第224話 最強はイベントに励む④

 雪継たちの狩りを終えて稼いだ経験値を確認する。溜まった経験値スクロールは、まだLvひとつ分の40%と言ったところだ。これには今までの経験値も入っているので、昨日の分だけで8~9%稼いだことになる。

 ドロップの倍化の勾玉は、やはりと言うか案の定ドロップし難いようで十時間以上の狩りで十五個だった。これを十個使って作る虹の勾玉は、二時間の間経験値の取得率がアップする。しかも、ソロで経験値が100%アップ、PTで経験値50%アップと言う破格のものだった。


 そして、イベント二日目――。


 ふかふかのベットから起きあがった。取り出した召喚用の笛を一回だけ鳴らしてウルを呼び出す、これも最近では日課だ。呼び出し現れたウルをひとしきりワシャワシャと撫で専用の高級餌、サーロインをあげる。ちなみにこのエサのお値段は、@15K。これぐらいの値段なら、幾らでも買ってあげたい。


「ウル、かわぃぃ! はぁ~幸せ。もう、ずっとこうして埋もれていたい」


 ごはんを食べ終えたウルが寝そべった頃合いを見て、その長い体毛に埋もれる。この時間だけが、唯一の癒し……。ウルは私の方へ鼻を寄せるとなんだ、主かと言わんばかりに顔を戻し目をつぶった。そんなつれない所も可愛い!

 なんてことをやっている内に、クラメン達が続々ログインして来た。


 また後で、そうウルに言いながら自室から執事=倉庫を経由してリビングへ移動する。

 今ログインしたチカで七人だからあと一人来れば出発できる。狩りをし出すと熱中してしまうため、ついつい忘れていた予備のコーヒーとかいろいろをヒガキさん頼もうと思ったのだ。


[[†元親†] ふー。ギリギリ間に合った!]

[[ティタ] おかおかw]

[[ヒガキ] 揃いましたねw]

[[聖劉] お~。丁度八人だw]

[[宮様] あら、そろったの?]

[[ゼン] キヨシ君、ちょっと落ちるから少し待って欲しいって言ってました]

[[ren] あぁ、ヒガキさん。これでいつものお願い。

    キヨシが来る前に準備してくる]

[[聖劉] 見事に盾が居ないwwww]

[[†元親†] 紙装甲しかいないw]

[[ティタ] 火力的に俺一人で引くのきついから

     聖劉一緒に走ってねw]

[[ヒガキ] 了解です。戸数はいつも通りでいいですか?]

[[宮様] あぁ、私の分もお願いしたいわ~!]

[[聖劉] まぁ、この状況なら行くしかないよね~w]

[[ren] それでよろしく]


 無言でヒガキさんにトレードを出し、お願いしながらアイテムボックスから食品になりうるものを手渡す。用事が終わり、そのまま街へ繰り出す私を追うように、ヒガキさんがいつも通りで良いか聞いたので頷いた。


 キヨシがいつ来るか分からないのでとりあえずは、倉庫と鍛冶屋を経由する。倉庫で必要になるであろうスク類を複数枚取り出し、代わりに要らない宝石類と属性の石を倉庫に突っ込む。その時に魔石を確認したのだが、こちらも購入しておいた方が良さそうだ。

 鍛冶屋に行くついでに雑貨屋へ寄ろうと頭に入れて、街をそぞろ歩く。雑貨屋で魔石の補充を済ませ露店を見始めた所で、キヨシが戻りクランハウスへ戻った。


 今日も今日とて混みこみの狩場を見渡す。今私達がいる場所は、ジュエルフェアリーの狩場にある丘の上の大樹の側だ。


[[ティタ] この辺りどう?]

[[聖劉] 引きやすいかも?]

