第69話 二人旅行①
梅雨明け宣言も出た週末。
朝早くに川野辺駅前で待ち合わせをした俺と楓は、電車を乗り継ぎ横浜駅へ。
そして予約してあった"特急踊り子"に乗車し目的地である伊豆へと向かった。
「何だか、こういう特急電車って久々だけど旅行している気分になるよな」
「うん。こうやって隣同士で座ってお弁当とか食べると余計にだよね」
今俺達は朝食用に駅で買った弁当を食べながら電車に乗っている。
旧型の車両なので快適な座り心地というわけではないけど、これはこれで雰囲気があっていい感じがする。
ちなみに俺は崎○軒のシューマイ弁当を食べている。これ好きなんだよな。
目的地までは約1時間半。
今日訪れる予定の観光スポットの話や、全国大会の話など話をしていると時間はアッという間に過ぎていく。
そして、小田原を過ぎると近くに海が見えてくる。
酒匂川橋梁、白糸川橋梁と大きく長い鉄橋を過ぎ熱海に到着。
ここから先は伊豆急行線に入る。目的地はもうすぐだ。
「わぁ 海が近いね」
「あぁ天気も良いし水平線が綺麗に見えるな」
「うん。本当海の近くを走るんだね」
電車の窓から見える海。漁船や観光船、遠くに大島が見える伊豆の海が近い。
そして、海岸線を離れしばらく走った後で到着した伊豆高原駅。
今日の目的地で、今日はこの近くのホテルを予約している。
「じゃあここからはバス移動だな」
「ねぇカピバラさんは?」
「あぁこの後、大室山ってところの後で行くよ」
「うん了解。この間ホームページで見たカピバラの赤ちゃん凄く可愛かったんだよね♪」
すっかりカピバラが気に入ったみたいだなw
駅前からバスに乗り、伊豆のシンボル的な山でもある大室山へ。
麓からリフトで登れるお手軽な山だけど、周りに高い山が無いから360度のパノラマ風景が楽しめる。
「あ、富士山!」
「あっちは箱根かな」
天気も良いし、旧火口の周りを歩く遊歩道の散歩も心地よい。
そして山々や海を臨む風景は凄く綺麗だった。
「何だか楽しいね♪」
「あぁそうだな」
そんなことを言いながら俺の腕に時折抱き着きながら歩く楓は、いつもにも増して愛しく思えた。
大室山の後は、リフト乗り場のすぐ近くにあるシャボテン公園へ。
ここは名前の通りシャボテンメインの植物園でもあるけど、カピバラで有名な動物園でもある。まぁ俺もネットで見た知識で、来たのは初めてだけど・・・
「ねぇ早く行こ!!」
「おぅ!」
テンション高めの楓の後を追う様に入り口のゲートをくぐると早速リスザルがお出迎えしてくれた。
「わぁ可愛い~ リスザルは放し飼いなんだね」
「おっあっちにはクジャクもいるぞ」
「えっ クジャク!結構大きいんだね」
楓がリスザルやクジャクを見ている間に園内の案内図でカピバラを探す。
ふれあい広場は・・・
「楓!カピバラはあっちだな」
「うん!」
途中のタッチde ZOOでモルモットたちのモフモフを楽しみ、いよいよ楽しみにしていたカピバラ広場へ。
ゲートをくぐると、早速カピバラさんたちのお出迎え。
人を怖がらないのか、無邪気に足元に寄ってくる。
楓お目当ての赤ちゃんカピバラも親カピバラ?の後をついて近寄ってきた。
「わぁ可愛い!!ケンちゃん写真!写真!」
「そうだな!じゃ撮るぞ!」
楓と赤ちゃんカピバラの2ショット。それから俺も交えた3ショットを撮影。
何だか今日だけで結構な枚数の写真を撮った気がするな。
と
[キュルルーー]
「えっカピバラの鳴き声?こんな鳴き声なの?」
「何というかかわいいな」
見た目からは想像つかない鳴き声だ。
と俺が手に持っていたカピバラ用の餌が気になったのか手の方に1匹のカピバラが近づいてきたので口元に差し出してみた。
[ムシャムシャムシャ・・・・]
長い笹の葉がシュレッダーに入れた紙のごとくカピバラの口に吸い込まれていく。何だか面白いw
楓にも餌を渡し、二人して餌やり。
「何だか癒されるねぇ~」
「だなぁ~」
2人でマッタリと癒されていると飼育員さんが、
「マッサージしてあげると気持ちよさそうにして寝ちゃいますよ」
と衝撃的な情報を教えてくれて。
早速、飼育員さんの指導の下でカピバラのお尻の辺りをガシガシと揉んでみる。
「「おぉーーーー」」
思わず楓と2人して声を上げてしまったけど、静かにマッサージされていたカピバラが"コテン"と気持ちよさそうに寝転んだ。
「何コレ可愛い!!」
何だかカピバラに嵌ってしまいそうだ・・・・
植物園やチンパンジーなど他の動物を見た後、当然の如くお土産コーナーでカピバラのぬいぐるみを購入し公園を後にした。結構長くいたな。
そして、ホテルの送迎バスが来てくれる伊豆高原駅まで路線バスで戻り、時間までカフェで一休み。美味しいコーヒーを飲みながら今日一日を振り返る。
まぁ半分以上はカピバラの話でしたw
そして、到着した送迎バスに乗りホテルへ。
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「・・・・・ここ凄く高いんじゃない?」
「うん高い。ただな、うちの親も楓んところと同じだったってことだ」
楓が驚くのも無理はない。送迎バスを降りた先に建っているホテルは、この地区でも結構高級な部類に入るホテルだ。
「どういうこと?」
「一応、うちの親にも楓と泊りの温泉旅行に行くこと伝えたんだけど、それならってここを紹介されたんだよ。親父の取引先の1つらしくて、凄く値引きしてくれた」
「へぇ ケンちゃんのお父さん凄いね。輸入雑貨の販売業だよね?」
「あぁこの辺りのホテルにも結構卸してるらしい。でな、お金は俺が払うんだけど、部屋の予約とかは親父がホテルの人と調整してくれたんだ」
「うん。ありがとうございますって感じだよね。でもそれが何でうちの親と同じなの?」
「・・・いや な 普通にダブルを予約してくれてな。それも予約名は田辺 健吾、田辺 楓とか」
「・・・・・うん。同じだね」
話してる俺も聞いてる楓も何だか照れてしまった。
「とりあえず入ろうか?」
「うん」
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シャボテン公園のカピバラさんは本気で可愛いですぞ!
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