第140話 3学期の始まりと練習試合

のんびり過ごした冬休みも終わり3学期が始まった。

冬休みは休みの期間もそれほど長くはないので、教室に入っても久々感はあまりなかったけど、見慣れたクラスメイトと会えると何となく落ち着く。


イベントごとが多かった1学期、2学期に比べると3学期は大きなイベントは無い。

強いて言えば紅葉達の受験がある。俺も頑張って勉強教えたし紅葉も高坂君も揃って合格して欲しいな。


そして今日から部活も再開された。

追われる立場から追う立場になった俺達は打倒森下学園ということで夏の大会に向けスタートを切った。次は俺達にとっても最後の大会になるわけだし、今度こそはあいつらに勝って全国に行きたい。


ちなみに森下学園の全国大会は3回戦敗退で終わった。

同じ地区の代表校という意味で言えば活躍してくれた事は嬉しいけど、夏の大会で俺達が2回戦敗退だったことを考えると少し複雑な気分だ。

でもまぁ・・・今度バイトで藤原と顔を合わせたら"おめでとう"って言ってやらないとな。


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「ナイスシュー!」

「調子いいな健吾」

「いやいや・・・ランニングは続けてたけど正月はかなり怠けた生活してたからな・・・少し気合入れてかないと厳しいわ」

「まぁそうだよな。俺もちょっと正月は食いすぎて・・・」

「浜野さんの料理美味しいもんな」

「そうなんだよ。美玖のやつなお袋の店手伝ってくれた上に今年はおせち料理まで作ってくれたんだぜ。それがメチャクチャ美味しくてな。姉貴も美玖を少しは見習えってんだよ・・」

「あ、そういえば裕子姉帰ってきてたんだよな。もう帰ったのか?」

「いや。まだ居るぜ。家でゴロゴロしてるよ。大学はまだ休みみたいだからな」

「まぁたまには家族水入らずってのもいいんじゃないか?」

「ま まぁな」


こいつも何だかんだ言いつつ小さい頃は裕子姉に懐いてたしな。

と裕也と休憩しながら雑談をしていると福島が話しかけてきた。


「田辺、清水ちょっといいか?」

「おぅなんだ?」

「昨日森下学園の笹原から3学期も少し多めに練習試合組まないかって話が来たんだけどどう思う?」

「いいんじゃないか?悔しいけどあいつらレベルは高いし俺達もいい練習にはなってるだろ」

「まぁそうなんだけど、手の内見せすぎてもな・・・」


確かに部長としては心配するところか・・・

前も練習試合多く組んだけど吉見の3ポイントとか見せちまってたから本番は警戒されたもんな。


「そこら辺はあいつらも条件は同じだろ?それに気になるなら自分たちのプレイに制限を付けて手の内隠しておくってのもありだと思うぜ。練習試合なんだしそういうのもありだろ?」

「なるほどな。むしろその方が練習にはなるのかもな」


もっともあんまり制限付け過ぎるとゲームにならないかもしれないけどな・・・手を抜いて勝負できる相手でもないし。


「うん。ありがとな。受ける方向で先生やコーチと調整するわ」

「おぅよろしくな!」


と福島は入り口付近で談笑している顧問の田中先生と牧村コーチの方へ向かっていった。


「大変だよな部長って。福島にしても村田にしても根が真面目だから上手くまわせてるけど、俺には多分無理だなこういう対応って」

「裕也・・・まぁあえて否定はしないけど中学ん時は部長やってたんだろ?」

「・・・そこは否定はしてくれよ"お前なら大丈夫だろとかさ"・・・まぁ一応部長ではあったけど・・・細かい対応は副部長にまかせっきりだったからな」


副部長・・・そういえば聞いたこと無かったけど川野中時代の副部長って誰だったんだ?


「副部長って川野辺高校には居ないよな?」

「あぁ、芝崎ってやつでな。本当は川野辺高校に入る予定だったんだけど親父さんが病気で亡くなって母方の実家のある千葉に引っ越したんだよ。

 頭のいい奴だったけど変わり者でな。なんていうか人が嫌がる動きとか作戦というか戦術を考えるのが得意だったな」

「それって褒めてんのか?」

「一応褒めてるぞ。仲間に居れば心強いけど敵に回すと面倒な奴だよ」

「なるほどな・・・・じゃあその芝崎ってやつがバスケ続けてるなら全国大会で会えるかもな」

「そうだな。次こそは全国出場決めて俺達が全国優勝だからな」

「だな。よっし1対1やるぞ!」

「おぅ」


ライバルは森下だけじゃない。倉北も居るしその先全国に行けば強い高校はもっといる。俺達も今以上に練習して強くならないとな。


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練習が終わりいつもの様に俺は下駄箱で楓を待っていた。

今日は男子も女子も練習は少し長めで外はもう真っ暗だ。


「ケンちゃんお待たせ!」

「お疲れ。楓達も今日は練習時間長ったな」

「うん。三上コーチって"練習は長くやればいいってもんじゃない"って考えの人だけど森下って女子は4回戦まで行ったしね。今までと同じ練習量じゃ追いつけないし勝てないから」

「そうだな。俺達は追いかける側になったんだし今まで以上に頑張らないとな」


「そうだね。でも練習が増えるのは仕方ないけど・・・土日も練習試合とか増えそうだよね」

「まぁそうだろうな。平日は授業もあるし練習試合とかは組ずらいからな。バイトも少しセーブしないとならないかもな・・・」

「うん。ででもさ・・・・それだけじゃないでしょ?そ その・・・ケンちゃんと一緒に居られる時間が減っちゃうよね・・・・ちょっと寂しいかも」


か かえで・・・何て可愛いこと言うんだよ俺の彼女は・・・


「楓。土日会う時間は減るかもしれないけど平日の夜もあるだろ。それに楓が寂しいならいつでも会いに行くからさ。それじゃ駄目か?」

「ケンちゃん・・・」


と楓が俺に抱き着いてきた。


「ん? 楓どうしたんだ」

「ケンちゃん成分の補充中♪ もう少しこのままでいさせて」


と謎成分を補給すると言って楓はリラックスした顔で俺に抱き着いている。

まぁこれで寂しさが紛らわせるなら全然OKだけど・・・あんまり強く抱きしめられると俺も楓成分欲しくなりそうなんだけど・・・





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