第75話 全国大会②

全国大会2日目

今日は午後からの試合という事で、午前中に近くで行われる女子の試合を応援に来ている。女子バスは去年も全国大会に来ているけど2回戦で負けたということで今日は気合十分だ。


「楓頑張れよ!」

「うん 応援よろしくね♪」


相手は強豪らしいけど、皆表情は明るいし変な緊張も無いみたいだし大丈夫かな。


「雄一 勝ったら私にもサービスしてねぇ♡」

「う。。。わかったから勝てよ」


・・・・恩田先輩は通常運転だな。しかしサービス内容気になるな。


--------------

試合開始早々、いつもの雰囲気からは想像できない真剣な表情で恩田先輩が動いた。

吉川先輩が競り勝ったジャンプボールを拾い、そのままのスピードでゴール下に持込み開始わずか数秒でシュートを決めた。

やっぱりこの人は凄い。

その後、存在感をアピールした恩田先輩は想定通り徹底的にマークされたけど、その分フリーになった村田さんが楓や吉川先輩らを上手く使い得点を重ねた。

そして5点差勝ち越し状態で迎えた第4クォーター。

駄目押しとばかりに投入された浜野さんが3ポイントを量産し一気に2桁の得点差をつけたところで試合は決まった。

1回戦目は僅差で勝ったという事だったけど、今回は終わってみれば14点差で勝利。

最初のプレイで印象を強めた恩田先輩に注意を払い過ぎてフリーの選手が増えたのが、相手の敗因かもしれないな。ある意味作戦勝ちだ。


「雄一勝てたよ・・・・」

「おめでとう智香」

「んふぅ~ 頑張ったんだよ私・・・」


と小宮先輩は静かに恩田先輩の頭を撫でる。

何だか恩田先輩の顔が緩んでる。

そして、試合中の姿からは想像できない雰囲気で、そのまま小宮先輩に抱き着いて涙を流す恩田先輩。去年は相手のマークで思うようにプレイが出来ず悔しい思いをしたらしい。だからこそ色々と思うところもあるんだろうね。

本当おめでとうございます。


「ケンちゃん!」

「おぅ楓 おめでとう!」


楓もやり切った顔をしている。


「うん。次はケンちゃん達の番だね」

「だな。この勢いにのって、俺たちも頑張るよ」


--------------

一旦宿舎に戻り昼食を食べた俺たちは、2回戦が行われる体育館へと移動した。

午前中とは逆に今度は女子バスメンバが応援に来てくれている。

何気に楓の前で公式戦に出るのって初めてな気がするしカッコいいところ見せたいな。


2回戦は、初戦突破で緊張もほぐれたためか皆少し気持ちに余裕を持って迎えることが出来ていた。

ただ、当然ながら相手も1回戦を突破してきた各都道府県の代表だ。

弱いはずはない。


そして、コーチからスターティングメンバーが発表された。

今日は、小宮先輩、畑先輩、長谷部、福島、俺の5人だ。

ちなみに北島先輩は大事をとってベンチスタート。裕也と森野先輩、佐藤先輩も控えてくれてるし、後は考えず全力で試合に臨んだ。


「で でかいな・・・」


コートに出てきた相手チームの身長は、川野辺で一番背が高い長谷部と同レベル。いやもっと高いか?

奈良県代表の奈良高等学園。身長の高い選手が多く、シュートの精度含め攻撃力に定評のあるチームだ。

攻撃力のあるチームということで、ディフェンスラインの強化として小宮先輩と畑先輩のコンビ、それに長身の長谷部を投入したわけだけど、予想以上に圧があるな・・・


そして予想通り試合開始早々に奈良高等学園の猛攻が始まった。

長身に似合わぬ素早い動きで次々とシュートを放ってきた。

ゾーンディフェンスの陣形でチャンスがあれば俺と福島が相手ゴールに攻める作戦だったが、その余裕すらほとんどない状態で第1クォーターを終了した。

まだ10分しか経過してないので体力の消耗が激しい。


「あいつらのプレッシャー凄いな」」

「あぁデカいわりに動きも早いし、シュートも正確だ」


疲れの見えた俺と福島は一旦裕也と佐藤先輩と交代し戦況を見守った。

何とか1ケタ台の点差で耐えてはいるが、中々得点のチャンスが無いまま、第3クォーターを終えた。


「田辺、福島次行くぞ。残り10分死ぬ気で点とってこい!」

「「はい!!」」


佐藤先輩と畑先輩と変わる形で再びコートに戻った俺と福島は部長たちに守りを任せ疲れの見えてきた奈良高等学園のゴールを攻めた。


「ケンちゃん頑張って!!」

「太一~頑張れ~!!」


楓と村田さんの応援が聞こえる中、死ぬ気で走り何度もシュートを放った。

そして、残り1分で3点差。

ゴール下に切り込んだ福島に相手のディフェンスが接触、福島は倒れこみながらも3ポイントラインの外に走りこむ裕也にパスを送った。


「清水!!」

「おぅ!」

パスを受けた清水は冷静にシュートを放ち3点をゲットした。同点だ!

ただ、勢いよく倒れこんだ福島は、起き上がれずにそのまま担架でコート外に運び出される形となった。

試合は、交代で北島先輩がコートに入り福島へのファールで得たフリースローを決めそれが決勝点に。

ギリギリのところで勝利を掴み取った。


--------------

試合を終え、皆で救護室に向かうと泣いている村田さんがいた。


「ふ 福島は大丈夫なのか!」

「か 軽い脳震盪だろうって・・・・」

「そ そうか。よかった。村田さんが泣いてるから まさかと思ったよ・・・」

「良くないよ!だって、倒れたまま全然目を覚まさなかったんだよ!」


意識は戻ったようだけど、確かに恋人が倒れて意識が戻らなかったら心配だよな。


「ごめんな。確かに心配だったよな」

「うん。。。。。」

村田さんは涙目のまま福島の寝ているベッドの近くに戻り手を握っていた。


「大丈夫だとは思うが、勢いよく倒れたみたいだし一応病院で検査は受けた方が良いな」


と救護担当のお医者さん。


心配だな・・・・・

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