第73話 最強は覇者を志す⑩

 キヨシからタゲを奪うべく、ヘイトを連発する黒が殴りはじめ5分……漸くキヨシからのタゲを奪う事に成功した……と思いきや何か考えそうしたのかは不明なチカが暴走を始める。


[[†元親†] いっくぜぇぇぇぇ! バリア]


 そう、無意味なバリアを発動させ、ボスへと殴りかかったのだ。頭を抱える宮ネェに呆然とその様子を見る黒、宗乃助、ティタ。ケタケタと笑いアフォが居ると指さし笑うシロ。そして、泣きそうな顔から一変爆笑しているキヨシ。

 結局、無駄になったバリアに包まれイケイケで攻撃をしたチカにボスのタゲがもちろん移る……。


「本当にバカだろー!!」


 黒が白チャでキレ、結局チカがタゲを奪ったせいで、全員でボスにアタックするしかないカオスな状況になってしまった。

 まぁ、こうなる事は参加者が集まった時点で判っていた事なのだが……。


 ため息を漏らしつつ、宗乃助とティタに挟まれる形でボスへとダメージを与えていく。ソロより格段に速いペースでHPを減らしていくボスを見つつ、モーションを見わける。


[[ren] ぶれす]

[[宮様] バリア]


 ブレスとクラチャで伝えれば呼吸を合わせるように宮ネェがバリアを張ってくれた。チカと比べないよう、努力しつつもやっぱり宮ネェのMP管理や状況把握の能力を見てしまえば……チカはチカなんだと再確認させられた。


 タゲを引いたが為に動き回るチカが、逃げるのに必死になり過ぎボスから離れたと同時に雑魚間で引いてくる始末……。


 それに対応する黒が直にレンジヘイトを飛ばし雑魚を引きうけると、キヨシがサンダー ストームで雑魚を倒す。

 チカを追いかけボスが動き、ティタと宗乃助のスキルが的を失い外れれば、舌打ちしつつボスへと走りより攻撃を再開する二人だが、ボスが尻尾打ちつけている。


 尻尾での攻撃モーションだと判断し、そのことをクラチャへ流せば二人同時に飛びのき回避した。


[[黒龍] チカ動くなら、ボス動かないように回り走れ]


 黒の言葉に、ヒィヒィ言いながらもチカが私たちの周囲を回りはじまれば、漸くボスが動くことなくその場にとどまり始めた。


 後ろからの攻撃をしている私たちが、チカの動きに合わせ黒と一緒にぐるぐる回る……。まるでメリーゴーランドのようだと思いつつ、デバフありの強撃スキルを使えない分時間がかかっていると判断し、少し離れて皆に個人バフをかけ直す。


 詠唱速度の杖から属性を最大に乗せた杖に変更すると同時に、ホーリー クロス(+15)を詠唱し叩き込んだ。


黒のスマッシュ バッククラー

――三次職、盾使用職のみ使用可能。シールドを上から下へと叩きつけ、粉砕し気絶とダメージを与える。


ティタのフィルス アタック

――三次職、双剣使用職のみ使用可能。相手に対し5回双剣で切りつける。ダメージは10回分となる。


宗乃助のファントム エッジ

――三次職、短剣使用職のみ使用可能。自身の気配を消しいくつもの幻覚を作りだし、相手へクリティカルを叩きつける。背面時のみ使用可能。


シロのトリプル フィルス ショット

――三次職、弓使用職のみ使用可能。一度に三度の矢を放ち、相手の急所を射抜く。


キヨシのサンダー スパーク

――三次職、遠距離魔法攻撃職のみ使用可能。(両手杖使用時)雷の球を呼び寄せ、相手を囲い電撃を浴びせる。


 それぞれにスキルを発動し漸くボスが最後の雄たけびを上げ地に伏した。

 黄色い粒子のエフェクトとなり消えていくボスを眺める暇もなく、黒、ティタ、シロからチカ、キヨシへの説教が開始された。


 色々言いつつも仲が良いので良しだろう……視線をシステムログへと向け、ドロップを確認すればスクロールとゼルしか出ておらず……絶対、長引く思い、一旦帰還させるべくクラチャで注意喚起する。


