第80話 最強は覇者を志す⑮ PT戦

 バフが入ったことで、イケイケ状態のチカ。そんなチカの言動に突っ込みを入れながら、バインド状態の暗殺者へとスキルと魔法をぶっ放す、ティタとキヨシ。

 一人黙々と、重ATKの攻撃を避けこちらへ走る黒……余裕に見えるこの状態こそ、緊張感が増すのだ。と周囲の状況を見回し再度気合を入れ直した。


 余裕が生まれ気が抜けたところに、スキルを当てられ全滅なんて馬鹿な死に方はしたくない。そう思いつつも、残りは、四人内二人は既にバインド状態だ。

 そこまで危険視する必要もない状況に、少し早いが個別のバフを更新する。

 その間に、バインド状態の暗殺者、夕凪が地に倒れ灰色へと変わり残り三人となった。


『次>モメント、NPCやっとこ』

『k』


 黒のヘイトで、モメントが黒の方を向き足を止める。

 それと同時にキヨシが、ガムを打ち込みつつ、アイスランスを相手に叩き込めば。ティタが背面に位置取り、雷を纏わせた双剣で斬りつける。


 間髪入れずにアーマー ブレイク(+18)を入れ、ブレス オブ アローを叩き込み杖から二刀へ持ち替え、飛びあがるとNPCと化したモメントへ袈裟斬を仕掛けた。

 黒の剣が斜めに相手を切り裂いたところで、モメントは後ろに倒れ灰色へと変化した。


 残り二人になったところで、開始前に約束していた通り私たち四人は盾に、ティタは柿Pの方へと向かっていく。


『うんじゃ、俺らは盾なー!』

『ティタABどうする?』

『要らない。最悪死んでだら敵打ってくれればいい』

『k』

『負けんなよティタ―!』

『いいか? ”君たちは強い!” だぞ。ティタ!』

『あー。うん判ったから、さっさと行けキヨシwww』

『まー適当にがんばってこい』

『がんばれ』

『あり。黒、ren』


 頑張れと言う気持を込めてティタを送り出し、無兎むと=盾を見れば既にチカが突っ込んでいる……慌てた様子で黒が、ヘイトを飛ばし盾の視界を奪うと眼前に構え攻撃をはじめた。

 杖に持ち直し、アーマー ブレイク(+25)を詠唱発動しつつ入るまで繰り返す。


 5回目の詠唱発動で漸く頭上にエフェクトが現れはじけ飛べば、スマッシュ バッククラーを黒が発動させる。キヨシの詠唱に合わせエレメンタル アップ(+15)を追加する。

 それと同時にサンダー スピアが、無兎を貫いた。私も二刀に持ち替え、HP残り半分の無兎にスキル:ソウトウオオナミを発動させた。


 とここで、戦いが終わったらしい五人がクラチャで会話をはじめる。先生の「見てみるか」と言う言葉が流れ。それに一拍置いて、見ているらしい感想が流れた。

 

[[白聖] おー。やってんなぁー]

[[宗乃助] 柿P殿は、双剣使いの中でも憧れる者が多いでござる]

[[宮様] 私たちより遅いって違和感があるわね]

[[さゆたん] renちゃんが、ドラゴンぶっ放すかどうか次第でしゅかね?]

[[大次郎先生] さゆ……それあんまり言わない方がいい気がする]

[[白聖] ぶっちゃけ、アレは封印させるべきだ]

[[宮様] 同意するけど……renの召喚って、クラメン以外に使ったかしら?]

[[宗乃助] 1度だけでござるが……GMの前で……]

[[さゆたん] 青木さん可哀そうだったでしゅ。平なのにww]

[[黒龍] 笑わせんなwww]

[[ren] 召喚=クラメン専用]


 真面目な顔で無兎を斬りつけた、黒の剣がGMの青木さんが平と言うさゆたんの発言が出た瞬間、カクっとスカった。顔を歪ませ必死に耐える黒の顔面が、眼前に見える無兎は、POTを飲むのを辞めてしまう。


 黒の顔面は無兎に最大の恐怖を与えた! などと脳内でナレーションをしている間に、チカの大剣からクリティカル ヒットの音が鳴る。

 まさかの精神的ダメージを受けた無兎は、回復職の一撃にそのHPを枯らし灰色となった。

 

 さて、ティタはどうなったのだろうと思いそちらへ視線を流し見れば、互いに五分五分と言った感じHPの減り方をしている。

 同職、同Lvの戦いだ。邪魔する訳にはいかずただ呆然と見るのも失礼じゃないかと考え、少しだ距離を取り、その場に体育座りすると見学を始めた。


 柿Pの右手の剣がティタの左手の剣を弾き飛ばし、視線だけを動かした柿Pはティタの右手がピクっと動いたのを見て、右手の剣で下段から中段へと斬りつけにかかる。

 それをなんとか運動能力だけで回避したティタが、着地しようとした刹那柿Pの三連突きがティタを襲った。


[[白聖] こいつマジで上手いな]

[[†元親†] 半端ねぇー。みのりん並みだなw]

[[黒龍] 俺勝てるか? 多分負けるか、引き分けにできるかどうかだわ]

[[さゆたん] 柿Pさんってオープンの時既に名前売れてたでしゅよね]

[[キヨシ] ひょおおお! ティタそこあぶねぇ!]

