47.ある日、森の中、フクロウさんに出会いました

 おはようございます、響です。

 昨日は念願のフォレストキャットをテイムできて、非常に満足だったよ。

 それから、昨日ゲームをログアウトして携帯端末を確認したら、沙樹ちゃんからメッセージが届いてた。

 何でも、今日からinfini fantaisieを始められるんだって。

 午前中にソフトを買いに行って色々準備するらしいから、実際にゲームを始められるのは午後からになりそうらしいよ。

 沙樹ちゃんはVRゲームを色々と遊んでいるらしいので心配はいらないと思うけど、ここは先輩として合流したら色々と教えてあげるんだよ。


 ……そうそう、妹が始めると言っていた新作VRゲームの開始日も今日だったらしいね。

 妹には再度誘われたけど、ボクにはボクの野望があるので丁重にお断りさせていただきました。


 さて、まずは朝ご飯を食べて少し勉強をします。

 勉強が終わったら、早速ゲームにログインだよ。


 ログイン先はいつも通り瑠璃色の風の休憩室だけど、ガイルさんかユーリさんはいるかな?

 休憩室を見渡してみると、ちょうどガイルさんがやってきたところだよ。


「お、リーンか。今日は午前中からログインか?」

「おはよう、ガイルさん。1つお願いがあるんだけど、いいかな?」

「内容にもよるが、何かあったのか?」

「ボクの友達がこのゲームを始めることになったんだよ。それで、このギルドに誘いたいんだけど大丈夫?」

「ふむ、お前の友達か。つまり、リアフレって事だな。とりあえず、お前と同じように体験入団という形なら構わないぞ」

「ありがとう、ガイルさん。ところでリアフレって何?」

「リアルフレンド、つまりは現実での友人って事だな。まあ、その辺はゲーム用語みたいなもんだから気にすんな。ところで、その友人は職業を何で始めるのか聞いてるのか?」

「うーん、ドラゴンに興味があったみたいだからテイマーかサマナーだと思うよ。詳しくはまだ聞いてないからわからないけど」

「ふむ、そうか……。それなら、シリルがいたらそっちにも装備を頼んでおくか」

「ボクと同じ若草装備じゃダメなの?」

「テイマーなら若草装備でいいだろうけど、サモナーだった場合はMPに補正が付く装備の方がいいだろうからな。まあ、シリルのことだし、初心者向けのそういった装備は用意してあるだろ」

「それじゃあ、お願いしてもらってもいいかな?」

「おう、任せとけ。それで、リーンはこれからどうするんだ?」

「ちょっとベルの森までお散歩だよ」

「……今のお前のレベルじゃ、ベルの森はそこそこきついぞ?」

「大丈夫だと思うよ。昨日、ネームドなフォレストキャットもテイムできたし、そんなに無理をするつもりもないからね」

「お前、またネームドモンスターを捕まえてきたのか。そういや、ネームドモンスターのテイム数が3体になったんじゃないか?」

「そういえばそうだね。それが何かあったの?」

「だったら、【ネームドテイマー】の称号が手に入ってるはずだが、確認してないのか?」

「称号? ステータスを確認すればいいのかな? ちょっとみてみるね」


 ステータス画面を開いて確認してみると、確かに『称号』って項目が増えてて、そこに【ネームドテイマー】っていうのがあるね。

 説明文を確認したけど、『ネームドモンスターを3体テイムした者に与えられる称号』としか書かれてなかったよ。

 何か意味があるのかな?


「確かに、【ネームドテイマー】っていう称号があったよ。これって何か意味があるの?」

「いんや、【ネームドテイマー】には効果が無いな。称号っていうのは、一定の条件を満たすと与えられるオマケみたいなものさ。称号によっては、一部のステータスが気持ち上昇するのもあるが、ほとんどは効果無しだ。確か、ネームドモンスターを5体入手したときの称号だと、LUKが3上がるはずだがな」

