第308話 最強は同盟の運営に尽力す⑳
フォルタリアと幼女犬の事もだが、掲示板に書き込んだプレイヤーの件も気になる。
そちらは鉄男が調べてくれているが未だ報告はない。
「はぁー、せめてどっちかだけでも解決できれば良いのに……」
「renがため息吐くなんて、よっぽどだな」
「狩りに行けない」
「あぁ……」
呆れた視線を向ける白に応えつつキヨシとチカをぼーっと見つめる。
幼女犬に困らされてるのは二人も同じか。
「あー、カジノ行けないなんて俺のルーティンワークが!」
「楽しみ奪われるのは辛いなー、あいつさえ居なきゃ自由なのに!」
「全くだー。あーあー、もういっその事ことあいつクランに入れたらどう?」
「嫌よ! ばか言わないでちょうだい! あんなの入れたらクランが崩壊するわっ」
チカの吐き捨てた言葉に宮ネェが眉間に渓谷並の溝を刻んで本気で拒否する。
宮ネェの意見に賛成の私も頷いておく。
幼女犬か。まずあいつをなんとかしないとキヨシとチカ二人のストレスは相当なものになってしまう。
ゲームなのに楽しめないのは頂けない。
なんとかできないものかな……。うーん、情報はない。奴らが繋がってるかも分からない。でも、楽しくないのは嫌だ。なら、もういっその事、本人から聞き出せば良いんじゃ?
幼女犬の性格は知らないけど扱い方なら分かる。あぁ言う手合いには耐性があるし、上手く行けばポロっと話すかもしれない。
幼女犬の相手か……誰を派遣しよう。私の希望としては大和、ティタ辺りに行って欲しい。言葉遣いが柔らかく笑顔で対応できそうだから。
けど……突然絡んでないクラメンが幼女犬に話しかけるにはハードルが高い。何気ない会話でも一度こちらがやり返してるから警戒する可能性が高い。
だったら不安しかないけどチカとキヨシに頑張ってもらうしかないか……。
「よし、決めた」
「ちょ、嫌な予感がするんですけどー!!」
「ぶるっときたーーーー」
「ren……凄く嫌な予感がするんだけど、何する気?」
「こう言うのはどうかな?」
顔を上げた私は皆へ来い来いと手招きする。その場にいた全員が頭を突き合わせたところで思いついた作戦を話した。
作戦成功の鍵を握る重要なポジションに指名されたキヨシとチカは顔色が悪かったが、二人以外は私の話を聞きニヤっと黒い笑みを浮かべる。
「ディティクションスク撒かれても良いように追尾はサブキャラで行こう。あ、renのサブキャラは無いな! バレてる可能性高いし」
「キヨシたちとPT組んどけば指示は出せるわね」
「まじでやるのかー?」
「は? 留守番ってこと?」
「俺、自信ないゾォ」
「やるしか無いだろうな」
「嫌ならやらなくても良いけど――」
「良いのか!?」
「そう。renは留守番!」
「マジ!?」
「――カジノに何ヶ月も行けなくなって良いならいいのよ〜?」
「……アリエナイ」
「「殺ル」」
呆然と呟いた私の言葉はスルーされ、気合の籠った二人の返事を聞いた私以外は早速、サブキャラへとキャラチェンジしていった。
ポツンとリビングに残された私の切なさと言ったら……。
悲しみに浸っていると鉄男がログインと同時に私を呼んだ。掲示板で何かしら痕跡を見つけたのか鉄男の鼻息が荒い。
今にも話だいそうな鉄男をクラチャで宥めながら私室へ向かう。と、そこには既に鉄男の姿が。
「それで、何か分った?」と問う私に鉄男は深く頷く。視線で先を促すように鉄男みれば、鉄男はハッキリとした口調で「間違いなく犯人が分かった。
「――てな訳で、間違いなくあいつが絡んでる!」
「……そう。やっぱり、居たんだね」
「あぁ、大丈夫か?」
「う、ん」
まさかと言う思いが心を占める。鉄男の話に耳を傾けながら、心が氷点下まで冷えていく。指先が僅かに震え、視界がぼんやりとぼやける。そう遠くない過去で経験した感覚が全身を伝う。
それが恐怖だと理解するまで随分とかかってしまった。
それから、どれぐらい時間が経ったのかはっきりと覚えていない。ただ、独りになるのが嫌で私室を鉄男と一緒にでてリビングに座っていた。
今は人の気配が心地いい。リビングで続々と姿を見せるクラメンたちの声をBGMに心を落ち着かせる。
何とか平静を取り戻し、鉄男の話を思い出そうとしたところで実行組が戻って来た。戻った全員の顔にどす黒い笑みが浮かんで見えるのは気のせいだと言うことにしたい。
「ただいま。ren、大丈夫か?」
戻るなり心配してくれた先生に大丈夫だと頷いて見せる。先生が知ってるってことは多分クラメンたちも知っていてリビングに来てくれていたのだろう。
「……そっちは?」
聞いた途端キヨシとチカがにんまり顔で親指を立て「「ミッションコンプリート」だぜー」と胸を張る。
この様子なら作戦は上手くいったのだろう。
「まず、幼女犬とフォルタリアは関連性がなかった。ただ、
「あ? 何の話だ?」
「拙者たちにも分かるように話して欲しいでござる」
「あぁ、じゃぁまずは発端から話そうか――」
「ちょっと待て、さゆも呼んだ方がいい」
白が先生を止め、さゆたんへリアルで連絡を取る間に、他のメンバーたちが雪継、ロゼ、小春ちゃんを呼び出した。
広かったはずのリビングが狭く感じるほどの密度で人が集まったところで、先生がこれまでの経緯をクラメンたちにも分かるように話しだした。
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