第175話 最強は幻想を堪能する③

]

[[村雨] これもまた修行ジャァァァァ!]

[[白聖] 無駄打ちするからだろw]

[[大和] 鉄男ってやっぱり、バカなんだねw]

[[風牙] だから、そこは止めろと言ったろ?w]


 狩り場とカジノの会話が混線する。

 どうやら、キヨシはMPが底尽き、鉄男はゼルが詰んだらしい。

 そんな二人に馬鹿がと言いつつ、微笑ましい顔をして笑う。


 PTを組んだ皆のMPを見る。

 残りの残量から、そろそろ遠距離組が休憩に入りそうだった。

 帰れまテンを効率よくやるには、遠距離と近接が交互に狩りをするのが一番いいと私は考える。

 それでも、遠距離が有利なのは言うまでもないのだが……そこは見ない!


[[宮様] ソロソロ私休憩するわね~♪]

[[キヨシ] 俺も見学する~!]


 回復職である宮ネェはMPを半分残し休憩へ。

 あくまで予想だが、何か有った時用にそれ以上使わないようにしているのだろう。

 その宮ネェの声に同調するように、はっちゃけまくったキヨシもその場に座り込み瞑想を始める。


 ずると、ここぞとばかりに近接組が本領を発揮する。

 黒は遠目のモブをヘイトを操り上手く呼ぶ。

 黒の側に陣取るティタ・私・村雨・ゼンさんが、近場のモブを狩りつつ黒の呼んだモブを狩る。

 一撃入れればモブは倒れるため、サクサク狩れた。


 先ほど抱えたストレスを上手く発散しつつ、三十分ほど狩り遠距離と攻撃を後退する。

 交代する間際、ゼルが無くなったらしい鉄男が合流していた。


 その後も数回交代しつつ、狩りをした。

 休憩を入れるためクラチャに一言流し、寝袋を使う。

 戻った所で、黒と大和が交代していたり。

 宗乃助が、自家製の鉄塊を投げていたり……。


 なんだこれ……? どうなってるんだ。

 沸いた傍からモブが倒れ行く。これはもう、私の出る幕では無いな。

 そう思った矢先、先生が素晴らしい提案をクラチャで流してくれた。


[[大次郎先生] カジノ来たい人いるなら交代するよ~]

[[ren] 行く。寝袋必須]

[[キヨシ] 俺もー!]

[[宮様] きーよーしー?]

[[さゆたん] キヨシはダメでしゅ!]

[[†元親†] 俺は狩りに行くぜ……ふっ]

[[キヨシ] 俺も遊びたい! 行きたい!]

[[ティタ] まぁ、行かせてあげようよ。折角だしさ]


 心優しいティタの言葉に、キヨシが涙を流し拝む。

 その姿に苦笑いを浮かべた宮ネェが「くれぐれも装備だけは売らないように!」注意を促し約束させる。

 綺麗な敬礼ポーズを決め「イエッサー」そう返事をしたキヨシと二人連れ立ってカジノへ向かった。


 道すらがやたらと上機嫌なキヨシと話す。内容は、ドラゴンレイドやクラハンについて。

 実は、このキヨシと言う男それなりに頭の回転が速く、バカではない。

 バカっぽい事を沢山するけれど、それはゲーム内だけの話でリアルはかなり真面目な男らしい。

 あくまでもらしいだけれど……。


「レイドな~。アレって結局、うちのクランが居ないと成立しないと思う」

「その心は?」

「黒の硬さ、renのバフ。それを支える有能な回復陣。

 後は、MP管理をさゆとシロが副官としてやってるだろ?」


 折り曲げた指を一本ずつ伸ばし、分かりやすく伝えるキヨシの言い分に納得する。

 確かに、この間のレイドでは、黒、大和、引退組だが雷が主にメインだった。


「確かに」

「こう言うとさ、ロゼは否定するだろうけど利用されてる気がするw」

「なるほど」

「つっても、俺らも旨い思いさせて貰ってるから、お互い様なんだろうけどなw」


 キヨシが言うと嫌味を感じないと言うか……なんと言うか。重くないから、その場だけの話で済む感じ? 上手く言い表すのが難しい感覚を覚えた。


 そんな私を余所に、キヨシは両手を頭の後ろに組むように置き鼻歌を歌っている。今日の選曲は、三分○ッキングに流れる、あのお腹がぽっこりした赤ちゃんで有名な調味料の音楽だった。


 あぁ、これは脳内に残る歌だ……。クソッ、キヨシに曲ループと言う呪いをかけられてしまった。

 


 狩り場からも見えるほど天高くそそり立つ高層ビル。

 硬質そうな見た目に、七色に光る窓ガラス。その周囲を、ふよふよ漂うネオンたち。

 良い言い方をすれば現代的でありつつも、どこか幻想的?


 病ゲー自体が、中世を舞台にしている。更に、名称はオリンポスなのに高層ビル!

