第258話 最強は城主を目指す⑫

 クランLvが無事8になった事で次の日の夜には、軽い遺恨は残しつつも同盟を無事解散したSGとアース、二丁目を同盟に迎えることに。


 同盟の名前はLast Requiem=ラスト レクイエム。死者の安息をと言う意味らしい。命名は、千桜で「どうせ、PKも戦争もやるし殺しまくるわいね」とは彼の談。英語表記にするかカタカナ表記にするかの投票で、英語が圧倒的に多かったので英語の表記に決定。

 ま、私的にはモフろうの会が良かったけど……。


 他にも、ゲートヘル、血塗られの殲滅者、剥げ丸ドン、蒼穹の漆黒は、暗黒などなど、ぶっちゃけ何を言いたいのか判らないものも含め沢山の案が出た。


 クラメンたち――主にキヨシとチカなんだけど――が顔合わせしようとか騒いだせいで、闘技場で各クラメンたちが自己紹介をしている。


[[ティタ] ね~。これ必要なの?]

[[ren] 狩り行きたい]

[[春日丸] 貴重な時間がっ]

[[キヨシ] 大事なことだろー! お互いを知るって言うのはっ]

[[†元親†] そうだそうだー!]

[[ざゆたん] うざいでしゅ]

[[風牙] まー、やりだしたのうちだし、聞くしかねーよなー]

[[鉄男] どうせ名前なんて覚えないのにいるのか?]


 こんな無駄な時間を過ごすぐらいなら、狩りに行きたいとごねるティタ、私、春日丸。そして、無言だがイラついている顔を隠しもしない黒、白、源次。そんな私たちを宥める基、言い出しっぺで自己紹介を始めたのはキヨシとチカだ。


「えっとー。あの。よろしくお願いします」


 体育座りをしたまま放たれる殺気に、さっきからアースのクラメンがしどろもどろに自己紹介をしている。

 自己紹介されたところで、敵対じゃないと覚える気がない私は、いつも通りクッションとテーブルを取り出し隅の方で製本中。


「あ、幼馴染と悲しい事になった子だ」と呟いた鉄男の声に、チラッと視線を向ける。が、特に面白い自己紹介をしている訳でかったので、さくっと興味を失った。


 そうして、二時間もの時間を無駄に過ごし、ロゼ、雪継、小春ちゃんからの同盟加入申請を承諾して漸く同盟が結成された。

 

 同盟に関する仕様と言えば、同盟チャットが使えるようになる。

 だが、同盟チャットは音声を認識しないため、仮想キーボードで打ち込む必要があるのと。

 クラン同様に同盟のスキル=バフが存在する。スキルを取得するためには、同盟に所属する各クランからクランポイントを同盟ポイントとして献上してもらう必要がある。

 同盟ポイントは同盟のマスター及び同盟に所属するクランの任意であるため同盟により条件は異なるぐらいで、他に特筆すべき点はない。


(ロゼ) まぁーよろしく頼むわ

(小春ちゃん) 皆よろしくね~ん。装備とかその他色々承るわよ~

(雪継) よろよろ

(黒龍) おー。

(ベルゼ) このチャットに違和感しかないww

(宮様) よろしくお願いするわね~♪


 同盟チャットに早速挨拶が流れた。ベルゼの違和感を私も同じように感じているが、そんなことよりも狩りを優先したい!


[[ティタ] ren。狩り行こ~]

[[白聖] いこーぜ]

[[大和] 僕も、行きたい~]

[[ren] クエやりたいから、パス]

[[大次郎先生] じゃぁ、PT組んでいこうか]

[[源次] ちょ、ren拒否るなよ]


 行かないと断りを入れて、足早に倉庫へ向かう。引き留められる前に、準備を終えて急いで狩場へ向かった。

 元は確か二次職の狩場だった場所を、四次職専用として拡張した狩場だ。場所は、クランハウスがあるヘラにあり、街から南東に行った山間部にある。

 狩場の名前は、竜の楽園。通称、ドラパレ。


 竜の楽園と言う名前なのにドラパレ――ドラゴンパレスと呼ばれている理由は、狩場に出てくるモブが、種類問わず名前の後ろにドラゴンと言う名が付いている事と中心部にあるダンジョンが要塞城のような見た目をしているからだ。


