第123話 バイトの新人さん

修学旅行も終わり、期末テストも近い12月の火曜日。

今日は喫茶店でバイトの日だ。

部活は月・水・金の3日、木曜は紅葉の家庭教師があるので喫茶店でのバイトは火曜日と日曜日に入れている。

稼げるときに稼ぎたいということで、時々部活の後もシフトに入ってるけど疲れていてきついときもあるしあんまり長く働けないからね。

で、この火曜日は楓もシフトを入れていて学校帰りは一緒にバイト先に向かうのが習慣になりつつある。


そんなバイト先にて、いつもの様に制服に着替えてホールに出るとバイトリーダである島田さんに呼び止められた。

この人も結構な頻度でこのお店に出てるけど大学の出席は大丈夫なんだろうか?


「田辺君、小早川さんちょっといい?」

「はい 何でしょう」

「今日から火曜日のシフトに新人さんが入るから紹介したいの」

「新人ですか?今回はバレーボール部とかですか?」


そう。このお店のバイトは近隣高校の運動部の生徒が多い。

俺と楓は長谷部繋がりのバスケ部だし、湯川ちゃんの所属するバレーボール部の女子も何人かバイトに入っている。

高校生で部活に入っているということもありシフトに入れる日数や時間は短かったりするんだけど、その分人数は確保出来ているので深刻な人手不足にもならず何とか乗り切れているんだ。


「それがね。今回は森下学園の手芸部の子なのよ」

「へぇ珍しいですね運動部以外のバイトさんって」

「そうなのよね。夏川さんのお友達らしいけど仲良くしてあげてね。

 そろそろ来ると思うんだけど・・・」


森下の夏川さんの友達か。だとすると藤原とかも知り合いだったりするのかな?


[カランコロンカラン]

「すみません!遅くなりました」

「あ、由紀ちゃんこっちこっち」

「すみません。ホームルームが長引いちゃって」

「うん大丈夫よ。まだ入りの時間の前だから。

 あ、田辺君、小早川さん、この子が今話してた森田由紀さん。

 火曜日と木曜日にシフトに入ってくれる予定だから仲良くしてあげてね」

「は 初めまして森田由紀です。森下学園の2年生です。

 こういうバイト初めてなんですが、頑張りますのでよろしくお願いします」


ん?森田由紀?・・・・もしかして藤原の話に出てきてた彼女さん?

何だか、最近告白して付き合う様になったって延々ノロケを聞かされたけど・・そうなのか?


「初めまして。小早川楓です。川野辺高校の2年でバスケ部です。私もまだバイト始めてから日が浅いんだけどお互い頑張りましょうね。それにシフトが火曜日と木曜日なら私と一緒だと思うからよろしくね!」

「はい!よろしくお願いします!」

「あ、俺は田辺健吾。楓と同じく川野辺高校の2年でバスケ部です。

 あの違ってたら申し訳ないけど森田さんって藤原の彼女さんだったりする?」

「え?あ あの和君と知り合いなんですか?あ、そかバスケ部ですもんね・・・・はい。和君とはお付き合いさせてもらってます・・・」


と恋人宣言したのが恥ずかしかったのか耳まで赤くして俯いてしまった。

何だか初々しいな。


「へぇ~藤原君の彼女さんなんだ。藤原君最近凄く幸せそうだもんね。森田さんのお陰かな?」

「ふぇ?和君幸せそうにしてるんですか?」

「うん。私は時々同じシフトに入ることがあるんだけど最近凄く明るいし楽しそうだよ」

「そ そうなんですか~」


藤原も随分悩んでたみたいだからな。上手くいったみたいで本当良かったな。

ん?でも今日勤務だと藤原とはシフトが合わないよな。


「島田さん。藤原ってシフトは水曜と日曜ですよね。森田さんと被らないけど」

「そうなのよね。最初は同じシフトにしてあげようかと思ったんだけど森田さんも部活あるのと、同じシフトだと藤原君に頼っちゃうだろうからって言うから別にしたのよ」

「へぇ森田さん偉いんだな」

「そ そんなことないです!今まで和君に頼りっきりだったしデートのお金とかもいつも多く出してもらってたから自立できるようにってこのバイトも決めたんです。だから一緒には居たいんですけど・・・」

「偉いと思うよ。多分藤原も喜ぶんじゃないかな」

「だと良いんですけど」


聞いてたより随分しっかりした感じのいい子じゃないか。

藤原にも色々相談されたんだし、この子も応援してあげないとな。


「俺も藤原とは友達だし、森田さんの事も応援するから何かわからないこととかあったら遠慮なく聞いてくれな」

「ありがとうございます!」

「・・・それから大丈夫だと思うけど、ケ・・田辺君は私の彼氏だから取ったらだめだからね」


と俺の腕に抱き付きながら森田さんに何やら彼女宣言する楓。

藤原の彼女なんだから、そんな心配しなくても。


「は はい大丈夫です。それにしても2人も恋人同士だったんですね。何だか素敵です」

「へへへ 素敵かなぁ~」


何やらニヤける楓。

あ、楓!クールなキャラが大分崩れてるぞ。


にしても・・・・・ここまで雑談していてふと思った。


「島田さん。結構雑談してたけど・・・・お客さんが全然来ないですね」

「うん。店員が4人もいるのに暇だよね」


天気が悪いせいなのかはわからないけど、結局この日は客足が少なく、凄く暇だった。まぁおかげで島田さんと森田さんは接客の研修とか言って練習出来てたから丁度良かったのかもな。

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