第33話 練習試合
ゴールデンウィークの初日。
今日は隣町の川倉高校を招待してのバスケ部練習試合だ。
川倉高校はこの地区ではバスケ強豪の私立高で、校長同士が知り合いということもあり、各部活動も練習試合等や各種イベントなどの交流も盛んだ。
今日の練習試合も年数回予定されている練習試合の1つで、試合は男女で4試合行う。男女レギュラーメンバー主体の試合と1年を中心とした試合だ。
俺としては、この部活でのデビュー戦。是非とも勝ちたい!
「まずは女子からだよな。楓頑張れよ!」
「うん。前に試合したときは負けちゃったから今日は絶対勝つよ!」
前回の練習試合では男女ともに負けたそうだが、戦績はほとんど五分。
それだけにライバル意識も強い。
「いくよー!」
普段とは雰囲気の違う気合の入った恩田さんの掛け声とともに女子バスレギュラー陣がコートに入る。楓や村田さんもスタメンだ。
男子も今は女子の応援。
[ピーッ]
笛の音と共に試合が始まった。
ジャンプボールは楓だ。
審判の上げたボールを楓が横にはじく。
計算だったのかボールの方向に素早く切り込んだ恩田部長がボールをキープしてドリブルに入る。
そして、恩田部長の後をクロスするように走りこんだ村田さんにパス。
本当この人普段は、面白ウザいキャラだけどバスケセンスとスピードは凄いと思う。村田さんは周りを見てボールをキャッチせずに前方へ弾く。
ゴール下前方へ走りこんできた楓へのパスだ。
ボールをキャッチした楓は綺麗にレイアップを決め先制ゴール。
「ナイスシュー楓!」
「「小早川せんぱ~い!!」」
俺の応援と女子部員の歓声に楓が手を振ってきた。
いい感じにノってるな。
前回の試合では恩田先輩が集中マークにあいパスが通らず点も取らなかったとの事で、今日は同じポジションの村田さんを最初から投入し司令塔が2名いるフォーメーションにしたそうだ。
恩田先輩にマークが偏れば村田さんがパスを捌き、村田さんにマークが付けば恩田先輩切り込む作戦だったが、これが上手く決まり前半で10点差。
このまま試合を見ていたい気もしたけど、女子バスに続いては俺達の試合が行われるので、前半が終わったところで俺達も校庭に出てアップを開始した。
そして、そろそろ時間というところでコーチからスタメンの発表。
「スタートは小宮と佐藤、清水、田辺、福島だ。
前半は攻めのメンバーで行く。順次入れ替えるから皆が自分を見てると思って気合い入れてけ!健吾。楓も今日は結構点入れてるしお前も飛ばしてけ!」
「はい!」
とコーチ。何だか久々に燃えてきた!
体育館に戻ると丁度女子の試合が終わるところだった。
相手の猛攻があったのか得点差は大分縮まっていたけど、何とか逃げ切って勝利
出来たみたいだ。
「楓、村田さんお疲れ!」
「疲れたよ〜 今日はずっと走ってたから」
と村田さん
「綾子お疲れ様」
とそんな村田さんにタオルを渡す福島。仲の良い事で。
「ケンちゃん私もタオル欲しいな〜」
とちょっと拗ねた風の楓にはドリンクとタオルを渡す。その顔可愛いぞw
「ありがとう! この後はケンちゃん達だよね 頑張って!」
「あぁ初試合だし絶対勝つ!」
そして、コートに出たところで珍しく小宮部長が一言。
「女子も今日は調子よく勝ったし俺たちも勝つぞ!」
「「おぅ!!」」
と珍しく熱血な感じの小宮部長に触発され俺達も気合が入る。
コート脇を見ると恩田部長が小宮部長に小さく笑顔で手を振ってる。
部長ちょっと照れてるし何だか意外な一面だな。
「おい、お前らが田辺と福島か?」
と川倉の選手が突然話しかけてきた。見た目は結構カッコいいイケメン君だ。
「あぁそうだけど」
と俺と福島。
「そうかお前らが、俺達のアイドル小早川さんと村田さんの恋人か!!」
「はぁ?」
「今日の試合絶対勝つ!!」
と一人テンションを上げ、自陣のコートに戻っていった。
「何だありゃ? 知り合いか福島?」
「さぁ」
と見た目は良いけどちょっと残念な人っほい珍客はあったが、いよいよ試合開始の時間だ。
[ピーッ]
ジャンプボールは、川倉学園が取った。
が、弾かれたボールを素早く裕也がキャッチしノールックで前に走り込む福島へパス。そのままゴールを狙うが、さっきのイケメン君が壁の様に立ちふさがりシュートコースをブロック。
それを見るや一旦バックパスで後ろに来ていた小宮部長にパス。
そして、パスを受けた小宮部長は、すかさず3ポイントシュート。先制点だ。
「雄一カッコいい!!」
とテンション高めの恩田部長。この人は相変わらずストレートだな。
部長メチャ照れてるよw
その後は、両校点の取り合い。
福島と小宮部長がボールを繋ぎ、佐藤先輩と裕也、俺の3人で攻めまくった。
4点差で勝ち越した状態で迎えた後半は、佐藤先輩と長谷部、裕也と畑先輩が交代し俺と長谷部で攻め、部長と畑さんがディフェンスに注力した。
そして残り数秒となったところで、福島からのループパスを空中で俺が拾いダンクを決めた。そして同時に試合終了の笛。
パスも見事だったけど、ダンクはやっぱり目立つね。
「ケンちゃんカッコいい!!」
と楓。そして、
「「田辺先輩素敵ーーー」」
「太一ナイスパス!!」
と鮎川さんを中心とした1年女子、それに村田さんから福島への声援。
とりあえず俺としてはデビュー戦の勝利に満足です。
その後、昼休憩をはさんで行われた、1年同士の試合では、栗田や鮎川さんの活躍で僅差ながらに勝利。今回の川倉との練習試合は全勝にて終了した。
帰り際、川倉のイケメン君が俺と福島を睨んでたけど、後から裕也に聞いたところ楓と村田さんは高校バスケの専門誌の女子バス特集でインタビューを受けて以来近隣高校のアイドル的存在になってるとのこと。
まぁ普通にあの二人可愛いしね。
そのため、恋人である俺や福島を敵視してたらしいが、何とまぁ迷惑な話で・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます