残像
「ふっ、残像だ………えっ?いや残像なんですけど。もしかして伝わってない?言語体系が違うタイプですか?アイアムア Zanzou!ドゥーユーアンダースタン?だから、その剣で切ろうとするの止めてくれません?いやいや、こちらはね、残像なんで切られても問題ないんですよ。でも残像と分かってるのに切るのって、ちょっと恥ずかしくないですか?先生と分かってても、お母さんって呼んじゃうぐらいの恥ずかしさはありますよ。あの、そんな困惑した顔を向けられてもこっちが困るんですよね。初対面の人によく『思ってたよりも、喋りますね』なんて言われるけども、あれって好印象なのかな。暗に、黙れって意味じゃないですよね?ええと、そうじゃなくて、なんで残像が喋ってるかって?そりゃあ残像だって本体の晴れ舞台ぐらいは、一肌脱ぎたいじゃないですか!本体の奴はさ、風の四天王を名乗るくらいには、クールなイメージを押し出しているんですが、その実は異性と目も合わせられないぐらいの超絶ウブ野郎なんですよ~。四天王で集まると、炎の魔神とかに『下の方も早そう』ってからかわれてるのに、ハハハと愛想笑いしながら、裏でちょっと落ち込んじゃうぐらい純情なわけ。でもそしたらさ、炎の奴が勇者にやられたって噂じゃない。じゃあ、次は俺の番じゃん!どんなヤベー奴が来るんだろうと、ビクビク震えながら待ってたの。そしたら勇者の正体はなんと、可愛い女の子!そりゃあ出ますよね。残像の1つや2つ。でも良かったー、女の子と会うのに、変な服装じゃなくて。この鎧のビラビラしてる部分とか超格好良くない?俺ってさ、私服がダサいなんて言われるから、制服見てこの職場に決めたんだけど、あの時の自分にマジ感謝。えっ?『残像なのに、全然消えませんね?』そりゃあ、この世界でも屈指の達人同士が戦ってるんだから、この間わずか0.2秒も経ってないし、なにより残像である俺が、小洒落たトークで気を引いてるうちに、純情野郎が君のハートを奪っちゃおうって算段なわけよ。」
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