第138話 年末年始②

「楓は何をお願いしたんだ?」

「ふぇ!?わ わたし!」


何を焦ってるんだ?


「どした?なんか聞いちゃいけなかった?」

「え?そ そんなことないよ。"家族みんな健康で過ごせますように"ってお願いしただけだよ。あ、あと"紅葉の受験が上手くいきますように"って」

「ふ~ん」(絶対他にもあるだろ・・・)

「ケ ケンちゃんこそ何をお願いしたの?」

「ん?俺か?俺は楓と一緒で"家族みんな健康で過ごせますように"ってのと"大学受験が上手くいきますように"後は"楓と今以上に仲良くなれますように"ってな」

「え、私と今以上に」

「前にも言ったろちゃんと将来も考えてるってな」

「う うん」

「嫌だったか?」

「そ そんなことない・・・その・・私も同じ事お祈りしたし・・・」

「そ そっか はは それなら願いが叶うのも早いかもな」


そういうことか・・・そりゃ恥ずかしいし照れるよな。

でも、普通にお願いしてたけど、あらためて楓から言われると結構照れるなこれ。


「正月早々 な~にイチャついてるんだよ。後ろが詰まってるぞ」

「そうそう イチャつくなら家帰ってからねぇ」


と裕也と浜野さん。

イチャつくって・・・腕組んでお参りに来てるお前らも俺達の事言えないからな。


「いや、裕也達も人の事言えないからな。

 あ、順序逆になったけど今年もよろしくな!」

「うん。よろしくね」

「よろしくな。ところで2人はこの後どうするんだ?」

「ん?俺達か?あんまり考えてなかったけど」


うん。普通に夜中だし帰って寝るかなってくらいしか予定してなかったな。


「俺んちで商店街組合の新年会やってるんだけど来るか?小早川とか知り合いも結構いるだろ?まぁ流石に酒は飲めないけど飯は色々食べれるぜ」

「俺達が顔出しても大丈夫なのか?」

「まぁ2人なら大丈夫だろ」

「どうする楓?」

「そだね。新年のご挨拶がてらちょっと行ってみよっか」

「了解。じゃ裕也よろしくな」

「おぅ じゃ行くか」


ということで、神社を離れ裕也の実家でもある小料理屋へ向かった。

店はシャッターが半分だけ空いた状態で、店内に入ると見慣れた商店街のおじさんおばさんたちがお酒を飲んで盛り上がっていた。


「あら!健吾君と楓ちゃんも来たのね。今年もよろしくね」

「あ、あけましておめでとうございます。こちらこそよろしくお願いします」

「よろしくおねがいします」

「ふふ うちの子達もだけど若夫婦が新年の挨拶にでも来たみたいね。料理色々あるから遠慮なく食べてってね。お酒は駄目だけどジュースとかもあるからね」

「はい!遠慮なくいただきます」

「夫婦 若夫婦 ねぇケンちゃん若夫婦だって♪」


楓は新年早々ご機嫌だな。

でも料理豪華だな。凄く美味しそうだ。

お店のカウンターには、所謂おせち料理が多数並んでいる他に和洋中と色々な料理が大皿に並んでいる。


「その料理ね、美玖ちゃんに教えてもらって私も手伝って作ったんだよ」

「おっ湯川ちゃん。それに長谷部。2人も来てたんだ。今年もよろしくな!」

「おぅこちらこそ!」


そういえば2人の実家も商店街で店やってるんだよな。

長谷部の家は喫茶店、湯川ちゃんの実家は呉服店。

どっちの家も昔から商店街にある店だし商店街の組合に入ってるの不思議じゃないか。


「おっ雄一んとこの息子さんと大樹んところのお嬢ちゃんじゃないですか~」


俺と楓が小さい頃に良く通ってた肉屋のおじさん。

いい感じに出来上がってるな。


「あ、堀内のおじちゃん。随分酔ってるねおばちゃんに言いつけちゃうよ!」

「うっ楓ちゃん連れないな~ 今度コロッケおまけしてあげるから見逃してよ~」


おばさんには頭があがらないんだな。母は強しか♪


「あ、そうだ健吾君だったよな。雄一今度帰ってくるんだろ?いつ頃になるんだ?」

「え?親父ですか?3月くらいの予定です。今この辺りで家も探してるんですよ」

「おっ!思ったより早いんだな。こりゃ帰ってきたら宴会だな!」

「宴会ですか・・・そういえば、前も気になったんですけど、おじさんって親父の事を雄一って呼んでますけど知り合いなんですか?」

「あれ?言ってなかった?あいつは川野辺高校時代の後輩だよ。ちなみに大樹とは同級生な。雄一は生徒会に入ってて当時俺や大樹も役員だったからそれで知り合ったんだ。当時はよくつるんでたな」

「へぇそうだったんですね」

「そいうこった。今から楽しみだな。よろしく伝えといてくれや」

「はい!」


その後も美味しい食事を食べながらおじさんおばさん方との会話を楽しんだ。

何だか"雄一の息子"ってことで初対面の人からも話しかけられたりしたけど、親父ってそんな有名人なのか?


「ねぇケンちゃんそろそろ帰らない?何だか眠くなってきたかも」

「ん?そうだな俺も少し眠いわ。帰るか?」

「うん」


ということで商店街の方々や裕也に浜野さん、長谷部に湯川ちゃんと皆に挨拶をして先に帰宅させてもらった。

というかこの新年会に終わりってあるのか?

もう外は明るくなってきてるんだけど・・・


そして、今は小早川家。

五月おばさんと大樹おじさんはリビングでグラスを持ったまま寝ていた。

横には両手で足りないくらいの数の空き缶が・・・

『新年早々飲み過ぎですって・・・』


「じゃ、俺も帰るから楓もゆっくり休めよ」

「・・・ケンちゃん 一緒に寝よ」

「え?それって・・・おじさんたちも居るんだしさ」

「そ そうじゃないよ。ただ一緒に添い寝するだけだよ。

 ほらお祈りしたじゃない!今以上に仲良くって!ね!」

「う そうだな じゃ一緒に寝るだけな」

「うん!」


楓の部屋に入り2人でベッドに横になると楓は直ぐに寝息を立て始めた。

もう朝だもんな眠くもなるか。

時計を見ると朝の4時。結構裕也の家に長く居たみたいだ。


楓の可愛い寝顔。

ずっと見てても飽きないな。

『今年も、そしてその先もよろしくな楓』

俺もいつの間にか寝てしまった。


昼過ぎに目を覚まして2人でリビングに顔を出したときおばさんたちに「正月早々お盛んねぇ~」とからかわれたのは別の話・・・添い寝してただけですって。

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