アフターストーリー19 願いごと

少し早いですが作品の世界はお正月ということで。

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「「あけましておめでとうございます」」


テレビから聞こえる除夜の鐘の音を聞きながら新しい年が始まった。

去年は小早川家で年越しをしたわけだけど、今年は親父達も帰国したということで久しぶりに田辺家で家族水入らずの正月を迎えている。


「楓ちゃん。五月たちがそろそろ来ると思うからそろそろお料理並べちゃってくれる?」

「はい!わかりました」


家族水入らずと言いつつも・・・普通に楓が居る。

母さんと一緒に料理を作ったり配膳を楽しそうにしてるけど家に帰らなくてよかったのかな?

俺としては楓が一緒に居るのは嬉しいけど。


「なぁ楓はおじさん達と年越ししなくてよかったのか?」

「う~ん。家族と別々で年越しするのは初めてだけど、どうせお父さん達も後でケンちゃんの家に来るしね。それに田辺家のおせち料理というか料理の味も覚えておきたいし」

「いいこと言うわね楓ちゃん。田辺家の味教えちゃうよ~♪

 あ、ちなみに五月には敵わないけど私も結構料理得意なんだからね!」

「わぁありがとうございます!!」


毎回思うけど母さんの言う田辺家の味って何だ?

ついでに料理得意なんて初めて聞いたぞ・・・結構な率でスーパーの総菜が多かった気がするけど(まぁ母さんも仕事忙しい人だったから仕方ないけどさ)


「ん?健吾何か文句ある?」

「な 無いです・・・」


母さん圧が強いよ・・・・

ま、でも母さんと楓の仲が良いのは悪いことじゃないよな。

そんなことを思いながらソファーに座りみかんを食べていると来客を伝えるインターフォンの音が聞こえた。


「おっ大樹さん達が来たかな?」


そう言いながら玄関に向かう親父。

どうせこの後もおじさんたちが来たら宴会が始まるんだろうけど、親父と大樹おじさんとは毎週末飲みに行ってる。本当父さん達って仲いいよな。


「やぁ健吾君に誠子さんあけましておめでとう!!」

「今年もよろしくね誠子。健吾君」


「大樹さんに五月。今年もよろしくね♪」

「あ、いらっしゃいお父さん、お母さん」


楓・・・何だかその挨拶はここが自分の家になってるぞ。


「今日の料理は楓ちゃんも手伝ってくれたのよ。たくさん食べてってね」

「ほぉ随分頑張ったな。こりゃ美味しそうだ」


ダイニングテーブルに並べたられおせち料理や各種オードブル。

この人数で食べるには多すぎるんじゃないかってボリュームだけど凄く美味しそうだ。あんまり母さんが料理している姿は見たことなかったけど料理が得意ってのは嘘ではなさそうだな。


「楓も頑張ったわね。っていうか誠子もこんなちゃんとしたおせち料理作ったの久々なんじゃない?」

「まぁ確かにね。向こうに居るときは料理している余裕もなかったし。それに今日は健吾にも少しは私が料理作れるところ見せておかないとってね。

 ってことで健吾は沢山食べなさいよ!」

「わ わかってるよ」


俺のために作ってくれたのか・・・ありがとな母さん。






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「楓。そろそろ行くか?」

「うん。そうだね」


年が明けてから数時間。

親父達は相変わらず楽し気に飲み食いしてる。


「ほら大樹さんも五月さんも飲んで飲んで!」

「はは、雄一こそまだまだいけるだろ♪」

「五月~楓ちゃんって本当いい子ねぇ~」

「あら、それを言うなら健吾君もいい男じゃない♪」


大人たちの宴会は終わりが見えない・・・仲いいよな本当。

俺も将来は裕也や福島とこんな関係になるんだろうか・・・


俺と楓はコートを着ながら、そんな親父達に声を掛けた。


「ちょっと初詣に川野神社行ってくるわ」

「あら健吾達行っちゃうの?」

「おぅ2人きりで楽しんで来いよなぁ~」

「はいはい・・・」


「いってきま~す♪」


飲みに夢中で聞いてないかと思ったけど意外と聞いてるんだな。

そんなことを思いながら楓と玄関を出た俺は商店街にある川野神社に向かった。

商売繁盛の神様だったと思うけど合格祈願も大丈夫だろう・・・多分。


「やっぱり外は寒いね」

「だな。家の中に居てわからなかったけど雪とか降りそうだよな」


空は曇り空。

気温も低いので本当雪降るかもな。


「寒い!!」


そう言いながら楓が俺の腕に抱き付いてきた。


「お おい楓」

「お父さん達も居たし今日はケンちゃん成分が足りないの。少し補給しなくちゃ!」

「成分って・・・」


・・・何その謎成分。前も言ってたよな それ。


まぁ・・・そんな疑問を持ちつつ俺と楓は神社への道を歩いた。

去年も行ったけど遅い時間ながら商店街には提灯の灯りが灯り初詣に向かい人なのか人も多くみられる。


「よう!ご両人。正月早々お熱いな」

「お前らも同じようなもんだろ。。。」


裕也と浜野さんが神社横のテントで甘酒をふるまっていた。

去年は確か福島と村田さんがお酒をふるまってたよな。

裕也の実家も商店街に店があるし当番制なのか?


「ほら健吾達も飲んでけよ。温まるぜ」

「ありがと」


本当、寒いから温まるわ。

去年は日本酒だったから飲めなかったけど甘酒なら俺達も飲めるし、それに何より温かい飲み物はありがたいな。


「2人は朝までなのか?」

「いや、俺達は昨日の夜からだったからもう少ししたら交代の人が来るよ。流石に眠いしな」

「うん。流石に疲れてきたよ」

「だろうな。ゆっくり休めよ」

「サンキュ」


裕也達と別れ俺と楓は参拝の列に並んだ。

去年も思ったけど小さい神社の割には結構混んでるんだよなここ。


「楓は何お祈りするんだ」

「ふふ 秘密」


そして俺達の順番。

去年と同じような感じだけど・・・


『楓共々皆が健康で楽しく過ごせますように・・・そして大学に合格できますように・・・

 そして楓と・・・』



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今年もたくさん読んでいただきありがとうございました。

次回の更新は年明け1/4の週でなんとか・・・

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