[[宮様] あれ避けるティタも相当よねw]

[[大次郎先生] 私……もうあんな動きできない]

[[宗乃助] 二人とも上手いでござるな!]


 突きを受けたティタのHPが3割を切るに減った。――が、ここでティタがニヤっと凶悪な笑みを見せる。何か仕掛けていたのだろうか? そう思いつつ見守れば、ティタの全身を緑の光が包み込む。

 刹那、視界に彼を捕える事ができなくなった。


[[宗乃助] ストライク バック オンスロートでござるな]

[[†元親†] 何それ?]

[[白聖] お前なー。スキル名ぐらい覚えとけw]


 そうチカに言い、シロが説明する。

 ストライク バック オンスロートとは、三次職双剣使いの強ダメージスキル。


 残りHPが50%以上有る状態から20%を切るようなダメージを受けた場合にのみ発動できるスキルで、受けたダメージの5倍を相手に返すことができる。

 発動するための制限がきつい為、その威力は相当にあげられているらしい。


 速度上昇、攻撃力上昇は通常の3倍強となる。が、やはりただでは使わせてくれないらしく、移動速度、攻撃速度が上がる代わりに防御力は著しく低下する。


 その割合は通常の三分の一で、スキル使用後15秒の硬直と60秒の防御力低下がデバフとしてつくらしい。

 要は、自爆ににたスキルというところか……。

 初見だった私はシロの説明にそう結論を出しティタがどうするのかをワクワクしつつ、二人の戦いの行方を見守った。


 チラリと見えるティタの姿が、柿Pを翻弄し剣を振りまわす柿Pの隙を狙うようにダメージを当てていくため、柿Pに攻撃をさせない。

 ジワリジワリと攻撃を受ける度、柿PのHPが減り残り1割となったところでティタが動きを止め姿が見えた。


 赤いエフェクトが巻きつく両手に持つ剣をクロスさせ「はぁぁぁ!」と言う気合のこもった声と共に、両手の刀を上から下へと振り抜けば、赤いエフェクトが放たれた。


 四つに割れたエフェクトは柿Pを取り囲む。

 ×印だったはずの形が、剣へと姿を変える……それと同時に、柿Pの身体を四方から穿つ。


 避ける事は出来ないその攻撃に柿Pは満足そうに口角を上げると、前のめりになり倒れ灰色へと変化する。

 ティタはデバフの効果で硬直しているものの、非常にその顔は満足そうだった。


 二人の素晴らしい戦いを称賛する声がクラチャで上がり始めると同時に、会場にブザーが鳴る。

 頭上に【 Bチーム win 】と表示され、帰還のためのカウントがはじまった。


 硬直がとけたらしいティタが柿Pへと近寄り「カッキーお疲れw」そう白チャに表示させれば、柿Pも「お疲れさん。ティタ、強くなったね」そうティタを称賛していた。

 視界が暗転し街へ戻ると即座に補給へと走るティタ……流石に耐久がやばかったらしい。その姿にクラメンがどこかほっこりとした表情を向けていた。


 後で聞いた話だが、ティタと柿Pは本当に幼馴染なような関係で、同じ日にゲームを買い同じタイミングで始めた。

 しかし、同じ職なのに柿PがグングンLvスキルを上げていく背中を、悔しい思いで見ていたティタは、いつか絶対に倒す! そう心に決めていたようで謀らずも、今日それの夢が叶ったと言うことだった。

 今度やる時は、バフなしでやろうと二人で約束をしたと言っていた。


 ティタが戻るのを待つ間、クラチャでは先生と宮ネェが先ほどの私の発言を問いただす……。


[[大次郎先生] ren。クラメン以外には召喚使わないってどういうこと?]

[[宮様] ちょぉーとおねぇさんとお話しようかぁ?]

[[ren] だって……PK直終わるのつまならない]

[[さゆたん] 言うと思ったでしゅ]

[[宗乃助] でござるか……]

[[ren] さっきのSS最高だった! カエル]

[[ティタ] wwwwwwwww]

[[黒龍] wwwwww]

[[†元親†] 確かにヒキガエルだなぁー]

[[キヨシ] なぁなぁ、アレ俺のブログのトップに乗せていい?w]

[[白聖] カエル?]


 SSを見ていない五人に、ティタと黒から貰ったSSを送っておいた。その後クラチャで、絶句する五人と爆笑する四人の言い合いがはじまった。

 キヨシのブログか……そのうち見てみよう。そう思い周囲を見ればPTメンバーが全員NPCの周囲にいる。それを確認し次の戦いへエントリーした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る