15.モフモフ達のお世話をしましょう!

「ところで、ユーリさんはどこにいるのでしょうか」


 ユーリさんに用事があったのに、ユーリさんはいないです。


「ユーリに用事? さっき中庭に行って従魔達にご飯をあげるって言ってたから、まだそっちにいるかも」

「そうなんですね! では早速行ってみます!」


 従魔にご飯をあげるという事は、モフモフもいる可能性が高いじゃないですか!

 という訳で、ボクは全速力でダッシュして中庭へと到着します。

 そこには全長5メートル以上はありそうな巨大な蛇が、どっかりととぐろを巻いて居座っていました。

 なんで5メートル以上ありそうなのかというと、とぐろを巻いているにもかかわらず、ボクの背丈よりも上のところに頭部がきているからですよ。

 ただ、この蛇が危険なモンスターじゃない事はわかります。

 だって、ユーリさんが一生懸命お世話をしているところですから。


「あ、リーンちゃん。頼んでいたクエストは終わった?」

「うん、無事に終わったよ。ところでその子もユーリさんの従魔?」

「そうだよ。クイーンブリザードスネークのクリスタルって言うの。……リーンちゃんって爬虫類系は苦手なんだっけ?」

「そんな事は無いですよ。ただ、ボクの場合はモフモフが命と言うだけですので、爬虫類のすべすべ感も理解できます。虫系はノーサンキューですけど」

「虫系は私も苦手かな。ところでリーンちゃんは何かあった?」

「いえ、ユーリさんが従魔のお世話をしていると聞いたので、モフモフに会えるかもと思い来てみたんです。それから雑用クエストについても少し聞きたいことがあったので」

「それじゃあ、従魔達のお世話をしながらでも構わないかな?」

「はい。ボクとしても大歓迎です」

「了解。それじゃあ、またねクリスタル。リターン、クリスタル。コール、アメジスト」


 巨大蛇のクリスタルと入れ替わりに出てきたのは、金色のたてがみを持った美しいライオンだった。

 この子の大きさは、動物園やテレビで見るライオンよりも少し大きめくらいで見た目もそこまで変わってはいない。

 でも、その雰囲気というか、王者の風格みたいなのはひしひしと感じ取れるね。


「この子はキングサンダーライオンのアメジストね。先にご飯をあげちゃうから少し待っててね」


 ユーリさんはインベントリの中からステーキ肉をとりだしてアメジストに与え始めた。

 アメジストも美味しそうにステーキ肉を頬張っている。

 ライオンの食事シーンというのも見応えがありますね!


「さて、お待たせ。私に聞きたいことって何かしら」

「アイテム配達クエスト以外にも雑用クエストを受けてみたんですよ。そうしたらスキルレベルだけじゃなくて、ステータスの方も上がって。これって何か理由があるんですか?」

「よく気がつきましたね。街中で受けられる雑用クエストの中には、クリアボーナスとしてステータスが上がるクエストも混じっているのよ。どのクエストを何回受ければどのステータスが上がるかは攻略サイトを参考にするといいわよ」

「攻略サイトですか……。ボクはあまりちょっと気が進まないですね」

「そうなの? 最近のプレイヤーだと、攻略サイトで下調べをしてからプレイするのはよくある話だと思うけど」

「鞭スキルの件で古い情報しか載っていないサイトって言うのにも遭遇しましたからね。あとは、プレイしたときの新鮮さを失いたくはないのですよ」

「なるほど。そう言う考え方も嫌いじゃないかな」

「……でも、そのクリアボーナスが載っているサイトというのは気になります。サイトの情報を教えてもらっても構わないですか?」

「ええ、いいわよ。……そう言えば、リーンちゃんとのフレンド登録ってまだしてなかったわよね。この機会だし、フレンド登録もしていいかしら?」


 おお、ユーリさんからフレンド登録のお誘いが来るとは!!


「はい! よろしくお願いします!」

「それじゃあ、申請を送るわね。……はい、登録完了っと。それじゃあ、さっき話していた攻略サイトのURLを送るわね。それから、テイマー系のトッププレイヤーが使役可能なモンスターの情報をまとめてるサイトも紹介するわ」

「テイマー系のモンスター情報ですか? どんな内容でしょう」

「見た目とか生息地域、進化先などをまとめてるサイトよ。初心者テイマー向けの心得とか覚えておくと便利なスキルとかの紹介もしてるから一度目を通すといいわね」

「わかりました、それでなんですが、アメジストをモフモフしても大丈夫ですか?」

「やっぱりそっちに話が向かうのね。アメジスト、少し触らせてあげてもいい。……わかったわ。少しだけなら許可が出たからどうぞ」

「わかりました。ところで、その従魔とお話しできるようなのってやっぱりスキルなんですか?」

「使役スキルがある程度のレベルになったら【意思疎通】ってスキルを覚えるわ。それがあれば簡単な受け答えはできるようになるの」

「なるほどです。それでは、アメジスト。少しモフモフさせてもらいますね」


 アメジストをモフモフさせてもらった結果、あのたてがみは意外と柔らかいことがわかりました。

 アメジストもゴロゴロと喉を鳴らしてましたし、喜んでもらえたみたいですね!


「はあ、十分に堪能させていただきました。アメジスト、ありがとうですよ」

「グルルゥ」


 アメジストも気持ちがよかったのか満足げな表情です。

 ユーリさんはと言うと、別の従魔さんを呼び出してそちらのお世話中でした。

 それにしてもユーリさんは何体の従魔を仲間にしているのでしょうね。


「ユーリさん、ユーリさんって今何体の従魔を仲間にしているのです?」

「えーと、今アクティブにしてるのは全部で30体かな。あまりアクティブにしている従魔が多すぎると、お世話が行き届かなくて愛情度が下がっちゃうからね」


 うん? アクティブに愛情度?

 ボクの知らない単語が出てきたよ。


「アクティブと愛情度ってなんですか?」

「アクティブって言うのは呼び出し可能な状態の従魔達の事かな。食事を与えたりするのはアクティブ状態の従魔だけでいいの。アクティブ状態についての説明は、テイマーギルドのランクが上がったら教えてくれるわ。愛情度はその名前の通り、モンスター達がどれだけ懐いているかの指標ね。好物を食べさせてあげたり、一緒に遊んであげたりすると上がるわ。逆に、しばらく遊んであげなかったり、食事を1日1回与えなかったりすると愛情度は下がっちゃうから注意ね」

「食事というのはゲーム内時間で1日ですか? それともリアル時間? それから長い間ログインできなかったらどうなるのでしょう?」

「食事はリアル時間の1日1回で大丈夫よ。前に与えてから24時間が基準って言う話だから、ログインしたらすぐに食事の準備をしてあげるといいわ。ログイン直後だったら、24時間経過していても、4時間ぐらいの猶予時間はあるしね。それと、ログインしていない間の従魔達はスリープ状態だから食事を与えなくても愛情度に変化はないわ。スリープ状態って言うのは、アクティブ状態の逆で呼び出すことができない従魔達の事ね」

「なるほどです。何となくですがわかりました。ボクも黒号やシルヴァン達にご飯をあげなくちゃですね」

「そうしておいた方がいいと思うわ。……ああ、そうそう。さっき教えたテイマー系のモンスター情報が載っているページには、それぞれのモンスターごとの大好物の情報も載っているから参考にしてね」

「わかりました。でも、ユーリさん、そこのサイトの情報に詳しいですね。お知り合いが作ったサイトなんですか?」

「そうね。昔から付き合いのあるテイマーが作ったサイトよ。リーンちゃんならどんなモンスターがいるか調べられるだけでも十分に満足できると思うわ。大好きなモフモフ達の情報もたくさんあるから」


 なんですと!

 それは是非にでも確認して調べなくては!


 その後は、黒号とシルヴァンを呼び出して今日の分のご飯を与えつつ、ユーリさんのパートナー達のお世話を手伝ったりしました。

 ユーリさん、モフモフ系のパートナーだけでもたくさんいるみたいで、ボクもいろんなモフモフとふれあえて満足でしたよ!


 ああ、でも、猫のパートナーは触らせてくれなかったのだけはちょっと残念だよ。

 ユーリさんによると気難しい子らしいので仕方が無いのだけど……


 これはボクも猫のパートナーを探すべきだよね!

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