第108話 悩み事①

文化祭、体育祭と大きなイベントもようやく終わり、今月後半は修学旅行。


が、その前に俺達にとっては大切なイベントがある。

そう。俺と楓の誕生日だ。

生まれた時間は俺の方が少し早かったみたいだけど、俺と楓は同じ日に同じ病院で生まれた。小さい頃はよく一緒に誕生日をお祝いしてもらったけど、今年はどうなるんだろう。

体育祭明けで休校となった今日。俺は疲れた体を休めながら、何気にもう1時間以上もあーでもないこーでもないと頭を悩ませていた。


「プレゼントかぁ・・・・・」


思わずつぶやいてしまったけど、楓って何をプレゼントしたら喜ぶんだろ。

本人は"似合わないから"とか言いつつも可愛い洋服とかアクセサリーとか、それにぬいぐるみとか結構好きなんだよな。

小さい頃は相手の好きなものとかあんまり意識してプレゼントしたこともなかったし、付き合い始めてからも買い物の流れで服とか買ってあげたことはあったけど、ちゃんとしたプレゼントってしたことなかったよな。

一緒に買いに行くか?いや、どうせならサプライズで・・・う~ん決まらん。


そういえば裕也はどんなプレゼントしてるのかな、あいつそういうの慣れてそうだし聞いてみるか?

そうだな。そろそろ昼飯時だし行ってみるか。


裕也の実家は小料理屋なので基本は夕方から夜にかけて営業してるけど、平日に限り近所のサラリーマンや学生向けにランチ営業をしている。

ベッドタウン的な川野辺だけど、近くに大学もあるし最近はショッピングモールが出来たことや高速のICも出来ることから商社なども事業所を作るようになってきた。そのため、昼の弁当や食堂の需要も高まってるんだよな。

平日は当然の如く学校なので、行ったことは無いけど、安くて美味しいということで評判らしい。


[ガラッ]

「いらっしゃいませ~」

『ん?おばさんにしては声が若い?』

「え?浜野さん?」


「あ!田辺君。お昼食べに来たの?」

「あ あぁ 裕也にもちょっと用事があったから・・浜野さんは何で?」

「うん。私はバイトだよ。普段は学校帰りにバイトさせてもらってるんだけど、今日は学校休みだしお願いして働かせてもらってるんだ♪

 夜はおじ様たち向けの渋いメニュー多いけど、昼は学生向けのガッツリ系の料理とかもあるから一度挑戦してみたかったんだよね」

「そ そうなんだ」


本当料理作るの好きなんだな。まぁ好きな料理作ってバイト代も入るんだし浜野さん的には天職なのかもな。


「あ、奥の席空いてるから座ってて。注文決まったら呼んでね。

 裕也も厨房手伝ってるから声掛けとくね」

「ありがとう」


そっか裕也も厨房を手伝ってるのか。

あらためて聞いたことないけど、あいつはこのお店を継ぐのかな。

とランチの注文をしてしばらく待っていると


「おぅ待たせたな。昼食べながらでいいか?丁度休憩貰えたんだ」

「あぁ大丈夫だ。 忙しいとこありがとな」


と裕也がランチのアジフライ定食を二人前持ちながらやってきた。

揚げたてのアジフライ・・・メチャクチャ美味しそうだ。

揚げ物は楓の家で時々ご馳走になるけど、一人だと中々ハードル高いからなぁ~


「「いただきま~す」」

と早速、アジフライを一口。

[サクッ]

「やっぱり揚げたては美味いなぁ。サクサクで揚げの加減も絶妙だし」

「ありがとな。それ俺が揚げたんだぜ」

「まじか。裕也って料理上手いんだな」

「う~ん まだまだ修行中だけどな。

 休みの日とかは結構厨房で練習してるんだぜ」

「ってことはやっぱりお店を継ぐのか?」

「将来的にはな。一応大学は行こうかと思ってるし、もう少しバスケもしたいしな。それに美玖も栄養学とか勉強したいとか言ってたし」


色々将来に向けて裕也も浜野さんも頑張ってるんだな。


「そか。頑張れよ!」

「ありがと。

 で、美味しく食べてくれるのは嬉しいけど、何だ俺に相談って?」

「あ あぁ美味しくて聞くの忘れるところだったわ・・・

 裕也って浜野さんの誕生日とかにどんなプレゼント渡してる?」

「プレゼント?・・・・そうか、もうじき小早川の」

「そうなんだ。何となく楓の好きなものとか見当は付くんだけど、何を上げていいのか悩んでてな」

「プレゼントかぁ。俺はベタかもしれないけど美玖の誕生日はぬいぐるみプレゼントして、その後食事行ったな。記念日とかは花束とかもありかもな」

「そうか。やっぱりそのあたりかな。アクセサリとかはどうかな?」

「アクセサリは好みとかもあるし付き合い始めは難易度高いぞ。

 買うなら一緒に行くとかの方が安全かもな。金属アレルギーとかあるかもしれないし」

「なるほどねぇ」


金属アレルギーか。確かに女性って男性より皮膚が弱かったりとかあるからな。それとなく楓にも聞いてみよう。


「うん。田辺君わかってないなぁ~」

「え?」


裕也と話をしていると何処から聞いていたのかわからないけどお茶を持った浜野さんが会話に入ってきた。


「楓ちゃんってさぁ田辺君に会えるのずっと待ってたくらい一途なんだよ。

 田辺君が送るものなら何でも喜ぶに決まってるじゃん。

 それにプレゼントとかじゃなくても誕生日が同じってだけで二人の記念日なんだし、お食事とか旅行とかそういう思い出に残ることでいいんじゃないかな」

「な なるほど」(確かに同じ誕生日ってだけでもだな)

「そういうこった。あんまり悩まなくてもお前が考えて送ったものなら小早川も喜ぶよ」

「そうだな。ありがと裕也。それに浜野さん」


うん。やっぱり裕也に相談して良かったな。

こういうのって一人で考えてると中々考えもまとまらないし独りよがりになりがちなんだよな。


「じゃまた今度飯食べにくるよ」

「おぅ じゃまた学校で!」

「うん。またね田辺君」


と食事を終えた俺はお店を出て家とは逆の河川敷の方に向かった。

気分も少しすっきりしたものの結局何を買うかは決まってないので、少し散歩でもしながら考えることにした。

とスマホの着信が。着信名は『吉見』?

部活では時々話もするけど、クラスも違うし電話して来るとか珍しいな。


[はい。田辺です]

[吉見だけど、今大丈夫か?]

[あぁ大丈夫だ。珍しいな吉見が電話してくるなんて。何か急用なのか?]

[急用・・・といえば急用なのかもな。出来れば直接話したいんだけど時間取れるか?]

[どうせ今日は暇だし。構わないぞ]

[じゃぁ・・・川野辺駅前の・・・。田辺 悪いけど川北までこれるか?]

[構わないよ]

[悪いな。じゃ川北のバスターミナル前にある「Woods」ってカフェがあるから、そこに15:00で頼む]

[了解 じゃまた後でな]


なんだろ一体。

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