第121話 修学旅行③

「楓そろそろ到着だよ」

「え?あ、ごめん寝ちゃってたんだね」

「昨日寝たの遅かったんだろ?それに」

「それに?」

「楓の寝顔可愛かったよ」

「ケ ケンちゃん。女の子の寝顔見てるとか趣味悪いよ」

「ごめんごめん」

「・・・私、口とかあけて寝てなかった?」

「大丈夫だよ」


石川県金沢。北陸新幹線が開通して関東からも行きやすくなってここ数年で人気急上昇の観光スポットだ。

川野辺高校の修学旅行のコースでも今年から追加されたらしく希望グループは多かったみたいだけど俺達のグループは運よく抽選に当たり金沢に行くことが出来た。ちなみに旅程は金沢駅までバスで移動し、そこから夕方までグループごとの自由行動。そして指定のホテルで1泊といった感じだ。


京都のホテルを出たのは朝7時。

休憩を含めて約4時間のバス旅はあと少しで終了し、まもなく金沢駅前のバスターミナルに到着する。


「着いたぁ~」

「わぁこのオブジェ?写真で見たことある!」

「鼓門っていうみたいだよ。さっき調べたけど金沢駅って世界で最も美しい駅14選に選ばれてるらしいよ」

「「へぇ」」


俺達含めバスに乗っていた6グループは、駅前で引率の先生からホテルの場所や今日の予定などの説明を受け楽しみにしていた金沢観光を開始した。



「で健吾、まずは近江町市場で昼飯だっけ?」

「いや。まだ昼には早いし先に21世紀美術館を見学してその後だな」

「え~美術館とかいいよ。早くお寿司食べたいな」

「でもさ、最低限レポートを書く必要がある史跡とかは行く必要あるんだろ?

 時間あるなら先に行っちまおうぜ」

「俺もその方がいいと思う。午前中に美術館行って、その後昼飯なら後の観光はゆっくりまわれるからな」


そう。自由行動と言いつつもレポート提出が必要なポイントが幾つか設けられていて最低2か所は行かなきゃいけないことになっているだよな。

結局そこを回ると自由時間は限られてくるからなるべく時間は有効に使いたい。

ちなみに金沢の場合、21世紀美術館とひがし茶屋街、にし茶屋街それに金沢城跡と兼六園がチェックポイントとなっているので俺達は21世紀美術館とひがし茶屋街に行く計画を立てていた。これ以外は幾つか行きたいところを皆で上げているので時間が許す限り観光を楽しみ予定だ。


「そうだよね。太一の言う通り先に行った方が後でゆっくり出来そうだね」

「うん。美術館は美術館で楽しそうだしね」


と、お刺身の誘惑はありつつもまずは周遊バスに乗り21世紀美術館に行くこととなった。裕也達は興味なさそうだけど俺としては結構この美術館楽しみにしてたんだよな。


「なにここ 凄く広いし綺麗!」

「俺美術館とか行かないけど、たまにはこういうところもいいな」

「建物そのものも素敵だよね」


うん。おおむね好評だな。

最初コースに入れるって言ったときは不評だったけど"人気スポットになってるんだから楽しめないわけがない!"って押したんだよな。

ちょっと安心した。


美術館内では個展もいくつかやっていたけど、高いしまぁ特に見なくていいだろうということになり、俺達は美術館の内外にある常設の作品を見て回った。


「おぉ水の中に人が居るみたい!」

「へぇ小部屋の天井をガラスにして水を張ってるだけなんだ。不思議~」


スイミング・プールという作品らしいけど、外から見ると水を張ったプール。

でも実際は地下にある小部屋の壁を水色に塗りガラスの天井に水を張っている。

小部屋の中から外を見上げるのも不思議な眺めだけど、外から人が居る小部屋を見下ろすのも水の中で人が動いているようで不思議な感覚を覚える。


曇りや雨が多いという金沢にしては天気も比較的良かったし芝生を歩くのも気持ちよかった。とりあえずはみんなも楽しそうだし良かったかな。


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「どの店にする?」


美術館を出た俺達は町を散策しながら香林坊にある近江町市場へやってきた。

ここでお昼ご飯として、少し贅沢にお寿司か海鮮丼を食べる予定だ。


「あそこの行列が出来てる回転ずしが有名みたいだぞ」

「うん。美味しそうな雰囲気だしあのお店にしよ!」


そして、市場内を歩き美味しそうな店をチェックした結果、行列の出来ていた回転寿司のお店に入ることになった。


「やば。これ美味しい!」

「うん。お寿司の具も大きいしぷりぷりして新鮮」

「このカニの味噌汁も美味しい!」

「ノドグロだっけ?これも油がのってて美味しいよ」


俺達の地元も海は近いのでお寿司は美味しい方なのかなとは思うけど、何だかレベルが違うというか美味しいって言葉しか出てこない。値段もそれなりではあるけど十分価値があるよな。

とは言っても・・・・高校生のお小遣いには限りがあるので、お財布と相談しながら美味しいお寿司を堪能した。


「ふぅ美味しかったなぁ」

「やっぱりお魚美味しいね」

「ケンちゃん 次は何処だっけ?」

「ん?次は周遊バスに乗ってひがし茶屋街だな」

「じゃぁ次は和菓子だね!」


和菓子か・・・まぁ間違っちゃいないけど食べてばかりだと太るぞ楓w

とまぁそんなことを思いつつも香林坊から周遊バスに乗り俺達ひがし茶屋街を目指した。

茶屋街は、昔ながらの街並みを残しつつカフェや工芸品の販売をしているショップなどがある地区で人気の観光スポットだ。


「あった!あのお店だよ」

村田さんが指さすところには古民家を改装した和カフェがあった。


「わぁ雰囲気いいね。写真撮ろ写真!」

「でしょ!ネットで見て雰囲気良さそうに見えたんだよね」

「あ、あんみつに金箔が乗ってる!」


女性陣のテンションは高めだ。

でも、お店の落ち着いた雰囲気も良いし写真映えもしそうだよな。

店員さんに人数を伝えると2階に案内された。畳のお座敷だ。

早速、金箔入りのあんみつや見た目も綺麗な和菓子などをいくつか注文し、みんなで楽しんだ。

もちろん食べる前に写真も撮りましたよ。

浜野さんはSNSに早速アップしてたし。


その後、何件かお店を周りお土産を買ったり、みんなで写真を撮ったりと楽しんだ後、日も暮れてきたのでホテル方面のバスに乗った。


そういえば、茶屋街では由良達のグループも来ていた。

いつもクールな強気なキャラの吉見 妹が由良と仲良さそうに金箔ソフトクリームの食べさせあってたのは・・・まぁ見なかったことにした。


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