第307話 最強は同盟の運営に尽力す⑲
先生と小春ちゃんに皆が居る場でフォルタリアの内情を探ってもらうつもりだったが、どうやら先生のリア友はゲームにログインしていなかったようだ。そのため先生の方は後日と言う事になる。
もう一人の小春ちゃんの方は、相手が何やら情報を出すのを渋っているらしく交渉するのに数日時間が欲しいと告げられた。
結果、外部情報が無ければ話が進まないので会議は終了。
あくまでこれは私個人の考えなのだけれど、現状一番怪しいのはフォルタリアで間違いない。だが、どうにもあの上から目線の幼女犬とロナウドDとの関係が判らない。
もしも幼女犬がロナウドDと何らかの繋がりがあるとするならキヨシ達が絡まれた後、先生ないし小春ちゃんからフォルタリアの名前が出そうなものだけど……それもない。
あー、詰んでる。情報が足りなさ過ぎる。
幼女犬とフォルタリアを結び付ける要因がない。こいつらが繋がってるって情報でもあれば、即座に動けるようになる。
いや、それだと後手に回る。出来る事なら先手を取ってこちら側に余裕がある状態で構えておきたい。どうすれば……。
クラメンが嫌な思いをするのは嫌だな……元だとしても。
それならもういっその事――
「――幼女犬とフォルタリア同時に潰す?」
ゾロゾロと連れ立ってリビングのソファーに腰を下ろしながら零した私の言葉に先生と宮ネェがギョッとした顔で「え‶」と何とも言えない声を出し、空気椅子状態で固まった。
「ひょっ、本気かよ?」
雪継、ひょっはナイ、ひょっは!
「renの思考が判らないわいね」
私の思考が判らないとは千桜……老化が加速した? 前はもっと理解してくれて――無かったから正常か。
「要約すると、被害が及ぶ前に面倒だから潰せばいいって考えたんだろ?」
「白、正解!」
たまたま入口で会話を耳にしたらしい白が、両腕を組みカッコつけて立ったままツラツラと述べた。
そんな白を見事にスルーしたメイドさんによってコーヒーが運ばれてくる。ほんのり苦みの強いコーヒーを一口含み、吐息を吐き出す。
暫し、皆がコーヒーに舌鼓を打ち、沈黙が訪れる。
リアルならここで爽やかな風が~とかあるんだろうけど、ここは電脳世界。そんな物あるはずも無く。ただただ、先生と宮ネェが復活するのを待つ。
……………………
………………
「ハッ、と、とりあえずだ! 潰すのは最後の手段とし――にして? まず、雪継と千桜はこれまで同盟組んでたクランを全部思い出せ。怪しい怪しくないに限らず、全部な」
「全部か……」
「
「よろしく」
三杯目で漸くか……。最近先生と宮ネェの再起動が遅い。てか、名前の上がったクランは何を目指してあんなクラン名を付けたんだろう?
「でもなんで、アースなんだろうな?」
「どういう意味だわいね?」
「嫌だってさ、普通恨みを買うなら俺らの方だろ? なのに、同盟で最弱のアースを狙うって言うのが、なんか気持ちわりぃ」
確かに白の言う通り、一番に狙われるべきは私たちBloodthirstyFairyであるべきだ。理由は相手が潰れるまでPKする事と潰れてなお残党狩りするからだろう。
最近の事で言えばグランドロールだ。垢BANになるリスクを負ってでも奴らは私たちを殺そうとしていた。
結果、この世界から奴らの方が死滅してしまった訳だけど。
「アースの雑魚さ加減に行けると踏んだとかじゃねーの?」
「あーりえ~る」
「チカ、それ洗剤だから~」
「ぉ! 流石我が親友キヨシ、我が思いよくわかったではないかー。うーあーあはははははは」
この二人は、何しに帰ってきたの? せっかく雪継と千桜が真面目に話し合いして、事情を聞けていたところなのに邪魔して! ほら、雪継が度凹みしてる……。
「キヨシに雑魚って……キヨシに、雑魚って言われたぁ! 千桜ぅぅぅ」
「アハハ、モウ、ワラウシカナイワイネ」
千桜に泣きついた雪継だが、泣きつかれた千桜が否定できずに片言になっていた。実際その通りなので私は二人のやりとりをスルーする。
ごめんね。雪継……。強く生きろ千桜。
「で、キヨシとチカはカジノじゃなかったの?」
「あー、それがさー、聞いてくれよren〜。金貯まったから今日こそハッスルしてセブンスロット回そうと思って行ったら、あいつがいたんだよー。マジうぜー」
「あいつ?」
「そ、この間のうるさい犬っころ」
チカとキヨシがタゲられてるのか。
相手を褒めるようで癪に障るけど着眼点は悪くない。二人とも初対面の相手にはフレンドリーだし、話しかけやすい。おまけに情にも厚くていい奴だ。ただし、普段は馬鹿で身内にのみ発動するだけ。
身内なら二人に対して泣き落とし系で攻めれば余裕で落とせる。
もし私が敵対相手でこのクランを崩すとしたら、私もやっぱりキヨシとチカを狙う。ただし、泣き落としではなくゼルもしくはアイテムで。
「ren、何考え込んでるんだ?」
「チカとキヨシを落とすとしたら、いくらかかるかなって」
「即金1Gなら考える!」
白の質問に答えた途端、チカが1Gで考えると胸を張った。
……馬鹿だ。
「えー、俺の事見くびってもらっちゃ困るぜ! ゼル程度じゃ落ちないぜー」
「強化の素材なら?」
「1000個くれるなら考える!」
……1000個って、1Gより安いんですけどキヨシクン。
二人の答えを聞いた先生も宮ネェも白も呆れた表情で二人を見つめ、同時に深い深いため息を吐いた。
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