 モブの名前にドラゴンとついていても、形や大きさは様々で、蛇、トカゲ、二本の脚に翼の腕を持つトリケラトプスみたいなワイバーン、蛙のようなものまでいる始末。


 狩場の範囲は広く、手前――外縁部に森林地帯。中心部に行くほど赤茶けた岩肌が見えようになっている。そして、中央部分には切り立った岩場を利用した自然の要塞城のような形をしたダンジョンが。

 ダンジョン自体は一度アップデート後に、一人で行って死に戻り仕掛けたことから、現状PTを組まないと流石に進めない。でも、いずれその内攻略したいと思っている。


 一人でいそいそ狩りに来た理由もついでに語っておけば、狩りに行きたいと言っていた黒たちを連れてここに来た事がある。その時、黒含め近接組から「武器防具が痛むだけで、旨味もないこんな狩場二度と来たくねー!」と言われてしまうほど、近接殺しな狩場だからだ。


 だがそんな狩場に私が通う理由はただ一つ、この狩場のモブ全て――ダンジョン内は含まれていなかった――を対象とした反復クエストで貰える褒章の袋のためだ。

 一つの袋を貰うのにモブを二~三百匹狩る必要はあるが、袋からは低確率ではあるがランダムで四次職用の魔法書、スキル書が獲得できる。


「ウル、ありがとう。後でお肉いっぱいあげるね」


 アクティブのモブにウルが殺されるなんてことがあれば、全てを放りだしこの狩場の全てのモブを殺したくなるから、入口まで運んでくれたウルを撫でながらお礼を言って帰す。

 ウルが消えるのを見送って、バフを追加するとクエストを受けにNPCの元へ移動した。


 出会いがしら、巨大な尻尾を振り回し攻撃を加えてくるモブを躱し、ブレスオブアローを叩きこむ。一撃では当然HPが枯れるはずもないので、二撃に備えバックステップを踏み距離を取る。


 モブが毒霧を吐くため、大きな口を開けば二本の鎌の刃のような牙がキラリと光った。そこへ迷わず、ブレスオブアローを打ち込んだ。

 外皮は鱗に覆われ硬いが、内皮は軟らかく魔法が倍の効果を発揮する。


「キッシュアアアア」


 コブラのような見た目に尖った牙が二本生えた蛇型のファングスネークドラゴンが断末魔を上げぱたりと倒れる。次を探し視界を動かしながら、その場を移動した。


「やっぱ、チマチマ倒して数を稼ぐしかないか」


 更に三体のモブを倒したところで、独り言ちる。どうにかして範囲をしたいところだが、狩場が広い分モブが遠いのと外皮にいくら魔法を当てようと威力が半減する事。この二つの効果のせいでどうにもこうにもやりにくい。


 ま、別の方法も試してみるしかないかと思い直し、狩りに集中する。


(ロゼ) おーい。ren!

(大次郎先生) 狩りに夢中でチャット見えてないと思う。

[[宮様] ren。みえてる~?]

(小春ちゃん) あらあら~ん。会議の時間なのにね~んw

(宮様) これは気付くまで待つしかないわね~w

[[白聖] 返事ないってことは確実にみてねーな]

(雪継) ren~?

[[村雨] いつもの事]

(白影) ま、しゃーねーよ。先に会議始めとく?

(大次郎先生) ん~。メインで動くのrenだし、ちょっと待とうか。


 なんて会話が、ふと見たらされていた。そう言えばと、記憶を頼りに思い出す。狩りに行くため移動していた時にロゼが『今度の攻城戦について会議をするから、二時間後集合』って言ってた気がする。

 嫌な汗が背中を伝い、希望を込めてチラっと時計を見た。


「あぁ……やらかした。これ確実に、怒られる案件だ」


 ――既に会議予定時間からも過ぎていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る