35.家の大改造開始です!

 ハイネさんに急かされながら、新しい家、ログハウスの中に入ってみる。

 そこは、前の家とはまったく違う間取りの家だったんだよ!


 おしゃれな玄関を抜けるとそこにはリビングとダイニングキッチンになっていて、広さも前の家の数倍はあるね。

 リビングもダイニングキッチンもまだ家具が置かれてないけど、これは色々と置けそうで夢が広がるよ!


 次にリビングを抜けて奥につながる廊下を進むと、8畳ほどの部屋が2つにお風呂場があった。

 部屋は両方とも大きな窓がついていて、日差しが差し込んでいて居住性も良さそう。

 お風呂場は、バスタブとシャワーがついてる普通のお風呂だったね。

 でも、足を伸ばしてゆっくりつかれそうだから実際に使ってみると気持ちいいかも。

 ……ゲームの中だし、お風呂には入れるかわからないけど。


 リビングに戻って、階段を上ると2階に出たよ。

 2階は大きな部屋が1つと、屋上になってるみたいだね。

 どっちもとても広くて1人で使う分には持て余しそうなんだよ。


 家の間取りを確認したらリビングに戻ってきた。

 そこではガイルさんとハイネさんが2人で話し合いをしてたよ。


「おう、戻ったか。この家はどうだった?」

「とっても広くて使いやすそうだったよ! でも、この家、本当にもらってもいいの?」

「何度も言うが、気にすんな。この家をマーケットで売ろうとしても20万Gがいいところだ。その程度の金じゃ俺達には大差ないし、有効活用してくれるヤツがいるならそっちに渡した方がいいってもんだ」

「そっか。ありがとう、ガイルさん」

「おうよ。それで、リーン。今、ハイネの爺さんと話をしてたんだが、家具の配置はどうする?」

「ええと、そもそも家具ってどんなものがあるのかな?」

「そうじゃの、まずはリビング用にソファーを置くとして、それ用のテーブル。後は、サイドチェストや壁時計なんかの雑貨だのカーペットだのと言った家具類か」

「……それを聞いただけで安いものじゃなさそうなんだよ」

「値段のことは気にするな。ほとんどはわしが自分で入手してきた素材で作っておる。……ああ、ソファーなどの家具類の一部は裁縫の分野になるのでシリルに頼んでいるがの」

「そうなんだ。それで、ボクはどうすればいいのかな?」

「家具の種類や色、配置などに意見があれば聞こう。意見が特になければ、とりあえずわしとガイルで一通り家具を設置するので、それを見て意見をしてくれ」


 うーん、家具についての意見かぁ。

 正直、どんな家具があるかもよくわかってないのですよ。

 なにせ、まだゲームを始めて3日目の超初心者ですからね!


 なんて現実逃避をしても始まらないし、ここは大人しく諸先輩方にお任せしてみましょう。


「家具はログハウスに似合うような落ち着いた色のものがいいな。それからパートナー達が家の中でも困らないように、色々配置を工夫してほしいかな。後の事はよくわからないからお任せでもいいです?」

「ふむ、了解じゃ。それでは、わしらで色々やって見よう。その間、お主はどうする? わしらの作業を見ているか?」

「えっと、どれくらいの時間がかかりそうなのかな?」

「こり出せばハウジングなんぞ何時間でも必要じゃわい。そうだの、とりあえず1時間を目処にリビングとダイニングは仕上げよう」

「わかったよ。それじゃあ、ボクは先にパートナー達のご飯をあげてきていい?」

「ああ、構わん。ついでじゃから、そのままパートナーと遊んでいてもよいぞ。素人が手を出せるところはほとんどないからの」

「うん、わかったんだよ。それじゃあ、本当にお任せでいい?」

「それで構わんぞ。自由にハウジングができるなぞ滅多にないからのう」

「リーン、ハイネの爺さんはこう言う性格だから気にしなくていいぞ。……まあ、無駄に豪華になって驚くかもしれないが」

「む。わしとて初心者に高級な家具を押し付けるような真似はせんよ。使う木材は、ベルの森でも採れるような素材を使ったものをメインにする予定じゃし、ソファー類もそこまで高級品は使わんようにするわい」

「そうか、まあいいさ。リーンは庭でパートナー達のお世話をしてこい。こっちの作業が終わったら教えてやるよ」

「了解だよ。よろしくお願いします」

「うむ、任された」

「ああ、こっちは任せてパートナー達のところに行ってこい。……ああ、そうそう。この家はリビングの窓からウッドデッキに出られるようになってるから、気が向いたらそっちを使ってくれ」