[[ren] 全員、帰還]


 まずは帰還しろと言う言葉に、ため息を零す三人を見やり早くと促せば渋々と頷き全員が帰還していく。ディティクションを打ち上げマップを確認したところで、私も帰還の護符を使い街へと戻った。


 宿屋へと帰る道すがら、首をガックリと下げたローブが二人まるで、囚人のごとくティタたちに囲まれ連行されていった。私は、鍛冶屋と倉庫、雑貨屋へ赴くためポータルで皆に先に戻るよう伝えその場で別れた。


 どうやら連行されるその様子をみたらしいさゆたんが、クラチャで何があったのか? と問いかけたことで事情を宮ネェが説明していた。

 聞いていたさゆたんが「そんな奴ら見捨てれば、良かったんでしゅよw」とキャラに似合わない、辛辣な毒を吐いていたのは見なかった事にした。


 漸く残り20分ほどで今日のトーナメント戦が始まる。

 職不問とPT戦だ……さてどっちに出ようかと考えていたところに先生もログインした。


 クラチャを呆然と覗きつつ、取引所を見ていた私の視界に「PT戦の方がポイント高いらしいぞ」と言う白チャが入った。

 これはもう、PT戦するしかないだろうと考え早速クラチャへと打ち込んだ。


[[ren] PT戦ポイント高い]

[[黒龍] 個人無差別かー。装備どうすっかなぁ]

[[宗乃助] 同職じゃ無いと殺り難いでござろうな]

[[大次郎先生] 遠距離攻撃職は避けたい]

[[†元親†] お! ren一緒にでよーぜー!]

[[さゆたん] PTもやってみたいでしゅね~]

[[宮様] チカあんたは黙って、職不問出てなさい]

[[ヒガキ] PT戦のポイントどれぐらいなんですか?]

[[キヨシ] 俺もPTやりてー!]

[[ゼン] PT戦か~いつかは出てみたいですね~]

[[白聖] キヨシとチカの混合とかオワタ状態でしかないだろw]

[[黒龍] renいるし、三人でもなんとかなるんじゃね?w]

[[ティタ] renがキレるに一票ww]

[[白聖] おっ、賭ける? いくら??w]

[[大次郎先生] 賭けにならないから辞めろw]


 どうやら誰も出てくれないようだ……せめて黒かティタが居れば……キヨシとチカ連れて出てもなんとかできると思えるのに。フラれた気分を味わい、もういっそのこと三人で出てやるかと思いつつNPCへと移動した。


 NPCの前で、チカとキヨシを拾いPTを組む。まずは作戦を伝えるべく、チャットを打ち込もうとしたところで、本当に仕方ないと言う顔をした黒とティタが揃って私の眼前に立っていた。


[[黒龍] しゃーねーだろ?w]

[[ティタ] クランバフ欲しいしねw]

[[ren] 素直じゃない……]

[[黒龍] いいからさっさとPT飛ばせ]

[[ティタ] 黒照れてるwwww]

[[黒龍] あーもーめんどくせーなー!]


 ニヤニヤと見つめる私とティタに対し黒が、視線を逸らし頭をガシガシと掻いた。

 PTを飛ばしチャットで、チカとキヨシへ前に出るなとだけ伝える。

 二人が居てくれるのであれば作戦は、ほぼ必要じゃなくなるのでなんとかなるだろうとそれだけにしておいた。


 時間も残り10分だ。

 PTチャットでは、黒とティタの重装備談義に花が咲き、クラチャでは宮ネェと先生、宗乃助、シロ、さゆたんがPTを組んだらしく、そっちで出ると言っていた。


 そのうち、ヒガキさんやゼンさんも一緒に出れるといいのだが、未だ三次職では無い二人をPTに加える訳にはいかず。どうにかして三次職まで引っ張らなければと反省した。

 平日の夜にでもどこか狩りへ連れて行こうと思案しつつ、開始のシステムログが流れトーナメントNPCへと話しかけ、場所ランダムでエントリーした――。






=======以下=======

挿絵URL(https://31083.mitemin.net/i420701/)

キヨシが作ったクランマークっぽいものだと思っていただければ幸いです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る