。」
俺は帰ってきた先生に言う。何度も言うが威力がおかし過ぎる。
「それは威力をあげるように術式を組んでいるからな。だが、いつかお前らに教える明力集中という技の応用の方が威力がおかしいぞ。」
なるほど、陰陽師になるには常識を捨てなくてはならないのか…。
俺たちは少し悲しくなった。
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