第76話 全国大会③

病院で検査を受けた福島は、特に異状は無しだったが倒れたときに打ったのか肩の軽い打撲と診断された。

今日の3回戦。そういうこともあり大事をとって福島はベンチから外れている。

北島先輩も1回戦の負傷で本調子ではないため、川野辺高校で万全な状態のポイントガードは裕也のみとなった。

そのため3回戦は裕也をメインにサブで北島先輩がポイントガードを行うこととなった。


「何だか俺一人だと思うと緊張するな・・・」

「知らないポジションってわけでもないんだから裕也なら大丈夫だよ」

「まぁそうだな。ここでプレッシャー感じてても仕方ないよな」


頑張るしかないわけだけど、3回戦ともなれば相手も更に強くなってくるんだろうし厳しい試合になりそうだ。


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3回戦。

今日は女子とほぼ同じタイミングで試合が開始される。

お互い昨日みたいに応援は出来ないけど、ホテルを出る前にお互い頑張ろうとエールを送りあってきた。


会場到着後、俺達はウォーミングアップを開始した。


「あ、すみません!」

「栗田!あんまり固くなってると普段の力出せないぞ」


今日の試合、福島に代わり1年の栗田が交代要員として入っている。

1年としては大抜擢だが、練習を見ていても裕也が指導していただけあっていい動きをするんだ。

だた、今日はかな~り緊張しているようだ・・・・まぁ仕方ないか。


「わかってはいるんですけど、やっぱり緊張しますよ・・・」

「鮎川さんも1年でレギュラー候補に入ってるじゃないか。栗田も負けてられないだろ」


そう。栗田の想い人でもある鮎川さんも全国大会では交代要員として抜擢されて2回戦では試合にも出場していた。

ちなみに鮎川さんからは前に恋愛相談で栗田の事が好きとか言ってたから両想いなんだけどね。二人とも不器用というか・・・


「た、確かに瑞樹は試合にも出てましたもんね」

「彼女も緊張しながらも結果を出したんだ。負けてられないだろ」

「そうですね。瑞樹に出来たんだ俺だって」

「そうそう、頑張れよ!」


これで立ち直ってくれるといいんだけど。


そんな練習時間も終わり、いよいよ試合の時間となった。

今日は地元千葉代表の八千代工業高校。攻守のバランスの取れた高校だ。

地元というだけあって応援も多くちょっとアウェイ感がたっぷりな感じだ。


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そして、試合開始。

ジャンプボールで弾かれたボールを裕也がゲット、前線は俺と森野先輩が走る。それを見た裕也は森野先輩側にパスを出すフェイントで俺にパスを送った。


俺はパスを受けシュートを放つが、八千代工業の戻りが早くシュートコースが塞がれたため、ややゴールをそれてしまった。

『しまった外れる!』


「リバウンド!!」

森野先輩と佐藤先輩がゴール下に入り込みボールを取りに行くが、相手の方が高く相手の速攻を受けることとなった。小宮先輩と裕也を先頭に素早く自陣に戻りディフェンスを行うが、シュート精度もスピードも相手が上手。先制点を取られてしまった。

その後もスピードのある攻撃に翻弄され中々攻めきれない状態だ1クォーターを終了した。


「すみません。1発目俺がゴールを外したせいで」

「いや、あればシュートコースを塞がれたんだから仕方ない。それよりも相手は思った以上にスピードがあるし遠くからもシュートを打ってくる。多分僕達よりも実力は上みたいだな」

「小宮の言う通り奴らは強い。それに試合慣れしている。前の試合同様守りからのカウンターで第2、第3をしのぎ、第4クォーターで勝負に出るぞ。交代メンバもいつでも出られるようアップをしておくように!負けたらそこで終了だ。次の試合の事は考えず全力でいけ!」

「「はい!!」」


コーチの言う通りだ。ここで負けたら先輩達との楽しい時間も終わりだ。

何としても・・・・


だが、八千代工業の攻撃力は昨日の奈良をも上回り、必死のディフェンスにも関わらず、点差はついに2桁を越えてしまった。

そして、最後の第4クォーター。

攻撃に転じた俺達は必死に攻めたが、相手の守備に阻まれ思う様に得点は出来なかった。

結果、点差は縮まったものの力及ばず5点差で試合は終了した。


俺達はの全国大会はここで終わった。


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「先輩!俺悔しいです!!」

「だな・・・・」

「あぁ悔しい・・・・」


栗田も攻守に活躍してくれたが、だが相手の方が上手だった。


「田辺、栗田、それに清水。よくやってくれた。夏の大会はここまでだが、冬それにまた来年以降も大会はあるんだ。次は3回戦勝利、そして優勝を目指して頑張ってくれ」


小宮部長も悔しいんだろうな・・・・

俺もバスケ始めてから試合で負けたことはある。

でも、今日の試合あと一歩だったんだ。

第4クォーター・・・・俺がもう少し点を取れてれば。

やっぱり悔しい・・・・


そして、ホテルに戻ると顧問の田中先生から女子も敗退したとの連絡を受けた。

恩田先輩が執拗にマークやファウルを受け怪我で途中退場したとの事だ。

その後、村田さんも徹底マークを受け、思うような試合運びが出来なかったらしい。恩田先輩心配だな。


楓達も悔しいんだろうな。


『早く楓に会いたいな・・・』

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