第178話 最強は幻想を堪能する⑥
あの後クラチャで相談した結果、今回の転写用羊皮紙や白紙のスクロールはクラン費で賄う事が決まった。
何故そんな話になったのかと言えば、今度アップデートされる四次職。そのLv上げ用に他のメンバーも欲しいと言いだしたのがきっかけだ。
実際、私自身も欲しいと思っているし、皆もそうなのだろう。
全員同意の上なので、今回はクラン費で賄う。
話し合いが終わり3枚の転写用羊皮紙を仕上げ、299枚のスクロールを作り上げた所で集中力が切れた。
クラメン全員分と作るとなれば、最低でも後76枚ぐらいは必要な訳で……それを全部作るのは流石の私でもだるい。
そこで考えたのは、転写羊皮紙に転写用羊皮紙に書いた魔法陣を転写できないか? だった。
あえて一枚だけ残し、ダメもとで試す。
書き写した転写用の羊皮紙を広げ、その上に新品の転写用の羊皮紙を取り出し同じように重ねひろげた。
そして、ウィンドウに表示された転写をタップしてみる――。
「きたこれ!」
興奮冷めやらぬ様子で、叫んだ私の声にクラメン達が動きを止める。
[[宮様] どうしたの?]
[[大次郎先生] ついに、renまでおかしくなったかな?]
[[黒龍] 俺はまだまともだ!]
断じて頭がおかしくなった訳ではない。
漸く出来あがるめどが立ったのだ、喜ばない訳が無い。そう思いつつ上に重ねた転写用羊皮紙に書き写された魔法陣を眺め、一人喜んだ。
そして気付く……もしかして魔法書でもできたのではないかと。
これで、後は転写しまくるだけだ。
と言っても、転写用の羊皮紙が足りないので再びカジノに行く必要があるのだが……。
[[ren] ちょっとカジノ行って来る。すぐに皆の分作れる]
[[風牙] マジ?]
[[聖劉] おぉ。流石ren]
[[さゆたん] 帰れまてんいつまで続くでしゅか?w]
[[大次郎先生] クラン倉庫の資金全部持ってていいよ。
量産しといて! 余ったら、売りさばける]
[[宗乃助] ……伸び続ける帰れまてん……でござる]
[[大和] 頑張ろう~!]
[[ren] 了解]
先生の言葉を受けて立ち上がった私は、倉庫へ向かい再びカジノへ走った。約2G分ぐらいの白紙のスクロールと転写用羊皮紙を購入する。
購入できた数は、転写用羊皮紙100枚用が200。
そして、白紙のスクロール×10枚が2000。
これでとりあえず、2万枚はつくれることになる。
クラン資金の半分ほどを消費してしまったが、余った分はクラン費に回すつもりなので問題にはならないだろう。
倉庫を経由し残ったお金を預け、その足で狩り場にもどる。
そこには既に、眠いのを通り越してしまったらしいクラメン達が、異様なテンションに異様な動きでモブを狩りまくっていた。
その姿はまるで、鬼人だ。
[[キヨシ] いくぜ~! おらおら~!]
[[ティタ] ちぇすとー!]
[[村雨] 血が、血が足りぬ!]
[[白聖] おら、モブたりね~ぞ!]
などなど……こんな感じで各々が、何かに憑依されたかのようにクラチャが汚されて行っている。そろそろマジでヤバそうだな。
そうは思っても、狩りは辞めさせない。どうせなら、四次職用の経験値もここで貯めておきたい。
意思表示代わりにバフを追加すれば「キター!」と叫んだチカが、大剣を振りまわしモブに斬りかかっていた。
[[ren] 戻り]
[[鉄男] おけーり]
[[ren] 量産態勢入るから、二人の分終わったら全員クエ受けて来て]
[[大次郎先生] そう言えば、そろそろ交換行ってみようか?]
[[黒龍] そうだな。とりあえず一人頭二百枚できればいいしな]
[[風牙] じゃぁ、行って来るかw]
[[宮様] その間に、皆水分補給して来てね~]
宮ネェの声にクラメン達は寝袋を取り出しその中に入って行く。
この頃合いから、現実に戻って寝落ちしたまま戻って来ない奴が出てくる。
出来る限り戻るよう伝えておかなければ! そう気付いた時には既に遅く、皆は現実へ戻って行った。
そんな私も寝袋を取り出し、現実に戻りトイレなどを済ませて戻る。
今回はなんとか全員戻って来ているようだった。
[[ren] 戻り。どうだった?]
