第222話 最強はイベントに励む②
鉄男を脅……間違えた。鉄男から聞き出したフェアリー産のPOTは一本30Kと高いものの、その効果は非常に良い物だった。
ドラマスの専用魔法であるブレスオブアロー、この魔法に属性は今の所設定されていない。いずれ属性が反映されて各属性ごとに放てる事を願いつつ使ってみればたった二発で、ジュエルフェアリーを沈めた。
これなら単騎でも、まともな狩りが出来そうだ。
狩りできることが判れば、経験値スクロールを使える。目指すはイベント中に四次職に転職する事だが、上手くいけば残りスクロール六十枚分をこのイベントで貯めきれるだろう。
自分にバフを入れ、ジュエルフェアリーに走り寄り反応した者をおびき寄せる。一匹、一匹をブレスオブアローで狩るより、ドラゴンオブブレスで一気に狩った方が早いのではないかと思い試してみる。
やってみた結果狩りはできるが非常に痛い。これでは直ぐにPOT補充をしに戻らなければならなくなる。
そこでジュエルフェアリーの特性について考えた。攻撃力が高く防御力が低い。HPはそこまで多くはない。移動速度は属性ごとに違う? 風、水は早く、土、火は遅い。基本的に人二人分ぐらいの距離を取れば攻撃は当たらない。
そこで魔巣の狩り同様ゲッターサークルスク、バインド(+18)を使う。バインドは土属性のフェアリーにはかからない。だが他が足止めできればそこまでのダメージを追わない。上手く一纏めになったところでドラゴンオブブレスを二発入れる。
バタバタと倒れ黄色い粒子になって消えるモブを見て、上手く狩れた確認を取ると徐々に狩りに熱中して行った――。
[[ティタ] ren~~~~?]
[[キヨシ] 気付いて無さそうw]
[[ヒガキ] チャット見えてないんじゃ?]
[[宮様] 気付いてないわねw]
[[大和] 鯖どこだろ~?]
[[源次] しらみつぶしで行くか?w]
[[聖劉] うへぇ~。鯖40個位あるよ? 全部みるの~?]
こんな会話が気付いたらされていた。そして、目の前にはニコニコ顔のティタ達が……。バフかな~なんて白々しく思いながらチャット見て、わざわざ私を探していたらしい事を知る。
「バフ頂戴~~~」
「キヨシ違うでしょ?!」
バフを集りに来たらしいキヨシに無言でバフを入れる。入れて直ぐにその場を離れようとした私の肩を、ガシっと良い笑顔の源次とティタに掴まれた。
バフじゃなかったらしい……まぁ、分かっていたけど早かった……。ウィンドウに表示された時計を見れば、まだ狩りを始めて四時間しか経っていない。
「……チッ」
「はい、舌打ちしない。見えてるよね?」
「諦めてね~、ren」
えぇ、見えてますよ。見えてるけど見ないフリをしていますよ。ティタ達が現れてから何度拒否しても現れるPT勧誘のウィンドウが見えていますよ。聖劉、人には諦めたくない思いがあるんだよ。
「みんなでやった方が絶対旨いよ!」
「諦めなさい!」
ティタと宮ネェの笑みが深くなる……圧が凄い。ティタと宮ネェの微笑みに負けた私は大きく溜息を吐き出すと新しく表示された勧誘のウィンドウのYESボタンを押した。
私がPTに入ったことで満足そうに頷いた二人とその他でその場で狩りを再開する。基本的にはいつもと同じだ。大和が引き、ティタが追走。二人が引いたジュエルフェアリーを源次、聖劉、ヒガキさんの三人がゲッターサークルスクで一纏めにする。攻撃は、私とキヨシの二人が一発ずつ魔法を放つ。
『キヨシとか宮ネェは、ソロのが美味しいんじゃないの?』
『いや、この狩場PTの方が旨いよw』
『どういう事?』
『あら、ren公式読んでないの?』
魔法が使える二人ならソロの方が旨いのではないかと考えた私は、思ったことをそのまま聞いた。するとキヨシは違うと言う。その理由を不思議に首を傾げれば、宮ネェがその理由を教えてくれた。
宮ネェ曰く、今回公開されていたイベントの詳細が乗ったページの下の方に小さい文字で”パーティーの人数が多いほど、倍化の勾玉のドロップ率、経験値習得率が向上します”と書いてあったらしい。
「マジ?」
『マジマジw 白チャになってるぞw』
『まー、それ見つけたの知らない人だけどなーw』
『掲示板に書いてあったのを鉄男が見つけて教えてくれたんだよ~w』
『そういう事は大きく書け! って思うわよね~w』
余りの事実についPTチャットを使うのを忘れ確認した。キヨシがツッコミながら本当だと言い。源次、大和が分かった理由を語り、宮ネェがぷぅ~と頬を膨らませ怒って見せた。
中身が男でなければ可愛いと思うけど……。あぁ、なるほど! さゆたんに対抗してるのか!
イベントアイテムが出なかった理由が分かり、私的には結構スッキリしている。詳しい詳細はティタが教えてくれた。
イベント狩場――特設マップに限り、フルPT状態でアイテムのドロップ率アップは通常の十倍。取得経験値アップ率は200%。PTメンバーが少なるなるごとにその数値は下がるらしい。
『200%+虹の勾玉で最大250%までは上がるらしい』
『旨いよな~~!』
ティタの言葉の説明が終わり、キヨシが満面の笑顔で『うまうま』と言う。引きながら説明できるティタは器用な人だと思う。モブにレンジヘイトを入れ位置取りした大和が不意に『うち人数中途半端だから、足りない分補充だね~』と人数不足を訴える。
確かに大和の言う通りうちのクランの現状、フルPTが二つと一人――二十しかいない。博士と春日丸を足したとしても二十二人。みっつのPTをフルにするには、どう考えても二人足りない。
『あら、大丈夫よ。足りない分は、ロゼ、影、雪、千桜の誰か誘えばいけるじゃないの』
当然のようにロゼ達を数に入れるあたり、誘えば来てくれると宮ネェは思い込んでいるようだ。彼らも一応クランを運営している側だ。来るかどうかは微妙だと私は考えた。
『おぉぉ。でたぁ~!』
『やっぱ人数フルになるとドロップいいね~』
『だなw』
『ウマウマ』
『ゲッターサークルしか使ってないのに貰っていいんですか?』
モブを引いてはサクサク狩るを繰り返しているとポロポロと目当ての倍化の勾玉が落ちる。それ以外にも、属性石や宝石類も落ちている事から本当にドロップ率が上がっているようだった。
ドロップ率アップに狂喜乱舞するキヨシを皮切りに、大和、源次、ティタ、ヒガキさんの順で会話を交わす。楽しそうなクラメン達を見ながらバフを更新して、再び走る二人に『もう少し多めで』と伝言。
結果……当然のように倍の数を引いて来た二人に『多すぎよ!』と宮ネェがキレつつ狩りは順調に進んだ。
夜になり仕事のためイベントに乗り遅れた、黒と先生がログインして来る。経験値イベントがフルPTで狩りする事を推奨していると知るや否や、速攻で博士と春日丸、雪継と千桜を誘ったらしい。
だが、博士はこの間のPOTを再び作り出すため狩りを拒否。春日丸は春日丸で「イベントこそPKだろ!」とPK相手を探しに行ったらしい。
そんな訳で召喚された雪継&千桜とそのクラメン二名――確か……むー姫、獅子王と現在、黒、白、ミツルギさん、私の四人とPTを組んでいる。
見ず知らずの人が二人もいる……狩りの為だけど…………私は既に、帰りたい。
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