「……なるほど、微妙だね。それじゃあ、ボクはこれでベルの森へ行くとするよ」

「おう、気をつけてな。まあ、基礎レベルが20になるまではデスペナ無しだから、死に戻っても問題ないがな」

「そうだったんだね。でも、死なないように気をつけるよ」


 さてと、ガイルさんへの確認も終わったし、これでベルの森に気兼ねなく行けるんだよ。

 まずはパートナー達を呼び出して、パーティ編成だね。

 今日のパーティは、シズクちゃん、黒号、スズランで行くよ。

 シズクちゃんは外せないとして、黒号は盾役、スズランが攻撃役だね。

 黒号のレベルが低いのが気がかりだけど、盾役としてはシルヴァンやプリムより上だから大丈夫だと思いたい。

 ボクは攻撃はあまりしないで、回復に専念した方がいいかな。

 HPポーションはいっぱいあるから、きっと大丈夫だよね。


 さて、準備も整ったし、クエストを受けたらベルの森へ出発だよ。

 ベルの森の最奥にある女神像までは転移でショートカットできるらしいから、それを使って一気に最奥部まで移動。

 そこからは道なりに逆行していって、レベル上げとクエストの攻略をしつつ、ナイトオウルのテイムの準備だよ。

 なぜ、準備かというと、現在のゲーム内時間帯がちょうど朝方なのが理由。

 朝になったばかりみたいだから、ナイトオウルが出てくる夜時間までは、ゲーム内時間で6時間くらい待たなくちゃいけない。

 流石に、午前中だとその時間は待てないからね。

 運良く、テイマーギルドで『フォレストキャットの納品』クエストが発行されてたから、それのクリアを目指して【従魔術】スキルのレベル上げも目指せばOKかな。


 という訳で、早速ベルの森深層部から出発ですよ。

【気配察知】スキルを意図的に使うようにして、モンスターを探しながら進みます。

 まだまだスキルレベルが低いから精度は低いけど、それでもモンスターの位置がわかるようになるから便利なんだよ。

 バンバン使うとMP消費が馬鹿にならないから注意だけどね。


 モンスターを見つけたら、上手く隙を見つけて戦闘開始だよ。


 フォレストキャットの場合、1匹でしか行動してないから、スズランが攻撃をしつつ注意を引きつけて、シズクちゃんのライトニングアローで撃ち抜く戦法で勝てるね。

【魔法耐性】や【対魔法障壁】のスキルはネームド種専用みたいだから、何の苦もなく魔法攻撃が通用するよ。


 逆に注意しなくちゃいけないのは、ゴブリンとかフォレストウルフみたいな集団で現れるモンスターかな。

 1匹1匹はさほど強くないけど、スズランとシズクちゃんで倒せる数には限界があるし、黒号はまだレベルが低い。

 だから、黒号の回復を切らさないようにして戦わなくちゃいけないんだよね。

 おかげで、光魔法のスキルレベルはどんどん上がっていくけどね。


 深層部で注意を払いつつモンスターを倒す事、1時間ちょっと。

 黒号のレベルも13まで上昇。

 ボクとシズクちゃんはレベル15に、スズランのレベルも16になったよ。


 黒号はレベル10になったときに【挑発】スキルを取得。

 これで、より敵を引きつけやすくなったね。


 シズクちゃんはレベル15になったことで【雷魔法】のスキルカスタマイズと、新たなスキルの選択ができるようになったよ。

 この場で決めるのは危険かもしれないし、どっちも今後のシズクちゃんの運命を左右するかもだから、帰ってからゆっくり決めることにしたよ。


 テイマーギルドのクエスト用にフォレストキャットのテイムも3匹きちんと成功して、【使役】と【従魔術】のスキルレベルが15に到達。

 テイム枠が2つ増えたからその分もフォレストキャットをテイムしたよ。


 そうして最深部を戦いつつ、採取ポイントなどで魔力草や木材などをゲットしてたんだけど、あるタイミングからぱったりとモンスターに遭遇しなくなった。

 不思議に思ってたんだけど、これって昨日スズカが言ってたネームドモンスターの縄張りに入ったって事かな?


 周囲にネームドモンスターがいるかもしれないから細心の注意を払いつつ、周辺の探索を進める。

 すると、茂みの影にまっ白いフクロウがいるのを発見したよ。

 ……はて、ナイトオウルの色は焦げ茶色だった気がするけど、このフクロウは何かな?

 とりあえず、シズクちゃんも黒号もスズランも警戒態勢をとっていないから、アクティブモンスターじゃなさそう。

 ナイトオウルはアクティブモンスターだって話しだし、別のモンスターなのかな?


 試しに近づいてみたけど、特に逃げ出す様子もなし。

 手を伸ばすと、それを嫌がるように避けてるから触れはしないみたいだね。

 そして、フクロウの足下には木の実の欠片みたいなのが落ちてたよ。


「……ひょっとして、キミ、お腹が空いてるのかな?」


 フクロウに話しかけてみたけど、反応はなし。

 テイム済みじゃないと【意思疎通Ⅰ】のスキルも効果を発揮しないみたいだね。


「うーん、フクロウさん、どれを食べてみる?」


 手持ちの食料系アイテムをずらっと並べてみるけど、反応はなし。

 さて、どうしたものかな……

 とりあえず、試しに何か食べないか与えてみようかな。

 フクロウって確か肉食だよね。

 まずは焼き肉から与えてみよう。


「ほーら、焼き肉だよー。……って、顔を逸らされたね」


 どうやら焼き肉はお気に召さなかったみたい。

 それじゃあ、次は……足下に木の実が落ちてるくらいだし、果物とかどうかな。

 まずはリンゴから与えてみよう。


「フクロウさん、リンゴだよー。……今度は食べてくれるみたいだね」


 フクロウさんは手渡したリンゴを勢いよく食べてくれたよ。

 よっぽどお腹が空いてたのかな?


 次は……梨にしてみよう。

 梨も勢いよく食べてくれたね。

 でも、フクロウさんはまだ食べ足りないみたい。

 お次はミカンとかどうかな?

 ミカンの皮を剥いて差し出してみたけど、これはダメみたい。

 また顔を背けられたよ。


 そうなると、他に果物は……ワイルドストロベリーとかはどうかな。

 シズクちゃんの大好物だけど、数には余裕があるし、少しぐらいなら与えても平気だよね。


「フクロウさん、これはどうかな? ……よし、これは食べてくれるみたいだね」


 ワイルドストロベリーを食べ終わったフクロウさんは、満足したのか宙に飛び上がる。

 そして、空をぐるっと一回りしたら、ボクの肩に留まったんだよ。

 ……はて、どういう意味だろう?


〈ネームドナイトオウルのテイム条件を満たしました。テイムスキルを使用してください〉


 ……おう、この子もナイトオウルだったんだね、しかもネームド種の。

 そしてテイム条件は餌付けだったのかぁ。

 運がよかったと思うしかないよね。

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