◯ーミネーター

 あなたはタイトルの○に何という文字を入れただろう?


 殆どの人が「タ」を入れたのでは?もちろんそれも正解。でも、こと猫に関して言うと正解は「ファ」。知る人ぞ知るペット用ブラシだ。


 犬や猫を飼っている人のほとんどが悩む抜け毛問題。多頭飼いとなると尚更のことで、特にこれからの季節は戦争と言ってもいい。


 その主な対策がブラッシングである。猫は飲み込んだ毛玉がトラブルを起こすをことも多いので、その点からもブラッシングは欠かせない。


 5年前、初代猫さくらのために買ったのはシリコン製の柔らかいブラシだった。肌当たりが優しいので、子猫だったさくらも嫌がらずにブラッシングさせてくれた。


 ただ、このブラシには欠点があった。一度に取れる抜け毛の量が少ないのだ。そのため換毛期になると、毎日のようにブラッシングしているにもかかわらず、取り損ねた抜け毛が大量に撒き散らされることになってしまう。


 そこで私は、いつものようにネット検索をかけた。その時ヒットしたのが冒頭のファーミネーターだ。その評判は素晴らしく、「ごっそり」だの「根こそぎ」だの、そそられる謳い文句が並んでいた。


 しかし、私は躊躇した。


 ひとつは値段だ。これまたお高い。今見ても4千円前後はする。


 それで抜け毛問題が解決するなら安いもんだ、という考え方もある。ただし、それには前提条件がある。おとなしくブラッシングさせてくれたらという条件だ。


 実際、レビューにも痛がってやらせてくれないというものがあった。凶暴が猫の皮を被ったようなさくらがどんな反応をするかと思うと、そう簡単にポチることはできなかった。


 そうこうしているうちに換毛期(春の方が大変)は終わって秋になり、2匹目のももがやって来た。こうなると当然悩みも2倍になる。更に悩ましいことに、ももはブラッシングが嫌いなのだ。手早く、効率的に、しかし嫌がられずに済ます方法を考えなければならなかった。


 そこで、気にいられなくてもダメージの少ない安いブラシで試してみることにした。スリッカーと呼ばれる、細い針金状のブラシだ。


 結論から言うと、これは大失敗。普段ブラッシングを嫌がらないさくらまで逃げ出した。柔らかなシリコンブラシに慣れたうちの猫たちには刺激が強過ぎたのかもしれない。


 しかし私は諦め切れなかった。何故なら、スリッカーの方が毛がよく取れたからだ。そこで今度は、毛先に丸いプラスチック玉の付いたスリッカーを買ってみた。これなら痛くないはずと思ったのだが、何故か今度は毛がちっとも取れなかった。結局、ブラシは2つともお蔵入り、安物買いの銭失いだった。


 またまた換毛期がやってくる。一度のブラッシングで、小さい猫が作れそうなくらいの毛が抜ける季節だ。この憂鬱を晴らしてくれるのはファーミネーターなんだろうか、それとも4千円をドブに捨てることになるんだろうか。


 ちなみに、抜けた毛を掌で粘土のようにぐるぐる丸めると、猫達の大好きなボールのおもちゃになる。自分たちの匂いがするのが嬉しいのか本当によく遊ぶ。ただ、目を離すとバラバラにして飲み込んでしまうことがあるので注意が必要だ。これが毎日作れるのが換毛期……恐ろしいあいつがまたやって来る……


 I'll be back!ニャ

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