第146話 最強は壊滅を齎す②
宮ネェと先生が部屋に来たタイミングで、雪継が全チャで謝罪を始めた。
二人とソファーに座りヒガキさん特製のコーヒーを飲みながら、ニヤニヤと全チャを眺める。
{[六実] トーナメント戦2回目!!
もう少しで始まるよ~♪}
{[雪継] えー。この度はクランBloodthirsty Fairy
に対し当クラン、クラン員である
失礼な態度を取りましたことを
ここにお詫び致します}
{[
{[ニャース] アースが謝罪??}
{[雪継] と言う事で、誠意を示すため
人生最大の黒歴史行きます……}
{[ジョー助] ちょ、え?
アースが弱小クランに謝罪とか
笑うんですけどーw}
{[キヨシ] 雪どんまーいw}
{[†元親†] ワクワクドキドキが止まらない!}
{[黒龍] ジョー助か、名前覚えとくわ。
狩り場ではディティクション打ちあげろよ?w}
{[雪継] あれは、高校の保健体育の時間でした。
その日の授業は、本を回し読むと言う感じで
進んでいたんです。
そして、俺の順番が回ってきて……}
{[ハルマキEX] ジョー助死んだな……南無}
{[雪継] 俺は物凄く緊張しててね
「~~などが、
っていう文章を、俺は――
「~~などが、ナマじる現象を言う」
って読みました}
{[ニーヤ] ジョー助がどれぐらい強いかしらないけど
BFを弱小と呼べるその度胸に涙が出たわw}
{[雪継] その日から、俺はクラスメイト全てに
ナマジル君って呼ばれるようになったのさ}
「ふっ、ふふふふ」
「ナマジル君w」
「雪ヤバいなw」
きっと雪継は、今頃クラチャでナマジル君と呼ばれている事だろう。
しかし、うちのクラチャでも今度から雪をナマジル君と呼ぶことが決まり、全チャでもナマジル君と連呼されている。
そんな雪が不憫だ。とは思いながらも、ジワリジワリと笑いがこみ上げてくる。
{[ティタ] 生汁君かー。
公式に改名の課金があれば送るのに!}
{[コーリアル] アースのマスター=ナマジル君
メモ完了しました!}
{[白聖] 生じるwww
ちょっとエロイなw}
{[雪継] ティタいらねーよ!
そんなもんくれるぐらいなら
優しさと言う心をくれよTT}
{[さゆたん] 雪じゃなかった、なまじるくん
強くいきるでしゅよw}
うちのクラメンの煽りが酷い。雪継本気で泣いてるんじゃないだろうか? そう心配になる程、全チャもクラチャもナマジル一色となっていた。
そこへ、二人目の黒歴史がはじまる。
{[ニーヤ] ナマジルwwww}
{[
{[燵魅] 生意気な口聞いてすいませんでした。
黒歴史2番手行きます}
{[スペルマソ] 生じるの読み間違えるのはいてーわw}
{[皐月] 雪継、イキロw}
{[燵魅] あれは、中学二年の修学旅行での話
二日目に女子のグループが部屋に遊びに来てて
その日はなんでか、先生の点呼が前の日よりも
早くて。
俺は、暗闇の中、咄嗟に彼女の手を
引いて布団に隠したんです}
{[
{[cerect] 生じる以上のインパクトをw}
{[白聖] リア充かよ……}
{[ティタ] やっぱ殺す?w}
{[燵魅] 先生の点呼中に彼女がいつもは絶対にしないのに
俺の腰とか太ももとかを触るんですよ。
男は好きな子に触られれば興奮する訳で}
{[リクルート] リア充は死あるのみ!}
{[魔法使い] 賛成であーる!}
{[雪継] ちょw やめて……PKしない変わりに
黒歴史だろー?w}
{[燵魅] 何とか先生の点呼を切り抜けて 布団をめくった
瞬間――彼女だと思っていたその人物が
幼馴染の男で……そいつが、俺の尻を触ってた。
しかも、お互いちょっと下半身が興奮した状態で}
{[燵魅] 電気がついたと同時に、彼女からはドン引きされ
幼馴染とは微妙な関係になるしで、本当に最悪}
{[ニーヤ] 痛ましい事故ですね}
{[キヨシ] ん~。30点だな~w}
{[ティタ] 同情する……}
{[黒龍] お前苦労してたんだな……w}
燵魅の語った黒歴史と言うか、もう笑えないレベルの独白に静まりかえる全チャとクラメンたち。
その時ふと、微妙な空気がゲーム全体を包み込んで切る気がした。
「えっと、気を取り直してって言うのもおかしいけど、どうしたの?」
「あー。そうだな、やることやろうかw」
宮ネェと先生はどうやら無かった事にしたようだ。
それに便乗するように私も、燵魅の全チャを無かった事にする。
コーヒーを一口飲み、先ほどティタから持ちかけられたレイドについての話をした。
全てを話し終えたところで、やはり先生も宮ネェも同盟についてで引っかかりを覚えたようだった。
「同盟については正直パスねー」
「即抜けが出来ないからって言うのもあるけど、バフとうちの盾をメインでって言うのがまず理解できない。
正直さ、レイド初ってわけじゃないんでしょ?」
「分からない。ティタの話では何度か行ってるっぽい言い方だったけど、確認はとってない」
宮ネェは予想通りと言うか、他のメンバーと変わらない意見を口にする。先生は、根本的な部分について納得が出来ない様子だ。
言われて確かにと思う部分もあるので、今回は流れる感じだろうなと思った。
「まー同盟を抜きにしても、バフの費用も馬鹿にならないし、そこらへんどうするのか聞いてから決定してもいいと思う」
「そうね~。同盟はパスだけどレイドは、即収入になるから行きたいところよねー」
「うん。ヒガキさんとゼンさんにも参加して欲しい。
それに、キヨシとチカがさゆたんの装備買い戻すって言ってるから、その分の補てんにもなるかなって思う」
やはりレイドの強みである、即収入という点には惹かれる。
それは宮ネェも同じようで、行きたくはあるが他の部分がはっきりしていない事で現状はっきりと返事が出来ないと言うことらしい。
即収入と言う事は、二次の二人の三次用の貯金とキヨシ・チカコンビのさゆたんの靴代についてもレイドに行ければ、多少緩和するのではないかと思う。
出来る限り参加する方向で考えたいところではあるのだが、やはり難しい。
「何あいつら、買い戻す気なの?」
「流石に今回は反省したらしいよw」
「そう……?」
「そう……。じゃぁ、とりあえずは相手の返事待ちで!」
「そうね。相手の出方を待ちましょう」
「わかった」
驚いた様子の二人に、真実を告げれば首を捻りながらも「そう」とだけ返って来た。話を戻す形で、先生が相手の出方を待つと言えば宮ネェもそれに同意する。
その後、トーナメント戦ギリギリまで三人の意見を調整して解散した。
二人と同時に自室を後に、執事へと向かい装備の耐久とアイテムの補充を行う。その足で、トーナメント戦専用のNPCへと向かった。
さぁ、いよいよトーナメント戦二週目! 久しぶりの対人戦だ――。
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