「わかったよ。それじゃあ、早速ウッドデッキを試してみるよ」

「おう、それじゃな」


 家の中はガイルさんとハイネさんにお任せして、ボクは庭でパートナー達のお世話だよ。

 ウッドデッキから庭に出てパートナー達を呼ぶと皆が集まってきた。

 うんうん、皆、今日も可愛いね。


 とりあえずは皆にご飯を与えます。

 メニューは昨日と基本的に一緒だね。

 黒号とシルヴァン、それから肉食系ウサギのプリムには焼いたお肉を。

 草食ウサギな白玉には買ってきておいた牧草。

 最後にシズクちゃんにはこっちも新しく買ってきた果物を食べさせてあげたよ。

 うん、皆それぞれ満足そうで何よりなんだよ。


 食事が終わったらブラッシングのお時間です。

 シャンプーはリアル1週間に1回でも多い方らしいけど、ブラッシングは毎日やってもいいらしいからね。

 という訳で、パートナー達を順番にブラッシングしてあげますよ。

 プリムだけはイマイチブラッシングが好きじゃないみたいだけど、本気で嫌がっている訳じゃなさそうなのできちんとお手入れしてあげる。

 うん、皆ブラッシングしたおかげでモフモフ度が上昇した気がするね!


 ブラッシングが終わったらお待ちかねのモフモフタイム。

 ……なんだけどプリムは早々に逃げ出して、一匹で戦闘訓練みたいな事を始めたよ。

 本当にプリムは戦闘系ウサギさんだよね。

 残りの皆は逃げ出すようなことはせず、存分にモフらせてくれました。

 特にシズクちゃんに黒号、白玉はボクに甘えてきてとっても可愛かったのです!

 シルヴァンは、モフらせてくれるけど甘えては来なかったかな。


 うーん、モフるだけじゃなくて一緒に遊べるようなおもちゃもほしいね。

 今は犬系のパートナーが多いから、フライングディスクとかボールみたいなのがいいかな。

 そういったものが売ってないかもユーリさんに聞けばわかるかな?


「お、リーン、ここにいたか。ウッドデッキはどうだった?」


 ガイルさんが家の中から出てきたよ。

 ひょっとして、もう1時間経っていたのかな?

 楽しい時間はあっという間に過ぎていくよね。


「ガイルさん。なかなか気持ちのいい場所だね。気に入ったよ」

「そうか、それはよかった。とりあえず、リビングとダイニングの家具を並べ終わったから確認してみてくれ」

「うん、わかったよ」


 ガイルさんに案内されて家の中へと戻る。

 するとそこは、さっきまでの家具が何もなかった殺風景な部屋とは見違えるようなステキな部屋になっていたんだよ!


「とりあえずリビングはこんな感じだな。ソファーはとりあえず3人掛けが2つに1人用が2つ並べてみた。それにあわせてウッドテーブルを配置。壁際にはサイドチェストのような収納とかサイドボードを置いて、適当に観葉植物とかも並べてみたぜ。あと、大物としては暖炉と置き時計も置いてみた。爺さんが作りすぎて持て余してたらしくてな。暖炉は完全に見た目だけのものだから実用性はないが、どうだこの部屋は?」

「……劇的に変わりすぎててビックリしたよ。こんなに色々ともらっていいの?」

「細かいことは気にすんな。それで、何か不満とかはあるか?」

「不満なんてないよ。というか、すごく立派でビックリしてるんだよ」

「ならいい。次はダイニングだな。ついてきてくれ」


 リビングがあまりにも劇的に変わりすぎてて忘れてたけど、ダイニングも改装してくれてたんだよね。

 ガイルさんと一緒にダイニングに移動すると、そこもまたステキな部屋に改装されてたよ!


「おう、来たか。ダイニングじゃが、まずキッチンを対面式キッチンに置き換えさせてもらった。それからダイニングテーブルや椅子は木製の家具で統一しておる。他にも色々といじらせてもらったが、どうじゃ?」

「うん、文句なんて言えない出来栄えだよ」

「そうかそうか。それならばよかった。それではリビングとダイニングは終了じゃの」

「他にもまだあるの?」

「小部屋2つと2階の大部屋が残っておるじゃろう。そっちも手を加えるぞ」

「……それって本当にいいのかな?」

「爺さんの趣味だし気にすんな。ほら、早く行くぞ」


 二人に急かされて小部屋に移動。

 小部屋の用途を聞いたけど、まず小部屋は1つ潰して物置みたいな収納部屋にするのがいいんだって。

 ハウジングエリアの収納スペース的に。


「リビングやダイニングにも収納家具は設置したが、最大収納数の300枠まではまだまだ足りんからのう。基本的にほとんどのプレイヤーは、部屋を1つ潰してタンスやクローゼットのような収納部屋を作るものなのじゃよ」