[[キヨシ] おー、どこでもいいぜーw]

[[ティタ] まぁ、ここでやってみよw]

[[ren] 了解。バフ]


 引く場所が決まったのでバフを入れる。個別とPTバフどちらも入れ、ティタと聖劉には、マジックオブウォークを追加した。

 今回は、ATKが少ないため私、ヒガキさん、宮ネェがゲッターサークルを担当する。やってくれと言わなくても自発的に手を上げてくれる宮ネェやヒガキさんは本当にいい人だと思う。


『15~』

『お、戻るの? 了解』


 ティタの声に聖劉が合わせるようにジュエルフェアリーを引きながら戻り始める。狩場全体が見渡せる丘の上で待機しているため、全てが見えるのだ。走るティタと聖劉の後ろから追いかけて来るジュエルフェアリーの数が凄い。引きすぎじゃないか? そう思えるほどに多い。


 だが、この引き方はダメだ。丘の上に居るおかげでほかに狩りをしているPTが私にも見える。これだけのモブを私達だけで引いてしまうと周囲にいるPTが倒すべきモブが居なくなってしまう。それはある意味で迷惑行為に捉えられ余計な争いを生む事もあるし、こういうイベントでは余計に気を付けるべきだ。

 二人が次引きに行く前に、もう少し抑えるよう言おう。


 戻った二人の動きに合わせまずは、設置型魔法であるバインド(+15)を発動する。地のジュエルフェアリーには効かないが、移動速度が速いジュエルフェアリーは水と風なので問題ない。

 私がバインドを発動する間にティタと聖劉が纏まりやすい位置に走り込む。バインドが切れるタイミングで、宮ネェとヒガキさんがゲッターサークルスクを使う。

 私が慌てて取り出したゲッターサークルスクを使うよりも早く、ゼンさん、キヨシのサンダーストームが、檻の纏められウヨウヨしているジュエルフェアリーを一撃で粒子に変えた。


[[ティタ] 早w]

[[聖劉] ログが凄いwwww]

[[キヨシ] 楽勝w]

[[†元親†] 俺、なにもする事が無いw]


 聖劉の言う流れたログはこんな感じ。


【 水のジュエルフェアリーから アクアマリン を獲得しました 】

【 火のジュエルフェアリーから 火の属性石 を獲得しました 】

【 水のジュエルフェアリーから タンザナイト を獲得しました 】

【 風のジュエルフェアリーから エメラルド を獲得しました 】

【 風のジュエルフェアリーから シトリン を獲得しました 】

【 火のジュエルフェアリーから ルビー を獲得しました 】

【 地のジュエルフェアリーから トパーズ を獲得しました 】

【 火のジュエルフェアリーから ルビー を獲得しました 】

      ・

      ・

      ・


 基本的に、宝石系ばかりだがたまーに武器に属性を乗せることができる属性石が落ちる。これが一気に流れるため、この狩場ではシステムログを切っておくのも手かもしれない。


[[宮様] チカ……あんたが貧乏だから仕事ないんでしょ……。

    ゲッターサークルスクすら買えない手持ちってやばいわよ?]

[[ren] そうだ。ティタと聖劉。

    もう少し引き方考えないと迷惑行為になる]

[[†元親†] うっ、それは……]

[[ティタ] あ~]

[[聖劉] 周りが遅いんだよね~。殲滅……]


 私がドロップの表示を切っている間に、宮ネェがチカをぶった斬る。そんな会話を更にぶった切った私は、一応注意を促した。だが、ティタと聖劉はちょっと不服そうだ。それでも何とか納得してもらうよう出来る限りの言葉を尽くし話をした。最終的には頷いてくれた二人を見送り、狩りを続行する。


 それから四時間狩りをして、他のメンバー達が続々ログインしてきたことで一度帰還してPTを入れ替わる。

 今日は、ロゼ達の方を誘ったようだ。残った大和、チカ、さゆたん、ヒガキさんがロゼ達と組むという。私は、クラメン達と再びPTを組み、イベント狩場へ移動した。


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