 世界観ぶち壊し過ぎだろ。何度も見ても、そう思ってしまう私は悪くない。


 私がそんな事を考えている隙に、隣にいたはずのキヨシは自動ドアを潜り抜けさっさと中へ入ってしまった。


 楽しみにしていたから、仕方ない。

 ここでは各自自由行動だし、私も存分に楽しむとしよう。


 武器をアイテムボックスにしまい一歩を踏み出し、自動ドアを潜り抜ける。


 まず視界に飛び込んだのは、豪華で煌めくシャンデリア。そこから赤い絨毯が敷き詰められた足元。

 それを埋め尽くすかのように、スロットの機械やルーレット台、カードゲーム台が所せましと並べられていた。

 そして更には、周囲に集まるNPCとプレイヤー。この場合プレイヤーはクラメンだけなのだが……。


 配置とかは変わっていないので、変更はないのだろう。後は……やっぱり、ここで獲得できるであろうアイテムの確認だ。


 そう思いつつ、左へ視線を向け歩みよる。

 そこには光沢のある焦げ茶色の縦幅一メートル半、横は三十メートルはあろうかと言うほどの大きく広い天版がカウンターとして置かれていた。

 

 カウンターの内側にいるNPCに話しかけ、まずはカジノで使用する為のチップをゼルと交換する。

 交換は、100ゼルで一枚のチップと交換できる。

 と言っても、一枚交換したところで何もできないのだが……。


 ここオリンポス・幻想峡のカジノでは以下の通りの交換ができる。

 100ゼルは青

 1kゼルは黄

 10kゼルは緑

 100kゼルは赤

 1Mゼルは黒

 

 色により桁が変わるのは現実世界とかわらない。

 が、これが街にあるカジノの場合、少しだけ変わる。街のカジノの場合、緑がないのだ。

 

 このカジノで一番安いスロット器を一回だけ回すとするならば、最低は青三枚が必要になる。三枚から九十九枚までかける事ができるので、そこはかける本人次第だろう。

 

「ん~。幾らにしよう……」


 とりあえず、すぐに無くなるのは嫌だし……10M分を交換する事に決めた。交換が終了し、NPCからチップを受け取る。

 全て自動なので、本当に出て受け取る訳ではない。


 取引が終わり去ろうとするNPCに慌てて再び話しかけ、今度こそ交換できる景品をみた。

 そこには、以前使用して在庫がつきた” 煌めく蘇りのダイア ”を始め様々なレア品が一覧で表示ている。

 その中で私が、欲しいと思うものをピックアップする。

 

 ・ スサノオの剣(刀) 黒90枚 

 

 流石に武器は、高いと思える値段だった。剣と言う名前から両刃を連想させる。けれど、表示された画像には名前の横に括弧で刀と書かれていた。

 刀で欲しいのはこれぐらいだろう。

 

 次に魔法書の欄に移動した。

 すると……これは欲しい! あぁ、これも欲しい! そう声に出してしまいそうになり慌てて、口を押さえた。

 物欲と言うものがあるのならば、私は確実に今現在、物欲に目がくらんでいる。


 ・ イリュージョン フルークトゥス(水) 黒35枚

 ・ イリュージョン ウラガーン(風) 黒35枚

 ・ イリュージョン プレマフォロスト(氷) 黒40枚

 ・ イリュージョン リジッドゥ(地) 黒35枚 


 ・ ソウル オブ プレマフォロスト(氷) 黒55枚

 ・ ソウル オブ リジッドゥ(地) 黒50枚

 ・ ソウル オブ トニトゥールス(雷) 黒55枚

 ・ ソウル オブ クラリタス(聖) 黒60枚

 ・ ソウル オブ テネブラエ(闇) 黒60枚


 ・ プロテクト オブ ウラガーン(風) 黒30枚

 ・ プロテクト オブ リジットゥ(地) 黒30枚


 ・ テールム インヴィス カリエンテ(火) 黒25枚

 ・ テールム インヴィス フルークトゥス(水) 黒25枚

 ・ テールム インヴィス ウラガーン(風) 黒25枚

 ・ テールム インヴィス リジッドゥ(地) 黒25枚

 ・ テールム インヴィス トニトゥールス(雷)黒30枚

 ・ テールム インヴィス プレマフォロスト(氷)黒30枚

 ・ テールム インヴィス クラリタス(聖) 黒35枚

 ・ テールム インヴィス テネブラエ(闇) 黒35枚


 魔法の一覧を見ながら、生唾を飲み込んだ。


 上位に当たる氷・雷・闇・聖の魔法書は、現状ココでしか手に入らない。

 テールムと聞き覚えのない魔法書のひとつをタップして、詳細を表示する。

 そこには、武器に属性を付与すると書かれ、攻撃力アップの%は35%となっていた。

 要は、今まで使っていた、二次のファイアー ウェポンやウォーターウェポンの上位互換だ。


 これはヤバい。発狂するレベルで欲しい!

 もうカジノで遊ぶとかどうでもいいから、全部買ってしまおう!!

 理性を失くし物欲魔人と化した私は、すぐに倉庫へ走った――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る