「そうなんだね。……そう言えば、家を交換する前に置いておいた家具ってどうなったのかな? 小さな家と一緒にしまわれちゃった?」

「前の家に設置されてた家具なら、家の収納に収まってるはずだぞ。確認してみてくれ」


 ガイルさんに言われて家の収納スペースを確認したら、昨日シリルさんからもらった家具が入っていたよ。

 なくなってないようでよかった。


「それで、この部屋は収納部屋にしてしまってもよいか?」

「うん、大丈夫だよ」

「わかった、それでは手短にぱぱっとやってしまおう」


 ハイネさんは部屋の奥側から大きめのタンスを次々と並べ始めたよ。

 そして部屋をぐるっと一周したらタンスだらけの部屋が完成したね。


「さて、この数でなら最大収納数に届いたはずじゃ。確認してみてくれ」


 ハイネさんに言われて家の収納数を確認したら300になってたよ。

 こんな無造作に並べただけでも個数が把握できるなんてすごいよね。


「さて、次は隣の部屋じゃのう。どういった部屋にする? ゲストルームにするか?」

「うーん、特にこれといって使い道は思いつかないね」

「リーンは、確か生産スキルも持ってたよな。だったら作業部屋にしたらどうだ?」

「作業部屋か。わかった。それで行くぞ」


 2人の間でトントン拍子に内装が決まっていくよ。

 そして、2つ目の部屋は作業台や椅子が並べられた部屋になったよ。


「最後は2階の大部屋じゃな。そこは寝室兼プライベートルームでよいか?」

「うん、それでいいよ」


 もう、ハイネのお爺ちゃんの好きなようにお願いした方がいいよね。


 という訳で2階に移動して大部屋の改装を始めたんだけど、こっちは割とあっさりとした感じになったよ。

 ダブルベッドを設置して、前にシリルさんからもらった机と椅子を配置、その隣りにサイドチェストを置いてクローゼットも配置。

 あとは好きように飾るようにって色々と小物をもらったよ。


「これで完成?」

「後は屋上デッキと1階のウッドデッキにデッキチェアと机を設置して完了かのう」

「そこまでするんだね……」

「せっかくじゃし、こだわれるところはこだわりたいからのう」


 結局、屋上デッキとウッドデッキにデッキチェアが4つずつと木製の机が置かれて改装は終了となったよ。

 ……今日の分はね。


「さて、後は庭の改装じゃが、そっちは素材が足りんのう。スマンが明日に延期で構わんか?」

「改装してもらえるだけで十分だよ。何日でも待つよ」

「そうか。では、また明日じゃな。わしはこれで失礼するぞ。もし、不便なところや改善したいところが見つかったら呼んでくれ」

「ありがとうございました。庭もよろしくお願いしますね」


 家の改装が終わったハイネさんは満足そうに帰っていったよ。

 残されたのはボクとガイルさんなんだけど……


「ねえ、ガイルさん。今日みたいな改装を普通に頼んだらいくらくらいかかるのかな?」

「あー、使った家具類は安物の素材でできてるとは言え数が数だからな。デザイン料もとるなら数十万Gはかかるんじゃね?」

「……そんな事してもらってもいいのかな?」

「ハイネ爺さんはハウジングがしたくてゲームをやってるもんだからな。むしろ、好き放題にハウジングができて大満足なんじゃないか?」

「……今度ハイネさんにもお礼を考えなくちゃだね」

「あまり気にしなくていいと思うがな。どうしてもお礼がしたいって言うなら、森で木でも切ってくれば喜ぶんじゃないか? 家具の材料になるんだし」

「わかったよ。それで森の木を切ってくるにはどうすればいいのかな?」

「伐採用に斧が必要だから、明日にでも採掘用のツルハシと一緒にプレゼントするよ。……ああ、どっちも街で買ったところで200Gもしないアイテムだから金は気にすんな。あとは、この辺で木材を切り出すとなると『ベルの森』に行くのが一番だが、まだレベルが足りてないよな」

「ベルの森には早く行きたいけど、やっぱりレベル不足だよね」

「だな。せめて12くらいまでは上げておけ。それじゃあ、今日は俺も帰るわ。またな」

「ガイルさんもステキな家をありがとう」

「まあ、気にすんな。あまり夜遅くならないうちにログアウトしろよ」


 帰っていくガイルさんを見送って、ボクはウッドデッキで一休み。

 ああ、ゲームVRの中なのにぽかぽか陽気が気持ちいいんだよ。

 黒号は足下で丸くなってるし、白玉とシズクちゃんはボクに抱かれてる。

 シルヴァンとプリムは……戦闘訓練かな?


 そんな様子を眺めてたらウトウトし始めてしまって、この日はそのまま寝落ちしちゃった。

 このゲームではゲーム内の安全地帯で眠って長時間起きないと自動ログアウトするようになってるらしいよ。

 後日そのことを聞いたけど、今度からは寝落ちしないように気をつけないとね。

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