[[ヒガキ] お世話かけます!]
[[黒龍] ん~。まだ30%ってとこだな]
[[風牙] こっちも同じ]
[[ティタ] 先は長いな……]
[[さゆたん] 頑張るしかないでしゅねw]
気合いを入れ直し、再び狩りに興じる面々。
出来るだけ2時間以内に残り20%を貯めて頂きたい。
白熱する帰れまてんに興じるクラメン達を横目に、私は再び転写用羊皮紙に魔法陣を写し込みスクロールを量産した。
全てが終わったのは1時間後だった。やっぱり魔法陣を書かなくていい分時間が短くて済むのはありがたい。
全部で7600枚のスクロールを作り上げ、全員に分配する。
漸くスクロール作りから開放された。そう思いながら、狩りに参加。
凝り固まった身体を動かし、眠気を吹き飛ばした。
それから更に八時間――。
漸く、二人の三次職分が貯まり全員が限界を迎えたところで、帰れまてんが終了する。
一人頭260M分のゼルが分配され、お疲れ。そう言って落ちて行くクラメン達を見送り、私は再び一人で狩りに興じるべくクエストを受けに向かう。
だって、せっかくなら自分の分ぐらいは稼いでおきたい!
そんな私の同類が、黒と風牙と村雨。
彼らもまた、自分の分を少しでも稼ごうと思ったのか狩りをするつもりのようだった。
[[村雨] やっぱり、ここからが本番だよなw]
[[黒龍] まーなw]
[[風牙] 漸く自分の番だしなw]
まだまだ元気らしい三人と共に歩きクエストを受け、狩り場に戻る。
ここからは個人戦だがPTはどうするのだろう? そう思い問いかければ、各自が自由に狩りをすると言う事になったのでPTは解散した。
三時間後に、限界に達したらしい風牙が「あぁ、むりだ~」そう呟いたまま動かなくなり。
更に二時間後に、村雨が「寝る!」と残し落ちて行った。黒と二人無言で狩りを続ける事更に5時間。
既に狩りを始めてから48時間をとうに過ぎ、眠くない方がおかしいと言える時間帯になっていた。
[[大次郎先生] おはよう!]
[[ren] ノ]
[[黒龍] ノ]
[[大次郎先生] 二人共早いなw]
[[黒龍] 寝てない]
[[ren] 同様]
[[大次郎先生] ま、まさか……ずっと?]
[[黒龍] y]
[[ren] 後、もう少しで貯まるからそこで寝るw]
[[大次郎先生] お前ら身体壊すぞ? 無理はするな~?]
[[黒龍] ありw]
早めに起きてinしたらしい先生と軽く会話を済ませる。
黒がのろのろする間に、周囲のモブをブレス オブ アローで狩りつくしニヤっと笑って見せる。
すると、片眉のピクっと動かし舌打ちする。
「ぜってーまけねー!」
「勝つの私。黒二番煎じ!」
「ざけんなw」
と今度は黒がやり返して来る。周囲のモブを三次職盾の範囲スキル――バックラー クエイクを使い狩り尽くす。
ドヤ顔を決め「ふんっ!」と鼻を鳴らし笑う黒に対し、舌打ちする私……こんな感じで、お互い引くに引けず……寝れなくなっていただけ。
二時間のバフが切れるまで残り五分。流石にココでもうやめよう。別に、私が帰れまてんをする必要はない。そう思いつつクエストアイテムの個数を切り良く0にした。
そして、その足でクエストの清算に向かった。
溜ったのは、経験値スクロールに30%ほど……残り70%は、魔巣で貯める事にしよう。
[[ren] 黒、先生。おつー]
[[黒龍] おうw]
[[大次郎先生] お疲れ。ゆっくりな!]
先生と黒にお疲れと流し、そのままログアウトした。
その後、12時間近く寝てしまったのは言うまでもない。
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