第321話 最強は天敵と邂逅する④
ぞろぞろとクラメンを引きつれ、ロナウドDことアクセスが入った牢屋に着いた。何があったのか激しい言い合いをしている宮ネェとアクセルに戸惑う私。
宮ネェの怒り具合に黒たちも顔を引きつらせている。最初からこっちにいるメンバーは真面目な顔だ。聞いていいのかと悩みながら流れをクラチャで話を聞いてみる。
[[ren] えっと、状況どうなの?]
[[キヨシ] おう。怒りに任せて吐きまくりだぜ~]
[[†元親†] ミッシェル牢から出すぞ?]
[[春日丸] renに対する怨恨が強い]
[[大次郎先生] うん。ミッシェル出していいよ]
[[源次] だなー。お前何したの?]
なにしたと言われても……特に何もしてない気がする。と言うか、私一人がアクセルを追い詰めたみたいに彼は言っているけれど、裏切ったのはお前の身内だぞ?
お門違いの恨み節を聞きながら、肩で息する宮ネェをへ視線を向ける。
[[ren] 宮ネェ、落ち着こう]
[[ミツルギ] 激しいっす!!]
[[宮様] あら、renミッシェルは終わったのね?]
[[黒龍] あー、ミツルギ初めてだっけ?w]
[[ren] うん]
[[ティタ] ぼっこぼこだったぞ、ミッシェルw]
[[白聖] 可哀想で草生えそうだった]
「それで? ミッシェルに協力した理由は分かった。アカウント貰ってまで、お前は何したかったの?」
「うるせーよ! って言いたいとこだけど、俺だってどうしたらいいかわからなかったんだよ! あいつは脅してくるし、命令してくるだけで……どうして欲しかったのかすらわかんねー」
キヨシの質問に、アクセルは素直に答える。さっきまで凄い喚いてたのに、どうしてキヨシには素直なの? 宮ネェとの違いはなんなんだ?
あ、もしかして……アクセルって思考と感情が直結してるタイプか! こっちが優しく聞けば、素直に話。高圧的に聞けば、がなり散らすお子様思考ってことか。あー、尋問の人選間違えたかもしれない……。
そんなことを考えながらクラチャを見れば、最初から立ちあっていた先生が詳しいことを説明してくれた。
アクセルは、神の眼を使ったがためにアカウントが削除される憂き目にあった。けれど、彼自身そのことを酷く後悔していたらしく、どうにかして復帰したかったようだ。
病ゲーなんて言われているけれど、ハマればこのゲーム楽しいから後悔する気持ちはわかる。
話がそれた。
どうしても戻りたかったアクセルは、噂だけは聞いていた裏の掲示板を利用することにした。掲示板では、引退した人が高額でアカウントを売っているのだとか。登録済みデバイスと再登録カードのやり取りがあるため、お互いにリアルバレがある。
それを踏まえてこの掲示板ではお互いの身バレを防ぐため、アカウントを購入する際は某有名オークションを利用して、購入するらしい。
ただオークションだからこそ、アカウントが必要でない人もデバイス目的で購入希望をだすそうだ。そのせいか、即決価格=購入金額はかなり高く設定されていて、アクセルもかなりの高額でアカウントを買ったらしい。
運営に見つかれば結局そのアカウントすらBAN対象なのに、BANされたらそのお金も帰ってこないのにどうするんだろう。ま、私が心配することじゃないから放置だな。
で、ここからが本題。アカウントを探していたアクセルは、掲示板でミッシェルと知り合い、彼にアカウント無料で譲ってもらった。けれど、実際はアカウントのことで脅され、アクセル自身ゲームを楽しむこともできない状態だったようだ。
話を聞き終わり、大和が「うわぁ~悲惨」と同情の声をあげた。他のメンバーたちは無言だったが、眼が憐みを含んでいる。
私が、もしアクセルと同じ立場なら、発狂していた。
それを踏まえて考える、これからどう動きべきかを……。
禁忌に手を出したのはアクセル自身だ。結果、運営によってアカウントが削除された。自業自得でしかない。
「それで、生まれ変わってきたのはわかったけど、アクセル土下座して謝らない限りうちは殺すよ?」
「チッ」
せっかく土下座で許してあげようとしたのに、舌打ち! 本当にこいつは可愛げがない。
アクセルは私の姿を認めた途端、顔を背け、口を開こうとしない。
どこのお子様だこのやろー! 話したくないなら話さなくていいと言いたいところだけど、うちとしてはこのままじゃすまされない。アクセルの答えによっては、再びPK戦に発展するのだから。まぁ、それはそれで楽しそうだし、いいけどね。
「それで、謝るの? 謝らないの?」
クラメンたちが見つめる中、アクセルが乱暴に頭を掻き「くそっ」と短く悪態をつくと正座した。
物凄く不服そうな顔で両手を前に着き、頭を床につけると「……悪かった。もう二度とあんたらに手をだすことはしない」と、謝罪した。
「わかった。今後グランドロール……フォルタリアを狙う事はしない。ただし、同じ事繰り返したらその時は――」
「わかってるよ。二度としねーよ」
忠告も忘れずしようとすれば、アクセルは胡坐を組みながらぶっきらぼうに返す。
その態度に意外とかわいい奴ではないかと思ったのは内緒だ。
アクセルに対する用事は済んだ。彼のアカウントについては、今後クラメンや同盟の人たちと話して決めよう。私としては、謝罪されたし訴え出ることはしないでおこうと思う。
さて、ハウスに戻ったら今回の立役者二人にお礼の品を用意しないと。経験値のスクロールか……あぁ、私の帰れまてんはいつになることやら……。
したいことができない鬱憤を抱え一人肩を落とした私は、黙々と経験値のスクロールを作るのだった。
*******あとがき*********
やっとなろうにおいつきました。ここからは、更新が一話ずつになると思います。(いつも読んでいただきありがとうございます)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます