第十五話 明力の制御
音声が聞こえた方を見つめる俺。
「えっと、どなたですか?」
音声が聞こえてきた方向にあったのが電子生徒手帳だったが、しっかりと確認をとる。
『その問いには間違いがあります。私は人ではなく、電子生徒手帳に搭載されたAIです。』
「す、すいません。」
『謝る必要はありません。』
そこからAIから電子生徒手帳の説明を受ける。
「これ、説明書いらなくね?」と思ったが言わなかった。
それにしても、この電子生徒手帳すごすぎる。スマートフォンとなんら変わりがない。
変わっている点を挙げるなら、AIが自動で動き続けていること。
そして、術記憶なるものが出来るらしい。
「その術記憶ってなんなんだ?」
『術記憶とはその名の通り、陰陽術を記憶するためのものです。まだ術を使用していないので、記憶数は0です。』
なるほど、その陰陽術と呼ばれるものを使えば記憶されていくってことなんだね。
でも、陰陽術ってなんだろう?
とりあえず聞いてみるか。
俺はすぐにAIに聞いてみる。
『それは陰陽連の機密事項に属するので話すことはできません。』としか言わなかった。
今日の夢でぬらにでも聞いてみるか。
「その、君のことなんて呼べばいい?」
AIなんて読ぶくらいなら、「ヘイ!S○r○!」と呼ぶ方がまだいい気がする。
『呼び方はマスターが決めてください。私以外のAIは華子やマリアなど多くの名前で呼ばれています。』
そうか、人によって名前を変えているのか。
さて、どうしようか。俺は名前なんて一度もつけたことがない。
何かないのか?
ちょっとしたきっかけでいい名前が出るかもしれない。
そうだな、ぬらのイメージからつけよう。
はじめて会った時のイメージ。
あの暗い場所に咲き誇る美しい桜の下に
「じゃあ、俺は君のこと『
はじめて会った時、ぬらの横にあった暗い空間に美しく咲く桜。
あれは本当に綺麗だった。
『わかりました。私の名前を『夜桜』と確定しました。これで最終プロセスを終了します。』
電子生徒手帳の設定を終わり、就寝の準備を整える。
寝る前に理事長からもらったビー玉の様なものを握りながら就寝した。
「やっと普通にしゃべれる様になったな。」
そこには、いつものぬらが立っていた。声にノイズも混じっていない。
そして、ぬらが俺を興味深そうに見つめる。
ぬらの視線が目ではなく、身体全体を見ていることに気づき俺も視線を身体に向ける。
見てみると、ビー玉を握った手から全身にかけて、青白い光がまとわりついていた。まるでドラゴン○ールの気の様なものだった。
「これ、もしかしてかめ○め波とか撃てんじゃね?」
青白い光を見て一番初めに思ってしまった。
だって見た目完全に気だし、かめ○め波は男の夢だしな!
「出そうと思えば出せるが、まずは明力の制御ができなきゃ始まらないぞ。」
そう言ったぬらの目はどことなく冷たかった。
「だから、そのギュッって集めた部分から全身にバビューンって広げるんだよ!」
「そんなん言われたって擬音語ばっかでわかりにくいし、もう少し上手く教えろよ!」
明力を視認できるようになり、一人で練習しようとしたら横からぬらが「俺が教えてやる。」と名乗り出た。
とても自信満々で名乗り出たので断る理由もないので承諾した。
しかし、教えてもらって30分全く制御ができない。いや、全くというと少し語弊がある。
青白い光が全身から大量に放出されていたものを、だいぶ抑えれるようにはなった。
だが、それ以外は何も制御できていない。
本来なら、量だけではなく明力の流れや出力、一部に集まるなどのことをしなくてはならない。しかも、普通なら30分である程度習得できる。
しかしかなたは明力の流れは乱れ、出力のの調節もまともにできず、一部分に集めるなんてまだまだできない。
「ぬらの説明がもうちょっとうまければな〜。」
そう言うと、ぬらは悩み始める。そして閃いた!みたいな顔をした。
「かなた、明力を血液みたいなものだと考えろ。全身に巡り循環する。明力をも同じ身体の隅々に巡り、循環し続けるものだと。」
明力とは一種の生命エネルギーであり、放出しすぎると死にいたるとぬらは言っていた。
明力はもともと身体の認識できないところに存在し、身体を循環している。
今の俺は鬼界にいきなり連れていかれたことにより、身体の明力が過剰に反応し半暴走状態なのだ。
今まではぬらの術で勝手に制御されていたが、ビー玉を握ったことにより術の効果が一気に弱まった。
そのせいで、また半暴走状態に近づいてしまった。
しかし、明力はもともと身体の中を循環している。それは身体も無意識的にやっていたことだ。
だから、意識して循環させることで明力の循環率を上げることができるということだ。
「身体の中に明力を循環させる…。」
俺は目を閉じて意識を集中させる。
そして自分の中に太陽の光の様なものを見つける。
それを引っ張り出し、全身に
この暖かい光を全身に広げつつ、光を自分の中から出し続ける。
広げ終わると俺は目を開いた。そして身体に視線を向ける。だが、さっきより乱れが落ち着いた以外ほとんど変わっていなかった。
しかし、ぬらの目にはしっかり見えていた。明力の流れ、出力の均等さ、そして明力の質が上がっていることを。
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