第202話 最強はアップデートを楽しむ㉕
バフの更新時間が迫り、個別のバフを各々に追加する。未だスキルが発動しないらしいツクヨミのために、白はテネプラエのままにしておく。
大分減ったモブを前に、全員が精神的な満身創痍と言った感じだがHPMPともに全快に近い。キヨシ達が、攻撃に入ればすぐにでも殲滅は終わるだろう。
[[風牙] なぁ。ここのボスもサモンドロップすると思うか?]
[[大次郎先生] もう少しだ。皆がんばれ!]
[[宗乃助] 猛獣のボスはキマイラでごさるな]
[[ティタ] サモン欲しい!]
猛獣のボスはキマイラではあるが、別名ビーストバンブと呼ばれている。
通常のゲームでのキマイラと言えば、獅子の頭の横にヤギの頭があって、獅子の身体に尻尾が蛇と言ったものを想像するだろう。
だが、病ゲーのキマイラはヒヒの頭の横に鶏の頭があり、胴体はヒヒ、尻尾に蛇だ。二足歩行する上に、跳びはね回避も高く、毒も吐く。毒が普通のポズンキュアでは解除されないのも厄介だ。
回復職が持つ、ピュリファイであれば解毒できるのだが、全員を解毒するとなると回復の方がおろそかになってしまう。
そうなれば、討伐に時間がかかることになる。討伐に時間をかければかけるだけ、雑魚を大量に呼び寄せると言う悪循環に陥り、結果全滅と言うことになりかねない。
と言う訳で、ここのボスは沸いても放置される。それを討伐するとなれば、最低でも50人はプレイヤーが欲しいところ……。
[[鉄男] 人数的にうちだけじゃ無理だなーw]
[[白聖] 生ジル、小春、ロゼのとこ呼べばいいんじゃね?w]
[[宮様] ちょっと! 討伐する気なの?!]
[[さゆたん] 止めらないでしゅw]
[[†元親†] エビセン食べたくなってきた!]
どうやらやる気満々らしい? やるならやるでいいけれど、一度装備の耐久とか補充とかには行きたい。
なんて事をツラツラ考えている内にクラン内ではボスを狩ることが決定したようだった。残りのモブを狩り終えたら一度、街に戻ろうと言う話しになっている。
街に戻っている間に三人には連絡を入れるらしい。本気でボスサモンの為だけに、レイドをするつもりのようだが、雪継、小春ちゃん、ロゼたちの都合は大丈夫なの? 聞く前に参加するものと当然のように考えるのはダメなんじゃないの?
相変わらずの突発レイドに、サモンが欲しいと願う近接組がやる気を漲らせる。残り三割ほどのモブをあっという間に殲滅してしまう。
こんなに早く倒せるなら、最初からその力を出しておけば……あんな苦労なかったんじゃ? と思ってしまうほど早い殲滅だった。呆れるを通り越して、もう言葉が出ない。
殲滅を終えたところでトランスパレンシーを入れ、帰還専用の陣に乗り街へと戻った。
レイドをやるなら三十分後をめどに休憩を入れようと言う話になり、皆がそれぞれ落ちる。それに合わせてゲームをログアウトして、リアルでやるべき事を済ませゲーム内へ戻った。
[[白聖] 雪のとこは来るってさ。ただちょっと準備に時間が欲しいって]
[[ren] 戻り]
[[黒龍] ロゼもストレス発散するつってるー]
[[大次郎先生] りょーかい]
[[さゆたん] 小春ちゃんも来るそうでしゅよw
ついでにrenちゃんに頼まれてたのも持って来るって
伝言頼まれたでしゅw]
[[宮様] 強制参加させたみたいな気がするわw]
[[村雨] 博士と春日丸も来るってよ~w]
[[大和] 結局、全員参加だね~w]
[[キヨシ] 雪のとこってどれ位時間かかりそーなの?
まだ時間あるなら、飯食べて来る~]
[[ren] わかった]
白、黒、さゆたんのクラチャを見ながら、絶対断れない相手に連絡を入れさせたのか……と思いつつ、倉庫へ入った。
ビーストバンブの毒を解毒するには、ピュリファイが籠められた魔法のスクロールを大量に持って行く必要がある。要は、回復は回復に専念するから、自分の毒は自分で治せってことだと思う。
私の手持ちは、五十枚と少し。取引所で買い足そうか悩みむが、一度の討伐にかかる時間と毒の回数が分からない。余りに持って行き過ぎるのも考えものだし、これだけあればなんとかなるはず。これでダメなら、仕方ないと諦めよう。
キヨシ、チカあたりはスクすら買えないとか言いそうだけど……。
一抹の不安を感じつつ、とりあえずクラチャでピュリファイのスクを各自で準備するよう伝える。
[[春日丸] 久しぶり? そうでもない気もするが……]
[[ren] ピュリファイSC各自用意して?]
[[風牙] よー。久しぶりだなw]
[[さゆたん] トレラどうでしゅか? 使い勝手いいでしゅ?]
[[シュタイン] 久しぶりなのである!]
[[ミツルギ] お久しぶりっす! ピュリファイのSC取引所っすか?]
[[鉄男] ノ あー。バンブって、ピュリファイいるんだっけ?]
[[春日丸] トレラね……。効果は凄いが、俺には必要ない!]
[[ヒガキ] 何枚位必要ですか?]
[[シュタイン] そう言えば、実験で出来たPOTがあるのである!]
[[宗乃助] 言い切ったでござるww]
[[源次] 50枚位あれば足りると思うぞ―]
[[白聖] 博士……お前、ゲームの中で何やってんの?w]
[[聖劉] また、凶悪なPOTがっ!!]
[[黒龍] 前に出来たPOTは、投げたらフレイムバーストで爆死だったしな]
[[ティタ] ガクガクブルブル]
[[シュタイン] 今回は、そんなことないのである!
と言う訳で、ボスで実験しても?]
自作の攻撃型POTを実験すると言う博士が、その場にいた全員から「ダメ」と言われるまで僅か三秒だった。
そう言えば前にもPOTが出来たと言う博士の言うまま実験に付き合って、死んだ記憶がある。あの時のPOTは確か……大渦――マールシュトロームを引き起こしたPOTだった気がする。流石に私もPOTを投げただけで、フレイムバーストやマールシュトロームを起こされるような実験にはもう付き合いたくない。
って言うか、前を歩く春日丸の背中に哀愁が漂っているような気がする……。あぁ、関わりたくない。もういっそサモンにサイレンスでも使えればいいのに。かけた所で、効くかどうかは不明だけど……。今度、教えてあげようかな?
なんて事を考えながら出来る限り春日丸と距離を取りつつ、集合場所の入り口を目指した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます