第156話 最強は壊滅を齎す⑧
闘技場に集まった人数は、予想よりかなり多めの100人……いくらなんでも多すぎないか? と思いつつもロゼ・小春ちゃん・雪継・先生と分かれてPTを組んで行く。
連合のPTLは言いだしっぺの責任と言うことで、私らしい。それを仕方なく承諾して、各PT毎に一人は回復が入るようPTを組んだ。
バリアに関するあれこれを話し合っている間に、どこのドラゴンにするかを話し合い人気が無さそうなカリエンテに決まる。
煉獄のドラゴンであるカリエンテの住処は、イフリート火山の奥。入るためには特定のモブを狩り迷路のようになった通路を二手に分かれ進む必要がある。
カリエンテの特徴として、戦闘は長丁場になるらしい。その事を踏まえた上で、主力のPTである盾、近接には回復を多めに配置するよう指示をだす。
それから、指示系統をしっかりとしておきたいと思って居た所に、ロゼが既にカリエンテに挑んだことがあると言う。
と言う事は必然的に、陣頭指揮はロゼだ。
『じゃぁ、ロゼ陣頭指揮』
『は? なんで俺w』
『やった事あるって言った』
『まぁ、あるけど成功はねーよ?』
『それでもいいからやって?』
『ロゼ、諦めろw』
『諦めるのであるw』
『不用意な発言しちゃったなのですよw』
『マジかよ―。めんどくせぇ~。
バフとMP管理はrenがやってくれんだろ?』
『y』
『ならいいわw』
ロゼが陣頭指揮を了承したところで、バフの事を考え引退組と博士、春日丸を一時的にうちのクランに入れる。
ロゼを頭に、私、雪継、小春ちゃん、白影、さゆたん、シロにそれぞれ部隊長を任せることにする。
白影・雪継・小春ちゃんに関しては、今回の参加者のクランのマスター――白影は、ロゼのとこの副マスなので報告しやすいだろう。
さゆたんとシロに関しては、レイドに近付く近接とは違い位置取りがレイドから離れるためMP管理等しにくいだろうと選んだ。
バフ管理とMP管理と言っても、基本バフは私が全て回すことになる。個別のバフについてはMP的に無理なので……ロゼや小春ちゃん、雪継たちのクランには入れられない。
基本的には、うちに加入しているメンバーのみ個別を入れる事になるだろう。
それぞれのクランごとに、バッファーは連れて来ているようだが上書き等の注意は部隊長がいることから、そちらに任せる事にした。
MP管理についても正直な話、マナチャが全体には使えないのでその都度個別のバフを入れるしかない。
厳しい人は早めに報告をあげるようPTチャットで伝えた。
部隊編成などが終わり、PTを組んだのは黒、大和、宮ネェ、ティタ、チカ、ケン坊と雷だ。
メインでタゲを取る盾役と回復が集まったPTにした。
このPTの方が、全体の動きが見やすい事とバリアのタイミングを測りやすいと考えたからだが……。
バリアなどの話し合いが終わり全員の準備が整ったところで、イフリート火山へと移動を開始。
かなりの人数が一気にポータルで移動するせいか、周囲の注目を集めているようだった。
【ヘラ】から【ヘパイストス】に移動が完了し、ゾロゾロと連れ立ってイフリート火山へ向かう。
[[キヨシ] 鍵何個あつめればいーのー?]
[[キヅナ] チカ。お前……レイドで大剣はダメだからな?]
[[ren] 10個?]
[[春日丸] 相変わらず、チカには厳しいな。キヅナw]
[[†元親†] え? ダメなの?]
[[ティタ] 一人ワンセットずつ集めておけば良くない?
消える物じゃないんでしょ?]
[[キヅナ] ダメに決まってるだろ?]
[[村雨] 否、24hで消えるはずだ]
[[シュタイン] 消えるである]
[[白聖] それなら、死に戻り考えて10個でいいんじゃね?]
[[黒龍] つか、ロゼさ饒舌(じょうぜつ)に話してるけど
これ、俺らに話していい話じゃないよな?w]
[[風牙] 死に戻りは必須っぽいなw]
[[さゆたん] 装備消失とかはどうなんでしゅか?]
[[雷] 装備関係消えるのは困るなのです]
[[ren] 聞いてみる]
道すがらロゼにどう言う感じで行くのか? と聞けばロゼなりの解釈で説明にしてくれた。
カリエンテの住処に入るためのアイテムを落とすモブは、イフリート火山全体に散らばっているらしい。
まずはそれを狩り”業火の鍵”と”烈火の鍵”を獲得する必要があるようだ。
博士と村雨が言う通り、鍵はドロップしてから24時間で消えてしまう。
一度扉の前で鍵を使えば、10分で扉が閉まってしまう。
死に戻りのプレイヤーが戻るのに再び鍵が必要になることから、複数個ストックしておく必要があるそうだ。
ストックは誰が持つのかについては、扉担当を決めるらしい。
今回は人数が多い事から、ロゼのとこの二次職が扉の鍵を開けてくれると言う。
その人達は討伐には参加せず、討伐中と言うか私たちの心が折れるまで扉の前にずっといる事になる。
『なんかそれ、切なくない?』
『まー。必要な犠牲だからなー。諦めろw』
『分配は均等分配?』
『んー。まぁ、討伐組と扉だと少し違うな。扉は討伐組の半分』
『それはダメ。平等に均等分配で!』
『いや……討伐組の――『ダメ!』』
『ロゼ、諦めろ?』
『そうそう、renちゃんこう言うの譲らないの知ってるでしょん?w』
『renだしなー』
『renらしいなw』
『相変わらず、こう言うとこかわんないのなw』
『デジャブ見てる気がするw』
『俺もw』
『吾輩もこのくだり見た事あるにゃw』
『
『分かった。均等分配にするから……。
刀に手置いてこっち見るな……生きた心地がしねーw』
『よろしい』
私たちが討伐している最中、中を見ることなく扉の前に立っているだけのプレイヤーが可哀そうだと伝えれば、ロゼ的には必要な犠牲だと言う。
中に入れば、死に戻りするか討伐が終わらない限り中から外へ出る事は出来ない。その為、専属が必要なんだとか。
確かに、そう言った仕事を請け負う人も必要だろうとそこは納得できた。
分配などについても明確にしておく必要があると考える。せこい事はしないだろうと思いつつ分配などについても聞いておいた。
討伐組と扉では分配が違うと言うロゼに、それはおかしいと訴え。柄に手を置き少しだけ脅しつつ、なんとか全員均等分配にして貰えた。
アイテムなどの消失については、ドラゴンの住処手前に居るNPCから”ヘパイストスの御守り”と言うアイテムを購入して使えば、レイドで死んだとしても装備等の消失はないらしい。
『ヘパイストスの御守り1時間しか効果ないから、何個か購入しとけよ?
後、死んでも効果消えるから、
『どんぐらい時間かかる?』
『最低でも、3時間は見とけ?w』
『マジ? 入る前にトイレ休憩必須ね』
『それについては鍵集めてから一度取る』
『了解』
『k』
但しと言うかやっぱり運営は甘くないと言うべきだろう。”ヘパイストスの御守り”の効果は一時間しかない上に、死亡と同時にその効果が切れる。
ドラゴンレイドがどれ程の乱戦になるのか、はっきりとはわからないがロゼの言い回しを聞いた限りでは結構ヤバそうな感じだった。
バフの確認を怠らないようにしようと思いつつ、討伐の前段階までの話を聞いたところでイフリート火山に到着する。
続きはトイレ休憩の時間にと話を打ち切り、バフを回す。
今回は人数が多いことから、PTバフのみでいいだろうと勝手にPTバフのみをかけ終了させた。
[[キヨシ] 誰が一番狩れるか勝負しようぜーw]
[[ティタ] それ面白いかもw]
[[黒龍] のったw]
[[白聖] 俺が勝つw]
[[大和] 俺もやる~w]
[[聖劉] やろやろ~w]
[[キヅナ] 俺が一番だなw]
[[宮様] 皆元気ねw]
[[宗乃助] 負けないでござるよ?w]
[[村雨] のった!]
[[風牙] じゃぁ、1位の奴には賞金だそうぜw]
[[河瀬] やっぱりプレイヤーのが楽しいなぁw]
[[†元親†] 俺がいちばんだぁぁ!]
[[シュタイン] 負けないであるw]
[[源次] 俺が一番だなw]
[[さゆたん] やるでしゅよw]
[[ミツルギ] うはー緊張するw]
[[雷] 楽しみなのです!]
[[ヒガキ] 自分は見学します]
[[ユージ] ゴールド○イントの力、今こそ見せてやる!]
[[ゼン] 僕も……]
[[大次郎先生] やる気満々だな]
[[鉄男] よしやるかーw]
[[卑弥子] 負けないんだからね]
[[ケン坊] 俺がかーつ!]
[[ライガー] 勝つのは俺だにゃ!]
キヨシの勝負という言葉にクラメン達がノリノリで参加を表明する。ユージはいつから、ゴールドになったのだろうか? それに、ライガーの一人称がおかしい。もう忘れたなら普通に話せばいいのに……。
ソワソワとするクラメンを横目にくすりと笑い、ロゼと小春ちゃん、雪継に視線をむける。
彼らが頷いたのを確認すると同時にクラチャで『GO』の合図を出せば、猛スピードで散り散りに走り去って行くメンバーたち。
そんな彼らを呆けた顔で見送った他の参加者たちが「何事?w」と楽しそうに笑う。
そんな様子をみながら、私も勝負に参加するべく鍵を狩りに行向かった――。
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